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2019年9月の記事 1件

【さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』】ショートストーリー第六話『秋のスープ』

さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』ショートストーリーをチャンネル会員限定にてブロマガで順次配信。第六話『秋のスープ』 (作:古樹佳夜)------------------------------------ ◆◆月見草とスープ◆◆ まん丸で真っ白い、お月様だ。おまんじゅうに見える。いや……マシュマロかな? 半分のお月様はおやつのパンケーキ。 三日月はかじっちゃったクッキーの形。 ……ああ、お腹減ったなぁ……。「海月君、またですか?」 「お、お腹の虫がぐぅ〜って鳴いてる」 「だ〜って、夕飯足んないんだもん……」 隣に座っているのは、いつものようにスケッチをしている羊と、月明かりで読書をしている月兎だ。 「ゆ、夕ご飯いっぱい食べてたじゃない……」 「はい。あれから二時間くらいしか経ってないです」二人とも僕を呆れた目で見つめている。 ちょっと、そんな顔する事ないじゃん? 「あのさ、僕だって好きでお腹減るわけじゃないんだよ?生まれつきこうなんだ。 羊が急に眠くなって気を失っちゃったり、 月兎がお日様に当たると動けなくなっちゃうのと一緒なんだ」 そう、我慢しようったって上手くいくはずない。細かいメカニズムはわかんないけど、人それぞれ変えようもない特徴ってのがある。それに対してとやかく文句をつけるのは、バカバカしい。考えるだけ無駄ってもんだ。 「ん〜……それはとても辛いですね」 「う、うん……。み、海月君……わかってあげてなくて……その……ご、ごめんね?」 「へへ。わかればいいんだよ」 鈴に同じ事を言ったらため息をつかれたけど、さすが、二人は親友だね。僕の気持ちをちゃんと理解してくれたみたいだ。 「あ〜あ。それにしたって、お腹減った。 食堂に何か残ってないかなぁ」 「ないと思いますけど……」 「す、鈴兄が『海月が食べ過ぎるから』って、 厨房の食料庫に、か、鍵をつけていたよ」 「え!? 鈴ったら何てことを〜〜!」 「鈴君は食べ過ぎを心配しているんだと思います」 「そんなの知らない!」 プイッと顔を背けると羊が顔を覗き込んできた。嗜められているみたいだ。 「もういいよ!」 僕は庭の奥に歩いて行く。 「海月君、どこに行くんですか?」 「庭の食べものを探すの。もしかしたら果物が生ってるかもしれない」    「お、怒られるよ……。か、葛君のことで、 鈴兄、いつもよりピリピリしてるから…… み、見つかったら、大変……」 「本当は庭に出るのも止められましたからね」 「で、でも、庭先に三人で居るくらいなら…… ゆ、許してくれるとおも、思う。 でも、出歩いたら……」 「う……」 葛……あいつは神出鬼没で、怖い。何考えてるかもわかんないし、恐ろしい殺人鬼だ。二人の言葉を聞いて少しだけビビってしまった。 「月兎君も葛君が怖いんですか?」 「ち、違う……鈴兄に怒られるのが…… 嫌なだけ……」 月兎は鈴のことを誰よりも信頼している。だから、なるべく言いつけを守ろうとするんだ。鈴も月兎を弟みたいに可愛がる。本当にお互い『兄弟』とでも思っているのかな?たった2つしか違わないのに。だいたい、色々行動を指図したり、鈴は偉そうなんだよね! 僕のことは弟じゃなくて子分と勘違いしてるかも? 「……なんか、腹立ってきた」「え、な、なんで?」 「お腹空きすぎてですか?」 「違う!!」 『グゥ〜キュキュ』 腹の虫が盛大に鳴った。 「ふふっ!」 不意を突かれて羊が噴き出した。つられて月兎もくっくっと肩を震わせている。 「言ってることと全然違うじゃないですか」 羊は珍しくお腹を抱えて笑っていた。僕はそれが悔しくて、頬を膨らませる。 「ねえ! 笑ってないで二人も食べ物探し手伝って!」「え、え〜……」 「そうだ、三人で探そうよ。それなら安心でしょ?」 ようやく笑い終わった羊は、ふう、と息をついた。 「わかりました。でも、月明かりだけでは少し心もとないです。ランプを持ってくるので……」 「よ、羊君……その心配は……ないみたい」 「え……」 月兎は僕を指差した。ハッとして自分の身体を見渡してみる。気づかなかったけど、僕はさっきから光っていたみたいだ。 「これなら夜の庭でも歩けますね」 そう言って羊は笑った。  

【さんたく!!!朗読部『羊たちの標本』】ショートストーリー第六話『秋のスープ』
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