週刊文春デジタル
取材を希望していながら、結果として間に合わなかった方は少なからずいる。昨年十一月に亡くなった鈴木瑞穂も、そのような一人だった。
今から数年前にインタビューを依頼、お受けいただいていたのだが体調が悪化してしまう。そして、回復をお待ちしているところだったのだ。
鈴木の大きな魅力は、その声だ。重厚でいて温かみのある、そのよく通る美声は役者だけでなくナレーターとしても魅力的。特に『白虎隊』などの日本テレビの年末時代劇では、歴史的事実を読み上げているだけなのに、切ない心情が染み入ってきた。
役者としては前回の『無宿人御子神の丈吉 黄昏に閃光が飛んだ』のような憎々しい敵役も少なくなかったが、やはり真骨頂はインテリ系の役柄だ。正義と理想に燃える新聞記者などを演じる時は特にハマっており、そこに現れただけで揺るがない信念を背後に感じさせてくれた。