今週(7月7日~7月11日)の東京株式市場は、日経平均株価で5日連続の下落となりました。週間では273円、率にして1.8%の下落です。
 米国の株式も調整含みであり、これまで堅調に推移してきた日米の株式も調整局面を迎えたようです。10日にポルトガルの金融不安が浮上したことも売り材料とされていますが、ただちに欧州全体の金融システム不安に結びつくことはないように思います。
 現在、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏の主要銀行に対し、健全性を確認する「ストレステスト」を実施しており、経営難の銀行が出てきた場合には、公的資本の注入などを含むそれなりの対策を実施するものとみています。
 やはり、国内株式相場の下げは上昇局面の中での一時的調整と見てよいでしょう。東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)も11日には107.29%まで 低下してきました。6月下旬には160%を超える水準まで上昇、過熱感が高まっていただけに、調整も進みつつあるといえましょう。

 10日に発表されたESPフォーキャスト調査(エコノミスト42名による予想のコンセンサス、日本経済研究センターまとめ)では、14年4~6月期の実質GDP成長率(前期比年率)が、6月予想の4.18%のマイナスから4.9%のマイナスに下方修正されました。
 主な要因としては、増税後も個人消費が予想よりも弱いことが挙げられています。先週の当コラムで、上場小売業各社の月次動向から、4月以降の反動減が想 定に比べ軽微にとどまっている、と申し上げましたが、マクロ的には弱めの予想が出ているようです。一方で、経済産業省が発表する「商業販売統計」の小売業 販売額は、5月に前年同月比0.4%減となり、ほぼ前年並みに回復しています。
 指標によってまだら模様となっていますが、あえて、強弁するわけではありませんが、駆け込み需要の反動減はそれなりに発生するわけで、7~9月期以降の回復に注目したいと考えます。


【株式指標について =ROE=】

 自己資本利益率(ROE)は、このところ株式市場での関心が急速に高まっています。
 14年1月より導入された「JPX日経インデックス400」がROEを重視した指数であることも大きく影響しています。さらに、年金積立金管理運用独立 業績法人(GPIF)が、従来の東証株価指数(TOPIX)に加えて、JPX日経インデックス400を含む3つのインデックスを採用したことも企業側、投 資家側のROE改善への意識を高めることにつながっています。

 JPX日経インデックス400の銘柄選択のルールを確認しますと、ユニバースは、東証1、2部、マザーズ、JASDAQであり、過去3期での債務超過、 営業赤字などの銘柄を除いた後、時価総額、売買代金などを勘案して1000銘柄に絞込み、3年間の平均ROE(ウエート40%)、3年累積営業利益(同 40%)、時価総額(20%)によりスコア化して順位付けを行い400社に絞り込んでいます。
 ROEに関しては、単純に過去3年平均のROEの高い銘柄を選択しているようであり、特別利益の計上などの特殊事情は勘案していないようです。3年間の 平均をとることで、そのあたりを平準化しているようですが、企業の経営の変化を3年間のみでみるというのは多少無理があるのかもしれません。

 ただ、これまで、国内企業はROEを高めるという意識が大きく欠如していましたので、それを経営の意識の中に、それを喚起するという点においては意味のあることと考えています。
 実際、総合商社の三井物産(8031)、三菱商事(8058)のように、ROE向上を目的に自社株買いを実施し、それを評価して株価が上昇するケースも出ています。

(水島寒月)

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