本連載を初めてお読みになる方は<孫子の投資法その1>を先にご覧ください。 
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■忍耐無くして勝利無し

◎戦いの上手な人は、まず味方を固めて誰にも破られないようする。そして敵が弱点をあらわにして、誰もが簡単に勝てるようになるまで待つ。
 誰にも負けないように守りを固めるのは味方の問題である。逆に、誰もが簡単に勝てるようになるのは敵の問題である。
 だから、どのように戦いが上手な人でも、味方を固めることはできるが、敵が弱点をあらわにすることはできない。敵が弱体化するまで待つしか無いのである。

 少々長めの孫子の言葉ですが、これをバフェットの端的な言葉で表現すれば
【「守備」は実力である】となります。

 バフェットは、「きちんと備えさえしておけば問題(攻撃)を回避することはできると言います。「いつどんな問題がやってくるかはわからないが、必ず何かの問題がやってくることは予想できるし、それに備えることもできる」のです。

 たとえば、バークシャー・ハサウエィ(バフェット)の1965年~2013年の運用成績を<「バフェットに学ぶ【永久不滅投資法】」―損を出さないで永 遠に資産を増やすことは可能かー(同友館)>の4ページ以下の表で確認すると、49年間の運用成績は69万3518%です。つまり1965年にバフェット が投資した1万円が2013年には6935万円になっていたということです!

 バフェットのこの驚異的パフォーマンスの秘密を分析すると、まず過去49年間の間にマイナスになったのは2回だけで、その他の47回はすべてプラスで す。その間にリーマンショックはもちろんのこと、ITバブル崩壊、ブラックマンデー、アジア通貨危機など数多くの「危機」があったことを考えると驚くべき ことです。

 また、リーマンショックが起こった2008年、S&Pが37%も下げているのに対して、バークシャーは9・6%のマイナスと健闘しています。「危機や下 げ相場に強い」バークシャーの面目躍如です。逆にITバブルのピークである1999年のS&P500の上昇率が21%であるのに対して、バークシャーのパ フォーマンスはわずかにプラス0・5%です。

 ですから、バークシャー(バフェット)の素晴らしい成績が、「守り」によって成し遂げられたことは明らかです。「勝つ」ことでは無く、「負けない」ことが大事なのです。

 また、マイケル・ポーターの「競争戦略」も基本的にバフェットと同じです。自社が競争優位を持つ特定の分野に人材や資源を投入し、勝利を確信できない分野では戦いをしない(撤退する)ようにするべきであると説きます。

 確かに、過去のITやバイオテクノロジーなどの分野で、うまくいけば大成功するかもしれません。しかし、そのような分野では近い未来でさえ予測するのが 困難(ITでは「ドッグイヤー」=7年程度の犬の寿命の感覚で物事が進むという言葉も使われました)ですし、一度成功しても次もまた成功するかどうかはわ かりません。つまり、運まかせの部分が多いということです。

 孫子も、攻撃をする際に敵の実力や敵がどのような反撃をするかを予想するのは困難であるから、できる限り攻撃をしないようにするべきであると説きます。攻撃をしていいのは、勝利を確信できる時だけです。

 そして大概の場合、「勝利を確信できる」のは敵が弱体化した時です、これは相手の事情に左右されます。それまでは辛抱強く待たなければなりません。バフェットによれば「投資の利益は忍耐に対する報酬」ですし、「投資は何回見送りをしてもアウトにならない野球」です。

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(大原浩)

☆8月26日に「バフェットに学ぶ【永久不滅投資法】」-損を出さないで永
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 GINZAXグローバル経済・投資研究会・代表大原浩著

*ブログ「大原浩の金融・経済地動説」http://www.actiblog.com/ohara/

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)