岡山県は県内2大都市である、岡山、倉敷の両方にアクセスのいい総社市。桃太郎伝説の鬼が住んでいたと言われる鬼ノ城などの歴史的建築物も多く、最近では「パンの街」としても売り出され、ここ数年で移住者の増えている都市です。

そんな街の最寄り駅から徒歩10分ほどの住宅街に、今回ご紹介する横山さん家族の住まいはありました。

お名前(職業):横山圭祐さん(保育園・フリースクール経営)、裕美さん(アパレル企画・営業アシスタント)、お子さん2人
場所:岡山県総社市
広さ:111.8㎡ 6LDK
住宅の形態:築4年 戸建て
間取り図:

編集部作成

裕美さんの地元でもあるエリアで建てられた住まいは、設計から施工までコミュニケーションを絶やさずにつくられた、こだわりと思い入れのあるものでした。

インダストリアルをテーマにしたキッチンや趣味部屋を持ちながら、ところどころにDIYも施したディティールには、温かみのある手仕事感も感じられます。そんな夫婦が大切に築いたお部屋づくりついて、お話を伺ってきました。

■目次
1. お気に入りの場所
2. この部屋に決めた理由
3. 残念なところ
4. お気に入りのアイテム
5. 暮らしのアイデア
6. これからの暮らし

お気に入りの場所

インダストリアルなキッチン

お部屋に入ってすぐのキッチンは、インダストリアルでクールな印象。こちらは収納含めて、裕美さんが念願を叶えてつくった空間なのだそう。

「オールステンレスのキッチンにしたいという気持ちが最初にあり、食洗器もミーレにしました。壁付けではなく対面にして、住まいの中でも存在感のある場所にしています。

インダストリアルな空間にしたかったので、タイルは他の壁と同じ白ではなく、ヴィンテージ感のある深めのグレーにしました」(裕美さん)

インダストリアルな空間への意識は、家具にもありました。

「最初にあったCRASH GATEの収納棚(写真右)をベースに、サイズやカラーが合う収納を考えていきました。

ヴィンテージ調の食器棚と、アイアンの棚をオーダーメイドして、見せる収納にしています。この棚を使いたくて、住まいが完成する前から購入していました」(裕美さん)

「キッチンの脇を固める収納のはずが、主役級の存在感を出してますよね(笑)」(裕美さん)

気分のあがる空間づくりをすることで、家事のモチベーションアップにも繋がりそうです。

開放感のあるリビングダイニング

キッチンから臨むダイニングとリビングは、開放感ある空間を意識。施工会社ともコミュニケーションを重ね、細部まで考え抜かれた空間になっています。

「漆喰の壁と吹き抜けが、開放感のある空間にしてくれていますね」(裕美さん)

「リビングから玄関を覗くことができるFIX窓には、海外の工場で使われていたヴィンテージのものを採用しています。建設中にたまたま夫婦で立ち寄ったお店の倉庫で見つけて現場監督に相談し、工事に加えてもらいました」(圭祐さん)

同じく、建設中に施工会社さんと話して決めたというのが、板を組み合わせて奥行きを持たせたグレーの天井。

「天井には漆喰が塗れないということで、建築中に提案を受けました。主人には伝えぬまま進めてしまい、後になって知った時は驚いてましたね(笑)」(裕美さん)

ヘリンボーンのフローリングもお気に入りポイントの1つ。2階に上がって見ると、美しい模様がよりはっきり見て取れます。その見た目の美しさから、部分的ではなく、全体に施そうと決めたのだそう。

「建築中につくられているのを見て、大変なことをお願いしてしまったなぁとも思ったのですが……。仕上がりを見て、やっぱりやってよかったと思いましたね」(裕美さん)

自分の時間を楽しめる防音室

圭祐さんが唯一、空間全体を自由に決めさせてもらったというのが防音室。ご夫婦揃って趣味でバンドをされていたこともあり、設計の中に組み込まれたスペースでした。

「壁はあえてコンクリートブロックむき出しにして、節約するために吸音材等は業者に頼まず、DIYしています」(圭祐さん)

防音室とリビングのドアを締めれば、音漏れはほとんど気にならないのだそう。コンクリート壁に楽器が並ぶと、インテリアとしてもカッコいい空間になりますね。

楽器の対面にある収納棚には、圭祐さんがハマっているというキャンプグッズも並んでいました。

玄関からすぐの部屋ということもあり、車からの出し入れもしやすいのだそう。まさに趣味部屋、ロマンのある空間でした。

この部屋に決めた理由

地元で建てるエコな住まい

裕美さんの地元で、ご実家も近い土地を見つけてはじまった住まいづくり。ちょうど産休に入られていたことから、内装などの話し合いはインテリアに関心があった裕美さん主導で進められたそう。

「開放的な空間をつくるため、吹き抜けをがっつり入れて、広い空間にしてもらいました。住まいのテイストは私がTRUCK FURNITUREが好きだったのと、当時流行っていたこともありインダストリアル調で話を進めていきました」(裕美さん)

「エコな家にしたかったので、冬は南から光が差し込んで、夏は光を遮断する設計になっています。

また壁は工務店さん(株式会社サンオリエント)で取り扱われていた漆喰にしました。壁紙とコスト差も少なく見た目もよくて、湿気の調整や防臭効果があります」(裕美さん)

さらに漆喰には、埃が舞いにくくなり、ハウスダストのアレルギー症状を抑える効果も期待できるのだそう。

「私が元々、ハウスダストのアレルギー持ちだったのですが、この家に引っ越してからはほとんど発症しなくなりました」(圭祐さん)

