北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第9回)
『ラーメンの憂鬱』〜自由の翼を失った飛べない鳥たち(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜福島・茨城のご当地ラーメン(山本剛志)
□告知スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『私が「ベジラーメン」に注目する理由』山本剛志
私がキュレーターを勤めるぐるなびのサイト「メシコレ」で、「【麹町】3号店開店間近「ソラノイロ」2店舗の魅力を再確認」という記事をアップした。この記事自体は、これまでラーマガでレビューしてきた事をまとめたものだが、この記事を、ベジフードに関して論考を加えているブログ「ベジップルズ」の以下のエントリーで紹介していただいた。
「ラーメン界がベジという異質を受け入れ進化させている理由を考えてみた。」
「ベジソバ」「ビーガンベジソバ」「スムージー」といった、ソラノイロのベジフードに触れた事を注目していただいた様子。そして、その背景について、ベジフードを注目している立場から紹介しているので引用します。
"果たして、日本の外食文化(和、イタリアン、フレンチ、ファストフード)でここまでベジをすんなりと受け入れ、そして発展させている業界はあるでしょうか
急速にベジラーメンという分野を確立しようとしているラーメン界。その背景を乙女男子的にまとめてみると、
・ラーメンという食べ物が今や世界中で大人気であること
・ラーメン業界自体が世界をマーケットとして捉えていること
・世界でビジネスとして戦うにはベジに対応することが必須であること
・ラーメン職人の意識と技術レベルの高さ"
確かにこういった面はあると思う。ラーメンが海外で人気である事と、海外をマーケットとして捉えている事はその通りで、ソラノイロ店主の宮崎さんは「2020年の東京五輪を控えて、まだ見ぬお客様の為。そしてお客様の健康の為にベジラーメンに取り組んでいます」と語っている。
一方で、「職人の意識と技術レベルの高さ」だけではベジメニューを出す事は難しい。日本の外食文化では、安くて量が多く、質も高いものが求められる。肉や魚を野菜に置き換えるだけでは難しい。ラーメン界でその取り組みが許されるのは、店主の裁量によって、自由な発想を取り入れる余地がある為と思われる。
もっとも、ベジフードやビーガンのラーメンだけをラーメン専門店で提供するには、まだベジフードの市場は成熟していないとも考える。そんな中での「ソラノイロ」で提供しているベジラーメンは、ベジだけで作ったスープとは思えないものになっている。この春「ソラノイロ」が開店させる号店では「ベジラーメン専門店」を予告している。これには大きな注目を集めている。
そして、私がベジラーメンに期待しているのは「制約がある事で、新しい工夫を加えた調理法が考えられる」ことである。日本でラーメンが国民食になっていった戦後には、スープに使えるのは、捨てるしかなかった鶏ガラや豚骨などであり、そこから、少しでも美味しい物を提供しようとしてきた歴史を持つ。
今はラーメンに様々な食材が入る「飽食の時代」。だからこそ、一つ一つの食材に向き合い、その魅力を引き出す発想が必要だと考えている。よく「引き算のラーメン」という言葉が使われるが、それは単に素材を削ったラーメンではなく、残された素材の魅力で、それまでのラーメンと変わらぬ魅力を引き出す事。ベジラーメンには、「引き算のラーメン」の発想が試されると考えている。
様々なラーメンが食べられる事はラーメン好きを魅了する。多様性を許容する社会が成長するように、多様性を持ったラーメンの世界はきっと大きく発展すると思っている。ベジラーメンも多様性の一つを構成してくれるものと、期待しているのである。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は「麺や庄の」が昨年8月に立ち上げた新業態『MENSHO TOKYO』の「ラム豚骨らーめん」を山路と山本が食べて、語ります。
「ラム豚骨らーめん塩スパイス」750円