週刊文春デジタル
世の中はもうすぐ夏休みだね。
子供たちはみんな楽しみにしているだろうけれど、自分のことを振り返ると、ぼくは学校のお休みに家族とどこかに出かけたり、遊んだりした思い出が全くないんだ。何しろ家が貧しかったからさ。
それにぼくは子供の頃、人と話すのが大の苦手でね。授業中に先生に指(さ)されると顔が真っ赤になっていたし、みんなが手を挙げていても、一人黙って下を向いているような少年時代を過ごしていた。
だから、その頃のぼくの夢は「画家になること」。絵を描いて生きていければ、人と喋らなくてもいい、と思っていたの。
なので、夏休みも友達と遊ぶことはほとんどなくて、いつも家の近くの小石川植物園に行き、一人で絵を描いてばかりいたものだったよ。
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