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野田稔と伊藤真の「社会人材学舎」VOL.4 NO.2
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野田稔と伊藤真の「社会人材学舎」VOL.4 NO.2

2014-05-12 06:00

    野田稔・伊藤真の「社会人材学舎」VOL.4 NO.2

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    コンテンツ

    今週のキーワード
    「正常化バイパス」

    対談VOL.4
    藤沢久美氏 vs. 野田稔

    やり続けるから、やるべきことがわかる
    自分を導くにも、世界をけん引するにも
    これから必要なのはDO型のリーダーシップ

    第2回 人と人をつなぎ、皆が種蒔きをする手伝いがしたい

    NPOは社会を変えるか?
    第14回 復旧の、その先を見据えた活動をいち早く始めた
         ――一般社団法人MAKOTO

    企業探訪:理想のワークプレイスを求めて
    第3回 SCSK株式会社
    その2: さまざまな常識を覆し、かつてないワークプレイスを創る

    粋に生きる
    5月の主任:「植田直樹・松尾芳憲」 酒ありき肴 与一
    第2回 自分が本当に好きな仕事を選び、その道を深める

    誌上講座
    テーマ3  パワーラーニングメソッド
    伊藤 真
    第5回:記憶術、時間術、そしてスランプの自己管理

    Change the Life“挑戦の軌跡”
    クールジャパンで新たなビジネススキームを!
    第2回 まさに、諦めないサラリーマンの人生を歩んだ

    連載コラム
    より良く生きる術
    釈 正輪
    第14回 より良く生きるために必要なのが“使命”




    今週のキーワード

    「正常化バイパス」

     先週も書いたように、変革するためには、現状に対する正しい危機意識を持たなくてはいけない。

     ところが、人間の意識の中には「正常化バイアス」という、非常に強いバイアスがあってその邪魔をする。たとえば火災警報が鳴る。火災警報が鳴ったら、とにかく避難をするのが正しい標準行動だ。状況確認は、その後でいい。そのほうが、生き残る確率ははるかに高くなる。

     ところが、多くの人は様子見をする。人間の心の中に、異常事態を嫌い、きっと正常な状態が続くという思い込み、ある種のバイアスがあるからだ。どこかで、「危ない」「このままではうまくない」とわかっていても、「きっと大丈夫だろう」という根拠のない自信のほうにすがってしまう。

     そうなると、ある種のフィルターが働いて、「このままで、きっと大丈夫」を補強する情報にしか目に入らなくなるものだ。

     それどころか、「今動くと危ない」という情報を拡大して捉え、それに従おうとすらする。「動いたら、こんな危険があるかもしれない」「こんな悪い事があるかもしれない」「こんなひどい目に遭うかもしれない」。すべて「かもしれない」のだけど、それを信じてしまう。

     その結果、チャンスとリスクは表裏なのに、人は動くことのリスクだけを見て、チャンスを信じない。

     それでは何も変わらない。






    対談VOL.4
    藤沢久美氏 vs. 野田稔

    やり続けるから、やるべきことがわかる
    自分を導くにも、世界をけん引するにも
    これから必要なのはDO型のリーダーシップ

    本誌の特集は、(社)社会人材学舎の代表理事である野田稔、伊藤真をホストとし、毎回多彩なゲストをお招きしてお送りする対談をベースに展開していきます。ゲストとの対談に加え、その方の生き様や、その方が率いる企業の理念などに関する記事を交え、原則として4回(すなわち一月)に分けてご紹介していきます。

    今月のゲストは、シンクタンク・ソフィアバンクの藤沢久美代表です。
    藤沢さんは、大学を卒業後、国内外の投資運用会社を経て、1996年、日本初の投資信託評価会社を起業、3年後、その会社をスタンダード&プアーズ社に売却し、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年に代表に就任しました。文部科学省参与、金融庁、経済産業省、総務省、国土交通省、内閣府など各省の審議会や委員など、公職を数多く歴任し、法政大学大学院で客員教授も務めています。
    ネットラジオ『藤沢久美の社長Talk』など、長年、日本の中小企業経営者を数多くインタビューしていることも有名です。
    今回は、ソフィアバンクとはどのような組織なのか。藤沢さんの想いに迫ります。

