書店は、その街の文芸カルチャーを色濃く映し出す場所。

どのようなジャンルの本・雑誌が並び、どんな人々が手に取っているのかをながめていると、その街の知的な表情が、自然と浮かび上がってきます。

さて、ポートランドでは、1970年代の創設以来数多くの地元の読書家たちに愛されてきた、世界最大級の独立系書店「Powell’s Books(パウエルズ・ブックス)」が、街のランドマークのような存在として広く知られています。



地上3階、6324平方メートルにおよぶ店舗では、文学、社会科学、哲学、経営書から、料理、ガーデニング、クラフトまで、幅広いジャンルにわたって100万冊以上を蔵書。

この書店では古本の買取も行っており、同じタイトルでも、ハードカバー、ペーパーバック、新古本、古本など、形態も値段も様々な本を、一緒に並べて販売するスタイルが特徴的です。

天井に届くほど高い書棚に囲まれ、まるで迷路のような店内は、今まで見たことのない本や雑誌との出会いに満ちていて、時が経つのをつい忘れてしまいそうになってしまいますよ。



独立心あふれるポートランドらしい、インディーズ感たっぷりの本屋さんといえば、「Microcosm Publishing」。

それほど大きくないスペースには、作家やアーティストたちが自主製作したZINE(ジン)、ポスター、DVD、カセットテープ、Tシャツ、缶バッジなど、雑然とディスプレイされています。

一見、無骨にすら感じられる店内ですが、作り手の思いやこだわり、世界観がギュッと凝縮された魅力ある作品を“発掘”するような楽しみは、他の書店では味わえない魅力です。



街の中心部から少し離れたポートランド北西にある「Reading Frenzy」は、「プロの目利き」のセンスを感じさせる書店。

アート・デザイン・カルチャーを中心に、選び抜かれた本や雑誌が集まる書棚には、日本語のポートランド専門ガイド「TRUE PORTLAND」も並んでいました。

「日本語はよくわからないんだけど、私のお気に入りのお店もたくさん紹介されていて、ステキな本なの。」

「このガイドブックがきっかけで、遠く日本からやってくるお客さんとこうやって出会えるなんて、本当にうれしいわ。」と話してくれた店員さん。



日本とポートランドという離れた二つの場所をつないだ「TRUE PORTLAND」の影響力に驚かされるとともに、本だけが持つメディアとしての役割や、本を介して人と人が出会う場としての書店の存在意義を、改めて考えずにはいられません。

いよいよ読書の秋。たまにはふらっと、本屋さんに足を運んでみてはいかがでしょう。今まで知らなかったステキな本との出会いが、あなたを待っているかも。

Photographed by Yukiko Matsuoka

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