人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
 雑誌タレント、通称“ザシタレ”。
 俗に言うタレントと違い、ふだんはライター。裏方であるが、企画ページを頼まれた時は顔出しもする。編集部としてはそんなザシタレを使う方が安くつくし、上下関係もあって、何かと指示も出し易い。
 企画ページのタイトルにそのザシタレの名前をあしらうこともあるが、それは後にルポとして書かせる原稿料以外は払わないことへの代償に過ぎない。
 例えば僕で言えば、『みうらじゅんの流行スポット探訪』てな具合。
 ビデオスルーされた洋画の邦題みたいな扱いではあるが、本人は悪い気がしない。どころか、“オレもとうとう冠仕事がきた”と、親にその雑誌を見せ、喜んで貰うことまで考える。
「来週のどこかで」
 いきなりそんな依頼を受けるのもザシタレたる所以。 
週刊文春デジタル