ウォーレン・バフェットの『大衆がおびえているときには大胆に、市場が熱狂しているときには臆病にふるまえ』という金言はあまりにも有名です。

 実際、大衆やマスコミがおびえ切っていたリーマンショック直後に、バフェットは次々と大胆な投資を行い、結果的に多くの利益を得ることができました。ま た逆に、ITバブルの熱狂の最中でもIT株には投資を行わず、当時のマスコミからは「時代遅れのポンコツ」扱いされましたが、その後どうなったのかは読者 もよくご存じのところです。

 さて、バフェットの「株価は安ければ安いほど良い」という教えは市場が急落したときに恐怖心を押さえて果敢に買い向かうべき(もちろん徹底した企業分析が必要です)というだけではありません。

 「自分の持ち株の値段(市場価格)が下がったときも喜ぶべきだ」というのがバフェットの主張するところです。にわかには信じられない読者も多いかと思い ますが、このバフェットの教えは、2012年版の「バフェットからの手紙」に詳しく書かれています(お知らせ <「バフェットからの手紙」に学ぶ (2013)>(昇龍社)では第11章に2012年版の内容が掲載されています)。

 具体的例として説明されているのがバークシャーも保有しているIBMの自社株買いのケースです。今後自社株買いを続けていく優良企業の場合、例えばこれから5年間自社の株価が低迷した方が、投資家に大きな利益を与えることが、簡単な数式で見事に説明されています。

 さらにもっと、簡単に説明すれば、<バフェットも含めた大概の投資家はネットの株式の買い手>だということです。生まれたときに株主である人は少ないで しょうから、株式を購入するところから投資人生が始まります。そして株式投資に成功すれば持ち株がどんどん増えて行き、最後に株式は遺産として残されま す。

 つまり、ほとんどの人は一生のうちで株を売るよりも買う方が多いわけですから、株価が安い方が得です。株価が高いことで得をするのは、親から莫大な株式を相続して、生涯それを売って生活できる優雅な人たちぐらいでしょう…。

 しかし、バフェットはこの議論で相手を説き伏せようなどと考えていません。あまりにもたくさんの「愚かなる投資家」を見てきて、そのようなことは不可能 だと感じているからです。ただ、バークシャーの株主には、バフェットの投資哲学がどのようなものであるかをきちんと理解してほしいというだけのことです。

 そして、バフェットはこんな告白もしています。「ベンジャミン・グレアムに出会うまでは、私も株価が上がると喜ぶ平凡な少年でした・・・」

 つまり、グレアムに出会うまでのバフェットは、単なる株好きのオタク少年に過ぎなかったのですが、グレアムの教えを吸収することによって初めて「世界一の投資家」への道を歩み始めたのです。

 ですから、バフェット流の第1歩は「株価が下がれば投資家が得をする」ということを理解することであり、これが分からなければ次へ進むことはできません・・・・。

★週刊ダイヤモンド2月8日号(発売は2月3日)に私のインタビュー記事が掲載されました。
 <買っていい220株>という特集の中で、「バフェット流投資の真髄は割安になるまで待つ忍耐力」というタイトルです。

(OH)

*ブログ「大原浩の金融・経済地動説」http://www.actiblog.com/ohara/

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)