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    第2回 人と人をつなぎ、皆が種蒔きをする手伝いがしたい


    知恵は現場から生まれるもの

    だから知のパラダイム転換が必要だ

    野田 ソフィアバンクの共同代表になられたのですか?
    藤沢 はい。田坂広志教授(多摩大学大学院)と共同で代表をさせていただいています。
    野田 ソフィアバンクについて教えてもらえますか。
    藤沢 その質問が一番答えにくいのですけど(笑)。ソフィアバンクを立ち上げたとき、田坂さんは日本総研にいらっしゃって、「情報化社会にあって、知恵は実際にアクションを起こす現場の人たちが持っている時代になった。知識がトップダウンで象牙の塔からありがたく下りてくる時代ではない。現場が社会を変えていく。そういう時代になるから、知のパラダイム転換をやりましょう」と言って始めたシンクタンクなのです。
     そこで、今までのシンクタンクよりもはるかに幅広く、生活文化などあらゆる分野で活動している個人シンクタンクが集合している“場”としてソフィアバンクを創りました。現在パートナーは13人います。彼らは彼らで、個別で仕事をしていて、それぞれがソフィアバンクの名刺を持って、必要に応じてその名刺を使って活動します。取材依頼はソフィアバンクに来ますので、お互いに紹介したり、また必要に応じて、他のメンバーから知恵をもらったりするといった形です。
    野田 共同組合みたいなものですね?
    藤沢 そうです、そうです。弁護士事務所とか、協同組合とか……13人のパートナーがいる一方で、まさに現場の知恵をアクションに変えていく人たちのコミュニティも作っていこうということで、「社会起業家フォーラム」も作りました。これは、社会起業家の集う広場です。
    野田 私も野村総研にいたとき、Think tankじゃなくて、Sink tankだといわれて、「お前ら沈んでいるぞ」ってね。それで、「そうだ俺たちThinkしているからいけないんだ、Doしなくてはいけない!」というので、Do tankにならなければいけないと言っていたら、DoTankという会社ができてしまったという記憶があります。ソフィアバンクはまさにそれで、アクション先行の知識集約なのですね。
    藤沢 DoTankは、田坂さんが日本総研のときにもうやっちゃったのですよ。コンソーシアムを4個以上お作りになって……なので、ソフィアバンクはもっとDoの先に行かなくてはいけないというので、共感して動くという意味で、Feel tankだと定義しました。つまり、共感の輪を広げていくのがソフィアバンクの使命なのです。だからトップダウンで動くのではなく、皆で協力して、さまざまな共感の種を蒔いていくことによって、勝手にいろいろな人たちが動いていくのがいいわけです。
     社会起業家フォーラムも同じです。こちらからこういう社会起業家になるべきだと言うのではなくて、皆で勝手に社会起業家になっていくのがいい。そこで、社会起業家の定義も我々は、働く人すべてが社会起業家だとしています。

    「社会起業家」とは、社会貢献と社会変革の志と使命感を持ち、様々な社会的立場から、そして、様々な職業的分野において、現在の事業の革新と新たな事業の創造に取り組み、新しい社会の実現をめざす人々です。(ホームページより)