残念なところ

収納スペースの設計

施工会社さんとも密にコミュニケーションを取りながら進めた住まいづくりですが、1点だけ認識の齟齬が生まれてしまっていたというのが収納スペースへのアクセスでした。

「当初、階段下の空間はリビング側と玄関側で同じ収納スペースとしてアクセスできるようにしようとしたのですが、設計の際の情報共有がうまくできておらず、玄関側からしか使うことができなくなってしまいました」(裕美さん)

「ただその分、壁掛け収納として考え方を変え、鞄やアウターをかけて収納できるよう変更したため、結果的にはリビング、玄関の両方を収納スペースとして活用することができています」(裕美さん)

お気に入りのアイテム

インテリアの中心になっているテレビボード

ヘリンボーンのフローリングにも馴染んでいたテレビボードは、サイドボードとして売られていたものを活用。その存在感からインテリアの中心になっているのだそう。

「テレビボードをやめて、デザインが気に入ったサイドボードを置いて使っています。そのため、通常の家より、テレビの位置が高めになっています。植物を置いたり、周りに絵を飾ったりして、インテリアの中心になっている存在です」(裕美さん)

テレビボードの周りにはたくさんのアートが。漆喰の白壁がキャンパスのように、裕美さんの知人・KOJI MIYAWAKIさんが描いたというお気に入りの作品たちが並んでいます。

「知り合いの作品がすごく好きで、定期的に新しいものを描いてもらっては、家に迎えいれています」(裕美さん)

ライトレールを活用することで、作品の入れ替えやレイアウトの調節を行いやすくなっているのもいいですね。

ガシガシ使えるplatchampのお皿

キッチンからは、デザインも機能性も兼ね備えたplatchampのお皿をお気に入りとして挙げてくださいました。

「東京に遊びに行ったときに食器屋さんで出会いました。ホーローなので、汚れがとれやすくて頑丈です。陶器にみたいに繊細さがないのでガシガシ洗えて、深皿なのでカレーやおでんなどにも重宝しています」(裕美さん)

「キャンプにも使えるという話だったんですが、キャンプに持っていってもいいというOKをもらえたことはないですね(笑)」(圭祐さん)

アナログ感を楽しめるアラジンストーブ

開放的なリビングのある住まいで、冬場の暮らしの強い味方になってくれているのがアラジンストーブ。住まいのテイストと合わせて、色はアイボリーを選ばれていました。

「冬限定ですが、レトロでコンパクトな見た目が可愛いくて、ほんのり暖かいストーブです。ほかのストーブに比べるとかなりアナログですが、そのアナログなところも含めて楽しむことができます」(裕美さん)

暮らしのアイデア

“見せる”と“隠す”の使い分け

収納は、スペースごとに“見せる”と“隠す”の使い分けがされていました。

「作家さんのお皿やお気に入りアイテムは見せる収納、日用品や季節ものなど、ごちゃごちゃしそうなアイテムは隠す収納にしています」(裕美さん)

見せる収納は、見た目のよさという観点以外に、使い勝手のよさからも活用されています。そのため、2階の作業部屋は全面がオープン収納に。

ご夫妻並んで作業しても、十分な広さが確保されているのもいいですね。

使いやすくDIYした収納スペース

さらにはDIYで作成した収納スペースもありました。そのひとつが、圭祐さんがつくった玄関収納。

家族の靴が十分に収納できることはもちろん、幅も変えられるため、家族の成長と合わせて柔軟に変更ができそうです。

同じくDIYの壁面収納は洗面所にも。衣類を取り出しやすい、使い勝手のいい収納ができ上がっていました。

「ウォークインクローゼットは2階にありますが、入浴後に使用する下着やパジャマは洗面所に置いています。必要な時に、必要なものがすぐ手に取れるようにしていますね」(裕美さん)

ここでは隠す収納も併用。洗面台の鏡を開き扉にすることで、内部に収納スペースができていました。家族が多いとどうしても多くなってしまう洗面用具がスッキリ仕舞えるのは便利ですね。

仕上げと素材で演出するクラフト感

インダストリアルな空間をつくり出すため、ディティールまでこだわりがありました。

「リビングの階段壁は、建築中にあえて雑に、DIYで壁を塗った感が出るように仕上げてもらいました。作業される方は少し困られていましたが、納得のいく仕上がりになってよかったです」(圭祐さん)

他にも塗料に工夫を施すことで木材を鉄に見えるようにしたり、時計もあえてアンティークに見えるデザインのものを選ばれたりと、こだわりのポイントがありました。

圭祐さんが絶対に使いたいと裕美さんに提案したスイッチは、当時では珍しかった工場用のもの。空間づくりのため、大型のインテリアだけでなく細部の素材感まで考えられているのがさすがだなぁ。

これからの暮らし

家族とともに変化する空間づくり

1階のインテリアは完成してきた中で、今後はまだ手を付けられていないスペースに着手していきたいとのこと。

「子どもがこれから小学校に上がるので、今はおもちゃ部屋になっている部屋を子ども部屋にしたいと思っています」(裕美さん)

「室内が完成したら、なかなか手が出せていない外構についても考えていきたいです。少しずつガーデニングをしたり、お金を貯めてバイクが停められるガレージを建てたりしたいですね」(圭祐さん)

コンセプトからディティールまで手を抜くことなく住まいづくりを進められた、横山さんご夫妻。

実際の暮らしを通じて得られた経験と、お子さんの成長という次なる体験を経て、これからどんな空間がつくられていくのか。

晴れの国の穏やかな日中のお部屋は、次の変化の原動力となるお子さんの声で活気にあふれていました。

Photographed by tsubottlee

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