今年の出世株の一つと期待されたロジコム(8938)が先週末、今期業績の下方修正を受けて株価急落。関係株主、投資家の失望につながっています。


 株価は1570円で前日比300円安で、時価総額は37億円の水準となっています。ロジコムは今年7月1日からソーシャルレンディング事業を開始。その ための子会社としてこの業界の先駆企業maneoと提携し専門の子会社LCレンディングを設立。既に22億円余りの投資資金を集めており、一定の成功を収 めています。
 7月から10月までの4か月間で22億円ですから、月間平均5億円余りのペースで集まっていることになりますので、決算期末までに50億円近い資金が集まるものと期待されます。

 同社のビジネスはもともとは倉庫などのサブリース(転貸)事業で東京多摩、埼玉、千葉などのエリアが中心でしたが、新たにスタートした不動産ファンドで運営管理を行うPM事業やアセットマネジメント(AM)事業を行い、事業規模の拡大を図ろうとしています。

 こうした事業のためにSPC(特別目的会社)を案件ごとに設立し、債務保証する一定期間だけを連結化するという手法で積極的に成長をしていこうと開始したのが、資金調達の手法としてのソーシャルレンディングです。

 一定期間、一定の利回りを投資家に提示して不特定の投資家から資金を集め、メザニンローンに充当。金融機関にだけ頼らないファイナンスで有望案件を購入 していく方策を採用して賃貸収入を得るほか、購入した物件の売却によって特別利益を得て当期利益を膨らませていくビジネスモデルを採用しています。

 ソーシャルレンディングではそれほどの儲けにはなりませんが倉庫やショッピングセンターなどの商業施設のPMやAMで収益を拡大させるということになります。


 なぜ同社株が先週急落したかと言えば、今期第2四半期決算発表で今期の売上、営業利益、経常利益を下方修正したためです。

 もともとの計画では今期は売上高72億円、営業利益10億円、経常利益3億円としていましたが、これを売上高65億円、営業利益5億円、経常利益2.5 億円の赤字としたものですから、これを嫌気して一気に株価は前日の1870円に対して寄り付きから1510円(360円安)で始まり、一時1473円の安 値をつけるなどとても不安定な値動きになってしまいました。

 同社は当期利益については期初段階では未発表でしたが、中間期でようやく7億18百万円、通期10億円と発表。EPSは422.3円(これで単純計算でPERは3.7倍)へと拡大する見込みとなっています。
 当期利益の見通しは突出していますが、これは米国の案件の売却益が8億円近く含まれており、一過性のものだけに投資家は前向きにはなかなか評価してくれなかったようです(寄り付きから3万株程度のまとまった売りが出たようです)。

 今期業績はまだトップラインができておらず、特別利益に頼る段階ではありますが、ビジネスモデルとしてはできており、多少でも本格浮上の兆しが見え始めている点に注目すべきかと思います。
 まだ、会社からのコメントは頂けていませんので簡単に結論を導けない状態ですが、1570円の株価は個人的には既にやや売られ過ぎの感触を持っています。

 特別利益とは言え、当期利益段階で10億円が積まれ同社の財務面の改善が進むことになります。来期は進捗の遅れがあった秋田での商業施設の売上貢献など が期待される見られることから、売上、営業利益、経常利益の各段階で数字が上積みされてくると期待される一方で、当期利益は米国の案件売却がなくなります ので平準化することになるでしょうが、SPC案件の売却等の進展からEPSは高水準を維持していくと予想されます。

 営業利益10億円に再挑戦することとなれば、時価総額は60億円から100億円程度を目指すことになるものと期待されます。


 その方向性を示すためには同社首脳の説明が必要です。できるだけ早く皆さんにその方向性が示せるようにしたいと思います。


 それにしても市場での評価はかなりネガティブなものとなってしまいました。
 それと気になったのは、会計方針の変更が打ち出され、金融費用の一括処理から期間配分される処置となったことです。これによってもたらされる経費の減少がどの程度で、一括処理した場合と比べてどの程度利益にプラスになったのかも知りたいところです。


 株価はストップ安となってしまう恐れもありましたが、ストップ安の寸前で買いが入り、下げ止まった感があります。今週もまた売り物がちになる可能性がありますが、市場内で一口コメント等でもポジティブな評価が出始めると一気に株価は上昇に転じる可能性があります。

 一方で何もない(投資家に十分にビジネスの実体が伝わらない)とまた極端に言うと1000円割れ(時価総額24億円)まで行く可能性もありますので、当面は注意深く見ていくべきです。


【参照:今年のロジコム株の株価推移】

 2015年10月までの時価総額のゾーンは18億円―60億円と幅がありました。中間値は39億円で、現状は37億円。つまり766円から2560円まで上がった株が1570円という水準になり、中間の1663円を少し下回った状態ということになります。
 営業利益3.6億円から10億円を織り込みに行った株価が5億円を織り込みに行く過程であることになります。

 ですから営業利益5億円が今期最低水準維持できるかどうか、来期がどの程度期待できるかが今後の株価の動向を占う上では重要です。


月  安値   高値    出来高

1月 766円―990円 27.85万株
2月 842  925   9.86
3月 880  941   5.47
4月 897 1028  13.43
5月 950 1088  10.23
6月1044 1717  46.95 出来高のピーク/投資家の入れ替わり
7月1551 2400  42.31
8月1821 2439  36.77
9月1690 2560  35.7  株価のピーク/個人株主中心?
10月1473 2001  17.6
時価1570円


 今後の株価は将来の営業利益、経常利益、当期利益がどの程度まで拡大するのかによって決まってきます。
 ソーシャルレンディングにて集まった資金が年明けから償還され、実績が生まれてくることがまずは必要です。


 ソーシャルレンディングは他でも始まっていてmaneoはGMOとも開始したようですが、これをネガティブに考える必要はなく、むしろ認知度が高まりプラスに評価されるとポジティブに考えておきたいと思います。


(炎)


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)


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