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ライツ・オファリング発行企業の株価動向
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ライツ・オファリング発行企業の株価動向

2014-08-19 14:17
    ファイナンスの手法としてライツ・オファリングとかライツイシュ―と呼ばれる発行会社が既存株主に対して新株予約権を無償で割り当てるというやり方が取られてきましたが、ここに来て赤字企業の発行については規制されようとしています。

    「企業の資金調達手法であるライツ・オファリングの利用件数が増えてきたことを踏まえ、東京証券取引所が新たなルール整備の検討を始めた。証券会社の審査 を受けず実施できる「ノンコミットメント型」の透明性向上を求める声が高まっており、この手法への事前審査の導入が柱になる見通し。年内に素案をとりまと め、来春にも実施する方向だ。」
    (ロイター4月10日)

     新株予約権無償割当(ライツ・オファリング)とは既存の株主に対して一般に市場価格よりも低い価格で当該上場会社の株式を購入できる新株予約権を無償で 割当てる上場会社の増資手段の一つです。欧州では一般的な増資手法とのことですが日本ではこれまであまりなじみがありませんでした。
     ただ、2013年には23件の発行企業があり、ファイナンス手法として定着してきました。その内容も決して業績の良い企業ではなく通常の新株発行ができにくい赤字企業などの発行が見られるため東証では来春にも新ルールを施行して規制するとの話になっています。

     ライツオファリングにはコミットメント型とノンコミットメント型の2通りがあります。株主が新株予約権を行使しない場合に証券会社がその権利を買い受けて行使するのがコミットメント型でこれは証券会社の審査があります。
     一方、行使されなかった権利が失効するのがノンコミットメント型で、これは証券会社の審査を経ないで発行するタイプです。株主に判断をゆだねることになります。

     23件のうち20件はノンコミットメント型で、少なくとも3期連続で赤字計上している企業がこのうちの9件、債務超過企業の実施例は3件あったとされます。
     企業存続のためのファイナンス手法ながら、投資家には強制的な新資金の払い込みが求められます。結果として株価は一旦大きく値を下げることもありますので必ずしも好ましいファイナンスばかりではない要素もあります。
     ただ、開発資金が必要な創薬ベンチャーのような企業にとっては上場していることを利用しての有力な資金調達手法と考えられます。


     過去の発行企業としてはタカラレーベン(8897)、エーディワークス(3250)、クレアホールディングス(1757)、フォンツHD(現レッドプラネット・3350)、アイアールジャパン(6051)、日本エスコン(8892)、Jトラスト(8508)、メガネスーパー(3318)、シスウェーブHD(現SOLHD・6636)、ガイアックス(3775)、小僧寿し(9973)など。

     このところメガネスーパーの株価が急騰し、話題を呼んでいます。同社がこのファイナンスの発行を4月に発行していますが投資ファンドとの連携で再生が進んでいるとの見方もあって変動しているようです。

     このようにファイナンスで企業が蘇る事例もありますので決して全否定するものではないのですが、発表と同時に株価が急落するなど決して既存株主にとって歓迎されるファイナンスではないことも事実です。

     このファイナンスでは株主に割り当てられた新株予約権自体が一定期間取引されますのでその変動で利益を得る機会が与えられます。既存株主だけではなく新たな投資家も新株予約権の売買の形で参加ができます。


     先日発行を決めた創薬ベンチャーのアンジェスMG(4563)もライツオファリングを発表し株価が464円から416円以下に急落しましたが発表後の3 日間で480万株(3240万株の14.8%)の出来高がありました。一部既存株主のファイナンス忌避の売りが出たと考えられます。

     新株予約権の発行価格は288円ですのでその際の権利落ちの妥当値は月曜日の終値411円で算出され(411円+288円)/2=350円となります。
     その後の株価はほぼこの株価を中心に取引されています。ただ、一時400円まで買われるなど開発中のコラテジェンへの期待が底流にある一方で、需給悪を懸念した売りも出やすい状況です。

     同様に8月1日から売買が開始された新株予約権のプライスは親株の株価が350円であれば350円―288円=62円となりますが、予約権の取引価格は25円から46円といった水準で取引されています。基本的には権利落ち後の株価によって新株予約権は変動します。
     既存株主は割り当てられた新株予約権を市場で売却することもできますし、それを新たに買う投資家も出てきます。

     発行会社には全額払い込みがあれば、90億円の資金が入ることになります。既に同社はコラテジェンの世界第III相の臨床試験開発について米国クインタイルズ社との提携を発表しており、この資金は同開発のために使われると見られます。

     今回の発行で問題となるのは、発行前に株価が意図的に650円前後まで上がっていたことです。どういう理由で新株予約権の権利行使価格が288円に決まったのかはわかりませんが、あらかじめ意図的に仕組まれたファイナンスのように感じられます。
     一方において上昇時に一旦売却できた投資家は今回の株価下落を再投資のチャンスと見ているのかも知れません。

     このファイナンスに対して同調するかどうかは投資家の最終判断に委ねられますが、発行体の意図はこの投資家の期待をうまく利用しているということです。

     短期売買の投資家にとっては値動きを見ていて利益を得られると判断されればリスクを投じますが、あくまで短期売買の世界であろうかと思われます。

     中核開発アイテムであるコラテジェンが開発ステージの最終局面PH3が来ている中での大型ファイナンスをどう見れば良いのか、砂上の楼閣のような株価形成の中で投資家は新たな売買決断に迫られています。

     先日の説明会ではコラテジェンを発見した森下先生自身からの質問者への回答がありました。今秋施行される改正薬事法で条件付き承認制度による遺伝子治療 薬を含む再生医療等製品の早期実用化が可能になるということが語られたことが印象的です。会社への取材でもコラテジェンの開発以外にも資金ニーズは旺盛で 新株予約権の行使を促進するための施策を予定しているようです。

     現状の開発パイプラインのメインはコラテジェン(国内+海外)ですが、その他においても新たな開発パイプラインが控えているようです。

     国内での治験が先に進みますが、9月スタートし来年前半には終了するというスケジュールで大株主などの投資家とのコミュニケーションを図りつつ、予約権の行使を推進するためにも適度の株高ニーズが高まっていると見られます。


    【アンジェスMG株の今後の想定変動ゾーン】

    9月22日まで

     権利落ち後の親株の売買 想定ゾーン320円~400円
     新株予約権の売買    想定ゾーン 32円~60円
    (新株予約権は株価が288円以下となれば理論上は0円となり、その行使も放棄される可能性がありますが好需給のため売り物自体は少ないと考えられます。)

    9月24日以降

     親株の売買   想定ゾーン 350円~500円
     同社の想定時価総額 230億円~330億円

     コラテジェンの推定潜在市場
     (海外)5,000億円(2年後以降からの上市、収益貢献)
     (国内)  100億円(2016年)

    (炎)

    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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