なお、内容は執筆当時の背景に基づいており、現在の状況と必ずしも一致しないことを予めご了承下さい。
=「自分の経済状態などを把握して株式投資をするかどうかを決める」=
(有料メルマガ第237回・2013/7/23配信号)
※注 2013年7月現在の内容ですので留意下さい。
自分がどのような投資スタイルで投資しているかを把握して、自分のルールに従って投資を行っていくことは、大切です。しかし自分の健康状態、家族の状況 (子供が生まれるとか、大学院に進学するとか)、収入の状態。これらは常に変っていきます。その時々にあった投資ルールを、新たに構築する能力も、自分で 投資を実践していくことによって、始めて養われてくるものです。そうでなければ、生き残っていくことは出来ません。
進化論のダーウィンは「最も強いものが生き残ったのでも、最も賢いものが生き延びたわけでもない。唯一生き残るのは変化できるものだ」ということを「種 の起源」のなかで述べているそうです。その時々の環境の変化で、自分も変ることができる。それが生き残るための最大のポイントなのです。
人は一旦手に入れたものを手放すことを嫌います。また、失ってしまったものを嘆き悲しむことも良くあります。投資でも株価が下がって金融資産が減ってしまったことを嘆きながら、文句を言いながら、つまらない人生を生きている人々が多いです。
しかし失ったもののリスト(=不幸のリスト)を作って、更に失ってしまった原因を他人のせいにして他人を恨みながら生きている人の未来は、とても暗いで す。そのことによって愛する家族を失ってしまう愚かな人もいるようです。呪いは自分に降りかかってくる。「人を呪えば、穴二つ。」その穴に自分も落ちるこ とを経験則として昔の人は教えてくれています。
たとえ失ったものがあったとしても、まだ持っているものもたくさんあると思います。失ったことを悲しんで、まだ持っているものさえも、更に失うのは愚かです。まだ持っているものを、いかに有効に使って将来に生かすか。
そう考え行動することによって、未来は開かれていくのだと信じています。砂漠で遭難して水筒の水が半分になったとき、もう半分しかないと恐れて行動でき なくなる人の生存率は低くて、まだ半分もあると勇気と希望を持って生き抜く努力をする人の生存率は高い。当たり前のことですが、投資家にとっても忘れては いけない大切なことだと思います。
株式市場は、株式会社が事業を遂行するために資金を調達するための機能を果しています。企業が事業資金を調達する方法は、株式を発行し、これを投資家に 買ってもらうという方法があります。投資家が投資した資金は企業の自己資金となり、借入のように貸主に返す必要はありません。
しかし株に一旦投資したら、そのお金を別なことに使う必要が出来たとき返してもらえないというのでは、投資家は投資に二の足を踏んでしまいます。そこで 株に投資した資金を使いたくなったとき、別の投資家に株を売って、投資した資金を回収する場所が必要になります。その役目を果たしているのが株式市場で す。
株式市場では多くの株が売買されています。その売買を活発に行なわせる大切な仕組みが、株価が変動して、うまく売買すれば一攫千金を狙えるかもしれないという射幸心です。
株価が右肩上がりに上がり続け、下がることがないならば、そんな株を売ろうという人はいないでしょう。よほどお金が必要な人意外は売りません。そうすると、その株を買いたい人がいても、買えません。
では下がり続ける株を買う人はいるでしょうか。そんな損をすることがわかりきっている株を買おうという人も、普通はいないと思います。
株価が上下に変動しているからこそ、変化しているからこそ、もっと上がるかもしれないから買おうという投資家。いやいやこれからは下がる可能性のほうが 高いから売っておこうという投資家。つまり意見の異なる投資家がいるからこそ市場で売買が成立し、いつでも現金に換金できるという安心感を投資家に与えて いるわけです。
100年に一度の危機といわれることが毎年のように起こるのが最近の日本の株式市場です。日本の株式市場では2000年以降は毎年のように大きな株価の下落が1回程度は起こります。
確かに東日本大震災や原発事故、リーマン・ショックのような天災や人災などは、投資家に強烈な不安を引き起こし、投資家の買い意欲を根こそぎ奪い去るような痛烈なものでした。売りたい投資家ばかりが増えて株価が下落しました。
でも、そのような危機のさなかにも株は売買されて、値段がつきました。買った投資家がいるからこそ売買が成立して、株価が下がったとも言えるのです。
誰も売らなければ株価が下がることはないし、ひとりも買わなければ売買が成立せず株価もつきません。ほんの数単位の株の売買で株価が暴落してしまうことも、良くあることです。
