わたしはどう見られてきたのか振り返ってみた。
 蚊がどう見ているかは容易に想像がつく。「こいつの血は、色々検査に引っかかる低品質の血だが、ほかに隙のある人間が見当たらない。今はこれで我慢だ」
 カラスにも大学近くで何度か頭を蹴られた。「危害を加えるようには見えないが、間違った考えをもたないよう、念のため、一応蹴っておこう」
 もしライオンが襲ったら、最初に内臓を一口食べ「このホルモンは脂肪が多すぎる」と思っただろう。
 人間にはどう見えていたのか。 
週刊文春デジタル