香港での民主化デモなど地政学リスクへの警戒感、減速傾向が目立つ欧州景気への懸念などが株価の下落要因として説明されていますが、基本的には9月半ばまでの上昇相場の調整局面と考えています。
日銀の黒田総裁は本日、衆院予算委員会で為替相場の円安について、「日本経済としてマイナスになるというようなことはない」と改めて述べていますが、為替相場での注目ポイントは以下の3点です。
(1)米FRBの金融政策とそれに対する市場の思惑
(2)日銀の金融政策とそれに対する市場の思惑
(3)日本の貿易収支
です。
これまで、何度も言及したことですが、この3つのポイントの変化がない限り、当面円安傾向が続くと想定しています。
日銀短観では全規模・全産業の14年度設備投資額(含む土地投資額)は、6月調査に比べ2.4ポイント上方修正され、前年比4.2%増となりました。個 人消費および設備投資、輸出の伸び悩みが伝えられていますが、設備投資は緩やかな増勢が見込まれます。14年7~9月期のGDPは当初の期待通りの鮮明な V字回復は難しくなりましたが、政府は消費税率の再引き上げを実施すると思われます。延期するには法律の改正が必要となり、そのために政治日程を費やすこ とは避けるのではないでしょうか。景気の落ち込みを回避するために、補正予算の編成などによる経済対策、日銀による追加緩和を組み合わせると予想します。
ところで、29日に住友商事(8058)が2400億円程度の減損損失が発生する見込みであることを公表し、15/3期の純利益予想を2500億円から 100億円に大幅に減額しました。見込まれる減損損失のうち1700億円を北米のタイトオイル(シェールオイル)権益が占めます。伊藤忠(8001)、丸 紅(8002)も既に北米でのシェールガス&オイル権益の減損処理を実施していますが、住商の場合は、金額、時期ともにネガティブ・サプライズとなりまし た。
住商は5大総合商社の中では唯一の戦後派であり、住友グループの不動産管理会社から総合商社に成長しています。同社の発展を支えたのは、同じ住友グルー プの住金の鋼管の販売事業であり、同社は「大型の鉄鋼商社」とも形容できます。資源ビジネスに関するノウハウ、知見、資源メジャーとの関係性などにおいて は、先行する三菱商事(8058)、三井物産(8031)には遠く及びません。今回は、その辺りの弱点を図らずも露呈してしまったといえましょう。
(水島寒月)
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