10月後半の市場の注目は、主要国の中央銀行の動きでした。


 先陣を切って、10月22日に市場にギフトを送ったのは欧州中銀でした。 ドラギ総裁が、定例理事会後の記者会見で12月の追加緩和を予告。続いて、そ の週末に中国人民銀行が利下げに動き、金融緩和姿勢を明確に示したことから、世界のマーケットは金融相場を期待するリスクオンの展開となりました。


 翌週の米国金融政策決定会合FOMCで注目された声明文から、「国際情勢への配慮」が消され、「経済指標を見極めて、12月の会合で利上げを検討、判断する」等の文言が記されたことから、薄くなった年内利上げ期待に最終的には株高ドル高債券安で反応しました。
 一方、一部に根強い期待があたハロウィン前日の日銀追加緩和が見送られたのは残念ではありました。


 このような主要国の最新の金融政策姿勢に反応して為替市場では、欧州中銀の発表に反応してユーロ安ドル高、さらに中国の利下げで更にリスクオンの動きが加わり、ドル高円安の動きに。とは言え、8月の人民元切下げの混乱時以来の狭いレンジを大きく超えてはいません。


 10月中の主要通貨の対米ドルでのパフォーマンスで、上昇した通貨は新興国通貨でした。

 中国の影響を大きく受けるオセアニア通貨は、今年春から売られ続けてきましたが、10月初旬から反発を見せました。特にニュージーランド・ドルは主力輸 出品である乳製品価格の上昇を好感して、大きく反発。国内経済の弱さから反発が限定的だった豪ドルに対しても強い展開になりました。
 豪ドル対ニュージーランドドルでは、1.13半ばから1.06台まで豪ドル安ニュージーランド・ドル高に動きました(世界ラグビーの決勝戦には影響しなかったと思いますが、為替市場でもニュージーランド勝利の展開でした)。

 10月中、下落した通貨は、欧州通貨と日本円でした。大きな動きではありませんでしたが、今後の追加緩和が期待される通貨が売られた格好になりました。


 さて、前述したように8月以来、狭いレンジ内での取引が続くドル円相場ではありますが、このところレンジの下値が少しずつ上がっては来ています。

 10月は米国雇用統計の悪化から一時ドルが売られる場面から108円台前半までありましたが、それを安値に、重いと言われてきた120円台後半を超え、 121円台まで戻してきました。日銀の追加緩和が見送られた30日の市場でも下値は120円台を破ることはなく動いています。

 今日現在、50日移動平均maは(120.25)、100日maは(121.78)、200日maは(121.08)にあり、テクニカル的にも上向きの動きを示唆するものが増えています。


 本日は、郵政3社の上場によるご祝儀もあり株高の影響からの円安もあるでしょうが、米国の12月利上げ期待や原油価格の反発などを理由にしたドル金利の 上昇(10年債は9月以来の2.2%台)や、中国関連で聞こえてくるニュースから状況の落ち着きを感じ取っていることもあろうかと思います。

 一人っ子政策の転換は、直接マーケットに影響するとは言いませんが、新5か年計画には注目すべき点が多くあります。
 昨日発表された2016年~2020年の第13次5か年計画の草案で2010年水準から2020年までにGDPおよび国民一人当たりの所得を倍増させるとしています。通貨政策についても、2020年までに交換可能性を順序立って実現していくとしています。
 これは、近く議論が始まるIMFのSDR構成通貨への組み込みを意識したものと思われますが、通貨を含めて名実ともに国際社会で先進国である地位を示そうとする意図に沿って行われているものと思います。


 マーケットの今週の最大の注目イベントは、6日に発表される米国の雇用統計ですが、間接的に影響があるとみられる諸々の中国関連のニュースからも目が離せません。


 ドル円のレンジ相場の明確なブレイクは、日米金融政策当局の動きに左右されるところが大きいわけですが、需給面で見れば、引き続き日本企業によるM&Aなどの直接投資、年金基金などによる海外証券投資の増加が円安の背景にもなっていると思われます。

 また、先般発表の日銀短観上では、製造業・大企業の社内想定レートは117円39銭と示されました。先月、ドル下落の時に118円で下値が止まったの は、何かの力が働いたのか?とも思ってしまいますが、今後の政策当局の出方を見る上で、この水準は一つの目安になりそうです。

 日米金融政策方向の違い、需給関係、テクニカル的にも、ドル円相場がレンジを破るとしたら上への動きになろうかと依然変わらずに見ています。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

*11月4日13時執筆
 本号の情報は、主に11月3日のニューヨーク市場終値水準を引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。


式町 みどり拝


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)