発行済株式数と株価の掛け算が時価総額という指標で、日本の株式市場での最大の企業がトヨタ(7203)で28兆円ものスケールになっています。最小の企業が3億円台となっていておよそ3600社が取引されています。
トヨタのように3兆円もの経常利益を出す会社もあれば、ここ数年赤字続きの会社もあり、それぞれに市場で評価されて売買されています。
発行済みの株式しか取引の対象にはなりませんが、そのうちの多くは安定株主が保有して取引されないことが多く、実際には浮動株を対象にした取引が通常なされています。
会社四季報などには浮動株比率が掲げられていますが、その比率が高いほど取引の対象となる株式が多いと想定されますし、反対に低いと取引対象が限定されていると考えられます。
発行済み株式数が少なく、しかも浮動株比率が低い企業の株式取引、つまり出来高は少なく、反対に発行済み株式数が多くて浮動株比率の高い企業ほど通常の 出来高が多いということになります。出来高の増加はそうした発行体企業に何等かの変化が起きそうな場合や、需給面での変化が起きた場合が通常です。
投資家はおいしい蜜に群がるアリのようです。
おいしそうなネタには多くの投資家が集まってきます。出来高は人気のバロメーターであり、絶対ではありませんが、出来高を見て投資するかどうか判断する投資家が多いのも事実です。
そこである資金力を持った投資家がいるとしましょう。この場合の投資家は一人でなくても構いません。グループ数名でも集まれば大きな資金になる可能性があります。
時価総額が20億円程度の企業なら資産1億円以上を持った個人投資家が10人集まれば、発行済み株式の過半数を押さえてしまうことができます。
通常の企業であれば浮動株比率は10%から40%程度なのでちょっと油断するとあっと言う間に買い集められてコントロールされてしまう可能性があります。
取引される株式のことを市場では玉(ぎょく)と言います。
よく玉の争奪戦などという言い方をしますが、証券用語としては独特の言い回しです。
玉を支配して株価を維持するためには浮動株の多くを買い集めてトレンドを形成し不特定多数の投資家の関心を高める必要があります。何の目的で玉を支配するかは様々あろうかと思いますが、いずれは支配した玉を転売する目的が根底にある可能性が多いかと思います。
また、買い手によっては経営権を得る目的の場合もあるかも知れません。いわゆるM&Aの目的です。
流動性が高い企業と乏しい企業、発行体企業の流動性の状況も様々ですが、投資家の立場からはそうした状況を分析してみるのも企業のファンダメンタルズ分析とともに念頭に置いておきたいポイントかも知れません。
株高の背景には限られた流動性の中でキャッシュポジションを潤沢にもった投資家の市場への参入ということが考えられます。
かつては不景気の株高と言われましたが、このところも不景気の株高が続いている様相となってきました。企業と投資家は双方で持ちつ持たれつの関係にあ り、株高はそれが続く限りはお互いがハッピーになるのですが、株価の上昇は業績の向上が前提でないと評価指標の低下となり、株価の下落をもたらします。
そこでは投資家同士の戦いが始まります。浮動株を吸収し、玉を支配した余裕のある投資家は企業の成長を待って、更に自らが投資した株価以上に値上がりすれば転売すれば良いことになります。
企業への評価は投資家によって分かれますが、株高の継続には業績面、材料面、将来性などが必要で、未来の成長の姿を描いてアピールするIRも必要となります。
浮動株のうちどの程度を買うと玉が支配できるのか、それはケースバイケースですので実際にはわかりませんが、その約5割程度だろうと推察されます。つま り時価総額が10億円しかなくて、浮動株が20%だとすればその約半分、10%、1億円分投資すればある程度の玉の支配ができることになります。
但しここまでの株主となれば5%ルールに抵触して氏名を明かし、1%以上の変動に応じて届ける必要があり、現実には難しい面があります。
また、この程度の時価総額企業だと流動性に乏しくリスクも高いので個人投資家が近寄るのはよほどのこととなります。
現実には企業内容を吟味しながら余裕資金を分散させていくのがオーソドックスなやり方です。リスクのある株式投資に一極集中はできるだけ避けるべきですので億の近道の読者の皆様にはいくつかの銘柄に分散投資するポートフォリオの構築をお奨めしたいと思います。
玉の支配が見られる銘柄に少数投資を行い、成果を高めることが重要です。
ただ、ポートフォリオの中で30%程度まで一極集中してみたいと思われるのであれば経営者との面談や、市場での評価などを調査しておく必要があります。この場合はEXITまでに時間を要します。流動性のない銘柄であればなおさらです。
玉を支配できたとしても企業が業績を悪化させては元も子もありません。ファンダメンタルズと市場での需給などを吟味し着実な運用に心掛けることが結局は重要だと思われます。
(炎)
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