日経平均を改めてチェックしますと5月19日の1万3,991円、5月21日の1万3,964円から6月3日の1万5,000円台乗せまで上昇し、その 後一旦は1万4,600円どころまでの調整も考えられたのですが、6月の安値は1万4,830円に留まりました。そこからまた1万5,000円台に戻り、 今度は6月23日に高値1万5,442円まで一気に上昇し、先高感が強まった格好です。

 そこではヘッジファンドの買戻しと信託銀行(年金勘定)の大幅な買い越し後押ししています。信託銀行は株価が倍にも上昇した結果、2013年は4兆円も の売り越しとなりました。2014年も3月、4月と売り越していましたが、5月は一気に6800億円も買い越しています。ここに外国人投資家が目をつけ、 買い戻しを図ったというのがここでのバックグランドだと見られます。いわば年金とヘッジファンドの株高競演が見られたことになります。

 NISAの非課税枠を100万円から2~300万円に拡大する案や5年から10年へと期間の延長を図ることなどが安倍政権の政策に盛り込まれたのも株価 上昇へのきっかけとなりました。日本の個人資産は1644兆円とされ、そのうちの53%は現預金で、株式の占める比率はその現預金に対して10%しかあり ません。米国では金融資産の4割から5割が株式や投資信託ですから日本の個人の買い余力は極めて大きなものがありますが、多くの投資家はサヤ取り運用に徹 していてなかなか保守的な日本人の長期的なスタンスでの株式投資には期待しにくい状態です。

 発行体である企業は自社株買いを行うほか、個人投資家は主として投信で市場に参加しているのが現状です。また、個人投資家は長期的には売り姿勢を継続してきましたが、NISAの非課税枠の拡大や期間延長でスタンスが変化してくるとの見方が台頭してきました。

 また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式運用比率の引き上げ(20%程度まで引き上げか?昨年末は株価の上昇で17%台にまでアップ) が信託銀行の買いに表れているとの見方が出ており、それを察知したヘッジファンドの買戻しが、ここでの相場上昇につながっていると専門家は分析していま す。

 こうした相場の背景を分析するとここでの弱気は禁物で、指標面でもPERはまだ穏健な水準にありますし、何よりも政府の株高への取り組みは積極的です。 相場に相応の山と谷はあっても、方向としては株高にありますので、年金運用にしても個人にしても現金部分は株にシフトして来ざるを得ない。しからば何に投 資してくるのか・・・。
 デフレ経済下の日本にはPBR1倍以下の銘柄が1800社以上もあります。上場企業の半分がそうした評価がなされているのです。かつてバブル形成期の PBRは1倍が最低で、多くの企業のPBRは1.5倍から2倍といった評価がなされていました。デフレ経済がインフレに向かうという今、株式資産を保有し ようとする国民が選択する投資先は、出遅れた評価不足の銘柄であろうかと思われます。
 経済全体のかさ上げが図られると収益ベースも全体的に持ちあがり、株価が上がってもPERは大きく上がらないことになります。

 流動性重視のバリュー株相場、重厚長大産業への見直し相場、商社・金融などの出遅れセクター銘柄などへの関心の高まりなど、長期バブル形成時の展開をもう一度、再現するかどうかを吟味してみてはいかがでしょうか?

(炎)

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