    藤沢 だから、家で主婦をすることだって立派に働くことで、社会を作っていることにほかならないのです。ある意味ではすごく幅広い定義です。どう働くかはそれぞれの自由です。ただ私たちは、自分たちでそこにいろいろな共感の種を蒔いていくだけじゃなくて、いろいろな人同士が蒔いていけるような、そんな仕組みやムード、何よりも文化を創っていこうとしています。
    野田 ソシオ・インキュベータというコンセプトがありますよね。
    藤沢 はい。ビジネス・インキュベータではなく、ソシオ・インキュベータになろうとしています。提供するのは5つのソーシャル・キャピタルです。
     ナレッジ・キャピタル(知識資本)、リレーション・キャピタル(関係資本)、トラスト・キャピタル(信頼資本)、ブランド・キャピタル(評判資本)、そしてカルチャー・キャピタル(文化資本)の5つです。
     知識資本の提供とは、知識を持った人を紹介するというものです。自分の知識も提供できますし、自分の持っていない知識も提供できます。
     ソフィアバンク内だけでなく、外部の知識も提供できるという点が、関係資本です。
     そうやってつながるためには、信頼が必要です。その信頼を提供するのもソフィアバンクです。
    信頼があれば、その人はまたさらなるリレーションを生み出していくことができるはずです。
     次にブランドというのは、テレビに出たり、雑誌などに書いたり、インタビューされたりしているので、そうしたメディアに紹介をすることができるという意味です。
     最後が文化資本ですが、私たち自身もこうして発信をし続ける。社会起業家が大事だと言い続ける。そうやってさまざまなコンセプトを発信し続けることで文化が少しずつ生まれてくると思っています。
     以上の目に見えない5つのキャピタルを提供します。ただし、お金は出せませんが……ということなのです。
    野田 まさに、文化なのですね。私も、以前に作った会社がジェイフィールという名前の会社でした。Don’t think, Just feelというのがキーワードだったのです。JはジャパンのJです。感じる、共感する、共振するということが本当に大切な世の中になってきたと思います。

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    きれいな花ある場所に飛んでいく

    ミツバチであり続けたい

    野田 ところで、そうしたソフィアバンクの中にあって、さまざまにご活躍ですが、藤沢さんが今、一番力を入れていることは何でしょうか。
    藤沢 それがまた難しい質問で、自分でも何がメインかわからないのですよ。ただ、最近自分の中ですごく見えてきているのは、いろんな人をつないでいくということができるようになったということです。これまでも、これからも、そこが私の力の入れどころですね。
    野田 藤沢さんはずっと中小企業の経営者の方を取材されていますよね。

    NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」のキャスターを3年間務め、その間、全国の中小企業やベンチャー企業を取材してきた。同時にさまざまな媒体の取材を通じて、すでに1000社を超える企業を取材。現在も、ネットラジオ「藤沢久美の社長Talk」で経営者インタビューを続け、発信している。

