人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
 どうも、お久しぶりです。みなさん、お変りはありませんでしょうか。金玉工場の工員Aです。
 うちの工場が斜陽の一途をたどっていることは既にお話しさせて頂きましたので御存知かと思いますが、張りを失った外観には、若かりし頃の面影は一切ありません。
 兎角、大筒の形状ばかりに注目は集まりますが、それだけじゃ、弾丸が込められてないピストルと同じ。大人のおもちゃに過ぎません。
 肝心な精子を製造、出荷しているのは、縁の下の力持ち、うちの工場なんですから。
 外壁に刻まれた“Since1970”は、精通した年、すなわち工場の創業年です。
 それから半世紀近くも昼夜問わず、我々は働き詰めでした。 
週刊文春デジタル