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「菖蒲華」梅雨だからこそ映える美しさ|七十二候ダイアリー
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「菖蒲華」梅雨だからこそ映える美しさ|七十二候ダイアリー

2017-06-26 10:30
    桜が咲いて初々しい新社会人を街で見かけたら「春だなぁ」と、道すがら蚊取り線香の匂いがすると「夏だなぁ」と、なんとなく思うことがあるものの、僕らが日常生活の中で季節の変化を意識することはそんなに多くない。

    今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。

    七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。

    前回の七十二候:「乃東枯」酸味を楽しむ夏みかんが旬

    七十二候:菖蒲華さく(あやめはなさく)

    6月26日~6月30日ごろ
    四季:夏 二十四節気:夏至(げし)

    あやめが咲きはじめる時期。天気予報などなかった頃は、あやめの花で梅雨の到来を知ったという。梅雨の花といえばまっさきに紫陽花が浮かぶが、鮮やかな紫色のあやめに水が滴る姿もしっとり美しい。

    このあやめ、見分けるのが困難なほど似た花が多いことでも知られる。「何れ菖蒲か杜若(いずれあやめかかきつばた)」は、「あやめ」と「かきつばた」がよく似ていて両方美しいことから、どちらも優れていて選べないことをたとえたことわざ。さらに「しょうぶ」とも似ていて、あやめもしょうぶも漢字で「菖蒲」と書く。花びらに網目模様があるものが、あやめだ。

    旬の食材

    みょうが

    ショウガの仲間で、香味野菜としておなじみの食材。食用として栽培しているのは、世界でも日本のみ。

    土の下に地下茎を伸ばして広がり、時期になると土から赤い芽のようなものが顔を出す。これがふだん食べている部分で、花のつぼみのようなもの。収穫せずにそのままにしておくと、やがて花が咲く。

    かんぱち

    顔を正面から見てみると「八」の字に見えることが名前の由来。

    とくに天然物は漁獲が少ないこともあり高級魚とされており、ブリ、ヒラマサとともに、ブリ御三家と称されることも。全長約1.5mとブリの仲間では最も大きくなる。

    旬のこの時期は、なんといっても刺身。天然物に出会ったら迷わず食したい。

    本日の一句

    朝風に帷子軽し花あやめ

    露沾

    松尾芭蕉とも交友が深かったといわれる露沾。磐城平藩の藩主になる立場だったが、お家騒動があり、若くして半ば隠居生活のような日々を送りながら句を詠んだ。

    帷子(かたびら)は、麻で仕立てられた着物のこと。ジメジメした夜を過ごした翌朝、あやめを眺めていると湿気をどこかへ運んでいくように風が吹く……。服も心もフワッと軽やかになるような一瞬を捉えている。

    次回は「半夏生(はんげしょうず)」。

    illustrated by Kimiaki Yaegashi

    参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
    Japanese vegetable, Myoga ginger via Shutterstock
    raw fish on a wooden background – Yellowtail – Greater amberjack – gof via Shutterstock

    RSSブログ情報:https://www.roomie.jp/2017/06/389200/
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