株が上がるか下がるかは、誰にも分かりません。ただその株が現在より上がると考える投資家の数が、下がると考える投資家の数より多ければ、株価は高く なっていきます。買いたい人の数が多ければ野菜市場や魚市場で、セリで価格が上がっていくのと同じことが株式市場でも起こるのです。
魚や野菜などの商品は、誰かに消費され、無くなっていきます。ところが株は、その企業が倒産しないかぎり、基本的には存在します(自社株消却など株数が減ることはありますが、特別なことをしなければ存在し続けるわけです)。
そして企業の業績や景気動向、地震や台風などでおきる自然災害、テロや戦争や事故などによる人災でも、投資家の株に対する上がるか下がるかの判断が、常に変化していきます。投資家の判断が変ることで、市場で売買が発生し、株価が変動していきます。
株式市場では株価が毎日変動しています。そのために自分の資産の額が増えたり減ったりしていきます。そのためにストレスが発生し、精神的に弱い投資家は ストレスに負けて、資産を減らして、市場から去っていきます。レバレッジ(借金)を利用した投資で、自己資金以上の借金を負い、負債を抱えて市場から強制 退場させられる投資家も少なくありません。
また、流動性の少ない小型株(新興市場の株ばかりでなく、東証第一部の株でも、流動性が小さい株はあります)では、資金力のある大口の投資家の投資行動 によって、株価が影響を受けます。強い大口の投資家が、小口で弱い投資家から資金を簒奪しているように感じられることも、よく起こります。
ビジネスも戦争です。それと同じような意味で株式投資も投資家間の戦争、資金の奪い合いでもあるわけです。そのような意味合いを否定しきることは出来ま せん。だから個人投資家は、用心に用心を重ね、精神的にも自分を鍛え、無謀な投資をしないという克己心を身につけていくべきなのです。
そして、自分の経済状況などが株式戦争に耐えるだけの状況にあるか確認してから株式投資を行うかどうかの判断をすることが大事です。もし、いまは株式投 資をすべきではないと判断して株式投資を行わなくても、2000年以降のように、ほぼ毎年のように大きな暴落がやってきてくれるなら、自分の経済状況が株 式投資の耐えられる状況まで待っても遅すぎることはないと私は考えています。
株式投資など資産運用は、水泳の短距離競争ではないので100メートルを早く全力で泳いで一番速くゴールに着けば勝ち、というものではありません。 100メートル泳いだらあとは休んでいいという、いわば一発勝負ではないのです。短距離レースでは体調などあらゆるコンディションを最終戦に備えて、そこ で勝てば勝利が確定する。次のレースは一からスタートとなります。
デイトレードに代表される短期トレードは水泳の短距離レースに似ているかもしれません。もちろん短距離レースだとしても、水泳のように管理されたコースでレースの妨げになるようなものは管理者の手で排除されている。そんな恵まれた状態で競うものとは、まったく違います。
資産を形成するという長い時間軸で考えるなら、そのような目的で行う株式投資は遠泳する能力を競うゲームのほうに似ていると考えます。
潮流の変化。水温の変化。自分の体調。体力。あらゆる条件を勘案し、溺れないように、長時間泳いで、溺れずに目的地に無事にたどり着けるような総合力を養うゲームです。嵐の海では、泳ぐのを避ける判断力も求められるゲームです。
自分の体力を過信したら、事故を起こします。心臓麻痺を起こしたら。足がつったら。そんな場合のセーフティー・ネットも準備しておく細心さが必要なもの。まさに大きく資産を形成するための株式投資と遠泳は似ていると思います。
だからこそ自分の経済状態をしっかりと見極めてから株式投資に参戦するかどうかを決めることが大事です。
株式投資は「運だけでガッポリ稼げる」ことも起こります。しかし幸運が立て続けに来るとは限らないものです。
自分の経済状況が株式投資に耐えることができるほど万全であったとしても、常に株式市場の今の状況も把握することで、泳ぎ始めるか(=投資委を始めるかどうか)、休むかを決断することも必要です。
そして泳ぎ始めたら、予想しなかった大きな嵐が襲ってきても、溺れないように、株式投資を休んでいる間にも、将来の株式投資への参戦を見据えて、しっかりとした準備を行っていくことが大事だと思います。
本当の運用能力は実際に株式投資を行わないと、身に着けることができないと思っています。しかし投資対象である企業がどのような企業なのかを調べることは、株式投資を休んでいても、行うことが可能です。
そのように投資対象の企業をじっくりと調査研究しておけば、株式投資に参戦することが可能なところまで、自分の経済状態などの準備が整ったときに、企業研究をしていない人より有利に投資対象を選ぶことができると考えています。
【後略】
経済的独立ワクワク!サポーター 石川臨太郎
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