■近況報告
人生は一度きりなので、いろいろなことを体験したい。「視野を広げたい」とも言い換えられますが、首を振った程度では、せいぜい周辺が見えるようになるだけ。視野を広げようと思ったら、自分の立っている場所を変える。これで最も効率的な手段です。そんなわけで最近、有限会社ブンヤの代表取締役というポジションを残しつつ、ほかのオフィスに電車出勤して働くというプレイをしています。いわゆるサラリーマン風な生活を送っているのですが、メリット・デメリットの両方を感じます。
メリットは、いつも同じ環境で働けること。ちょっと前までは派遣会社に登録し、指定された現場で肉体労働をしていたのですが、この場合、集合場所と解散場所が毎回異なります。ところが会社勤めになると、毎回同じ現場で同じ時間だけ働けば、給料をもらえます。しかも日給換算で日雇い労働の2倍弱も!あと毎月シフトが組まれるのですが、変更がない限り、約1カ月先まで予定が定まることは、かなりありがたい。日雇いの派遣労働だと、自分に仕事が回ってくるかどうか、毎日が勝負ですからね。
一方デメリットは、プライベートの時間が短くなったことです。片道1時間の通勤プラス休憩込みで8時間の労働となると、その日は仕事以外のことをする気力がなくなります。世のサラリーマンは週休2日でこんな日常を過ごしているのかと思うと、尊敬の念しかないですね。あとは、活動の意欲が低下したように思います。もともと予定を立てていないと、休日は家でゴロゴロして終了というタイプなのですが、その傾向が強まった気がします。
いま6連休の4日目ですが、初日の8月9日(金)は、会社勤め以外の仕事と錦糸町で行われた講習会に出席して終了。10日(土)は、コミックマーケット96の声優島で2冊ほど買い物をして終了。i☆Risのリリースイベントが中止になったことも、やる気の低下に拍車を掛けました。11日(日・祝)は、澁谷梓希さんのイベント(夜の部のみ)に行っただけで、それまでは、ちょっと事務系の仕事をこなした程度。そして本日12日(月・休)は、朝からゲーム三昧で、さすがに「これは良くないぞ」と思い、こうしてパソコンのキーボードをたたいているという感じです。
■「おとなのひきこもり」になった時、考えてほしいこと
少し前ですが7月25日(木)に朝日新聞メディアラボ渋谷分室で開催された、下記のトークイベントに行ってきました。
「おとなのひきこもり」になった時、考えてほしいこと
菅野久美子×赤木智弘×常見陽平――孤独死3万人の道しるべ
https://peatix.com/event/737644
私は1997年3月に大学を卒業、まさに「ロストジェネレーション」(1993年から2004年ごろまで、新卒の求人倍率が極めて低かった時期に社会に出た世代)に当てはまるため、この問題には強い関心を持っています。ちょっと前に思い立って“就職活動”をしてみたのですが、ホント仕事がない。介護職や清掃員、警備員、タクシー運転手など、そういう仕事はあるのですが、自分のキャリアに見合った仕事は全く見つからない。私の希望している出版とかメディア業界自体の事情や、私の力不足ということもありますが、全然ダメでした。そんなわけで派遣の肉体労働を始めたのですが、これが予想以上につらい。肉体労働なので肉体的にもきついのは当然ですが、精神的にもきつい。1日中罵倒されるだけなんて時もありますからね。そりゃ「ひきこもり」になる人が出てくるも当然なのかなと思います。
トークイベントで気になったキーワードをいくつか挙げようと思いますが、まずは「企業に対する不信感」。これについては、登壇者の1人・赤木智弘氏が記事に書いています。
「ロスジェネにつながりはいらない」赤木智弘さんが語る唯一の救済策
https://withnews.jp/article/f0190806000qq000000000000000W0cv10301qq000019568A
時給1000円弱で160時間働いてようやく15万円程度の給料をもらう40代のフリーターに、月30万円の仕事を紹介したら、フリーターはすぐにその仕事に飛びつくだろうか? いや、非常に警戒をするはずなのだ。なぜなら、月160時間必死に働いてようやく15万円もらえるのだから、もし月30万円の仕事などに就いてしまえば、2倍近い苦しくひどい労働をさせられるのかと、警戒するのである。
日雇い労働を体験した身からすると、ものすごく納得です。時給が高い仕事には、高いなりの原因がある。先ほど記した「1日中罵倒されるだけ」の仕事も、時給は高かった。でも、やりたい人がいないから、私のところまで回ってくる。給料が良い仕事には裏があることは、もはや常識です。
ところが現在の仕事、空調ばっちりのオフィス内で、パソコンのキーボードをカタカタたたくだけの仕事は、日雇い仕事に比べ、日給換算で約2倍のお金がもらえる。もちろん、キーボードをカタカタたたくにも技術が必要ですが、「1日中罵倒されるだけ」より大変かというと全くそんなことはない。フリーランスのライター稼業でも、大変さと原稿料は正比例するとは限りません。大変な作業だった割にギャラが安い、適当に知っていることを書いただけで高額な原稿料をもらえたという経験は、同世代のライターなら誰にでもあると思います。でも、文字数×〇円という原稿しか書いたことない人に、そういう話は理解してもらえません。
「世代内格差」も重要なキーワードです。ロスジェネ世代が全て貧乏ならば「ロスジェネ世代全体を救えば良い」となるのですが、ロスジェネ世代の著名人に金持ちが多いことも事実です。堀江貴文氏は1つ年上ですし、前澤友作氏は2つ年下。こうしたことから、常見陽平氏の発言だったと思うのですが、「若い世代は、しんどいロスジェネ世代を見たことがない」というのです。これも分かります。私もロスジェネ世代ですが、周りにいる同世代は、なんだかんだで“うまく”生きている人たちばかりです。私の周りにいるロスジェネ世代は大体オタクですが、アイドル現場でチェキを撮ったり、遠征したり、文化的な最低限の生活が送れている印象を受けます。王子法人会青年部会の面々なんかは、基本的に会社経営者(もしくは後継者)ですからね。しかし派遣で肉体労働の現場に行くと、社員としてですが、私たちと同じような仕事をしている同年代(と思われる人)を見掛けることは多い。もちろん派遣に比べれば高給取りだとは思うのですが(就職サイトの情報を見る限り……)、どのようなキャリア形成を考えているのか。まあ私に言われたくないでしょうが。
菅野久美子氏は「セルフ・ネグレクト」というキーワードを挙げていました。ネットで調べたら、菅野氏の記事が見つかりました。
就職氷河期世代を襲う「セルフ・ネグレクト」 自らの健康を蝕む「緩慢な自殺」とは?
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/12/post-11444.php
私の場合は家族と同居していることもあり、孤独死みたいな状況になりづらいのですが、自分のことがどうでもよくなる感覚は分かります。まだ、それなりに収入があって、衣食住だけでなく、オタク現場に行きたいみたいな欲求もあるから良いですが、加齢とともに体力は低下しますし、趣味のために外出しようという意欲が衰えていることは感じます。さらに収入も減れば、趣味にお金を掛ける気持ちもしぼむでしょうし、そうなると生きていることに意味を見いだせなくなる。そういう悪循環は容易に想像できます。
そもそも長生きできるかどうかも分からないのに、将来を悲観しても仕方ないとは思いますが、人生再設計第一世代とか言われてもねぇ……。よく分からない支援の枠組みを作るぐらいなら、直接お金を配ってもらった方がありがたいとしか言えないですね。