    藤沢 はい、ソフィアバンクを立ち上げて以来、ずっと経営者の方をインタビューし続けています。そのインタビューを通じて、社会の変化や、経営者の方々のさまざまな知恵にふれさせていただいている中で、ネットワークはもちろん、知識と知恵がだんだん蓄積してきたわけです。
     それと同時に、世界経済フォーラムでヤング・グローバル・リーダーに選んでいただいたおかげで、それまで超ドメスティックだった私が、世界各地に出掛けるようになって、世界がどう動いているのかとか、それまで全く知らなかった世界の課題などに触れるようになってきたときに、いろいろなものがクロスオーバーして見えるようになってきました。
     この感覚は誰にとっても大切だと思うのです。まさに自分ならではの世界観を手に入れるというか……それで、今は企業経営者の方を海外にお連れして海外でワークショップを開いたり、ダボス会議に大臣とか議員、あるいは行政の長などをお連れして、海外へ目を開いていただくようにしています。すると、ネットワークもさらに広がってきますので、ますます人と人をつなげることに力を入れています。国内外の人をつないでいく、民間と民間だったり、政治家と民間だったり、学生と政治家だったり、学生と企業だったり、……そういうことをやっていますね。
     最近、自分では自分のことを“ミツバチ”と言っているのですけど、いろいろな場所をブンブン飛んでいる間に受粉している、みたいな感じですね。でも時折、羽アリみたいに地べたに張り付いて働いていることもあるので、羽アリかな、やっぱり、とか言っているのですけど(笑)。
    野田 おもしろいな。これまで、「人をつなぐのが仕事」と聞くと、だいたい口銭ビジネスなんですよね。それで儲けている。
    藤沢 私、儲からないもの。
    野田 そうですよね。藤沢さんはもちろん、それとは違う。ビジネスではなく、人と人をつないでいる。こうあるべきですよね。ミツバチ、いいですね。でも、おっしゃられたように、それでは儲からない。下世話な話で恐縮ですが、そのジレンマはどう解決しているのでしょうか。
    藤沢 はい。確かにミツバチ活動はそんなに儲からないのですけど、私は正しいことをしていれば、ほどほどに生きていけると思っていて、そういう意味では講演の仕事をいただいたり、社外取締役とか顧問、協会の理事などで定期的な収入をいただけているので、それをベースにして、ミツバチ活動は楽しいし、社会的な意義があると思ってやっています。
     自分が稼ごうと思って飛んでいくと、多分、蜜がいっぱい足につきすぎて、落ちてしまうと思うのです。だから、足についた蜜は、こぼれるのもOKというスタイルじゃないとダメですね。
    野田 なるほどね。
    藤沢 だから私は基本的にはきれいなお花が咲いているところしか飛んでいかないようにしているのです。だけど、注意していても時々、毒花かどうかわからないときがあって、ああ、足が熔けるとか思うときもあるのですけど、でも基本的に頑張っている社長さんとか、頑張っている政治家さんとか、頑張っているNGOとか、そういうところにブンブン飛んでいきます。そうしたら元気がもらえるから楽しいですよ。
    野田 社会人材学舎の共同代表の伊藤真が全く同じことを言っています。正しいことは絶対にうまくいく。「それは僕の信念ですから」と。私もそう思います。ただ大儲けにはならない。これもまた真実ですね。
    藤沢 そうですね。ならない。でも私、中小企業回りが長いので、小さな儲けをきちんと積み重ねていけば持続性があるという事例をたくさん見てきました。もともと投信会社にいたましたから、そっち側のスタンスでは、効率的に短期で儲けるということも突き詰めましたけど、それでは長期に続かないということがよくわかったのです。
    野田 なるほど、なるほど。
    藤沢 何か、皆で分け合って小さくほどほどにいただいていくことが、一番の持続可能性だと思うので、そんな感じかな~って思いますね(笑)。
    野田 本当にそうだと思うのですが、そこのところをなかなか信じてもらえない。「やってみればいけるはずなのに」というのがなかなか伝わらないのですよね。
    藤沢 そうですね。私もそういうふうに腹落ちしたのは最近と言えば最近ですね。
    野田 次は少し過去に戻って、お話をお聞きしたいと思います。

    *次週に続く




    NPOは社会を変えるか?

    NPO、NGOなど非営利セクターの維持拡大は、今後の日本、そして世界の安定的成長に欠かせないテーマでしょう。しかし、特に日本において、まだまだNPO法人などは不幸なままです。ボランティア活動も重要ですが、長く民間発の社会貢献活動を安定的に継続させるためには、通称、NPO法人といわれる特活法人、あるいは一般社団法人や財団法人などがもっともっと力を発揮しなければいけません。では、その世界とは一体、どのような世界なのか。このコーナーでは、さまざまなNPO法人、一般社団法人、財団法人の理事長や理事、事務局の方々にご登場いただき、非営利セクターの今を見ていこうと思います。


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    第14回  復旧の、その先を見据えた活動をいち早く始めた

    4回にわたって、一般社団法人MAKOTOについて紹介している。取材に答えていただいたのは、MAKOTOを作った代表理事、竹井智宏氏だ。MAKOTOは、東日本大震災後、荒廃した被災地にいち早く生まれた、起業家を支援するソーシャルインキュベーターと言っていい。支援する対象は、「志」企業であるという。その心は、(社)社会人材学舎の理念にも通じる。いかにしてMAKOTOは生まれたのだろうか。またMAKOTOのベンチャー起業支援の中身はどのようなものか。

     
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