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思った以上に意図がアレだったマクドナルドのメニュー撤去
外から見て考えていたよりは意外と考えがなかったのが明らかになりつつあり、「何か意図があるはずだ」と思っておりました自分涙目の展開になってまいりました。
○メニュー撤去にマクドナルド原田社長が反論 | 企業戦略 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/b70700e879767f65a99835b6d36745eb/顧客が求めているのは、いかに早く商品やサービスを提供できるかというスピード感であり、従来のようにレジでメニュー見ながら商品を注文する形では後ろに並ぶ顧客のフラストレーションをためてしまう、というのが会社側の判断だ。
既に明らかになっている「レジ前の混雑緩和」という理由を再説明しているだけで、特に新しい要素なし。
(http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/b70700e879767f65a99835b6d36745eb/ より)
ちまたで言われる「安い単品じゃなくて、セット商品を売るためじゃねえの?」という疑問に「違う」と言ってはいるものの、本当の意図とされる部分の主張が今もって弱いし、達成された感がないためになあ。
「後ろに並ぶ顧客のフラストレーション」よりも、レジでメニューを見れないフラストレーションの方が大きいから、いろいろと話題になっているわけで。「撤去というのは誤解。常設していないだけで、レジにはB5版のメニューをちゃんと用意してある」(広報部)
ここにもいろいろ勘違いの種があって。「あればいいんでしょ、あれば」ではなくて、「常設しとけよ」であり、「今まで通りにしとけよ」というのが肝。何せ今までずっとあったのです。レジに。それをわざわざ外した。なんで? その意図は? で、それが混雑の緩和? 本当は他の狙いがあるんじゃないの? ま、そういうこと。
(http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/b70700e879767f65a99835b6d36745eb/ より)「創業以来41年間続けてきた慣習を数カ月で納得できるか」
といみじくも原田社長も述べているように、41年間続いていたものをとりやめる準備というか、下支えというか、そのロジックがあまりにも弱かったというのが明らかになりすぎていてねえ。
(http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/b70700e879767f65a99835b6d36745eb/ より)「今日現在コールセンターへのクレームはゼロ」(原田社長)
この部分もなかなかにつらいところ。これは「クレームがなくなった」というポジティブ要因ではなく、「クレームをする人すらいなくなった」というネガティブ要因に思える。
(http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/b70700e879767f65a99835b6d36745eb/ より)
実はサービス業にとって、クレームをする、意見をする客というのは優良顧客であることが多くて、継続的にそのお店を利用することを前提にしている。逆に言うと、継続的に使う見込みがないならば、クレームすらつけない。無言で去る。顧客ではなくなる。
41年間続いていたレジにおいてのメニューの表示。それをやめる。ただそれだけのことではあるんだけど、そのバックアップ体制とか広報の不備、そして撤回するタイミングを失ったことによって、41年間の中で築いてきた顧客との関係を失う。なかなかハイリスク・ローリターンな話になってきたなあと。そう思うのでありました。
ここで「失敗しました」「メニューは元に戻します」って言えれば間に合うのになあ。 -
混雑を前提にしているマクドナルドの一手
10月からマクドナルドのレジテーブル上からメニューが消えたようで。
○「マックのレジからメニュー表が消えた!?」とネット騒然 お店の人に聞いてみた - ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1210/01/news138.html
○本日からなぜメニュー表を撤廃?マクドナルドに理由を聞いてみた。|| ^^ |秒刊SUNDAY
http://www.yukawanet.com/archives/4304533.html
○マクドナルドのカウンターからメニュー表がなくなった! その理由を問い合わせてみた | ロケットニュース24
http://rocketnews24.com/2012/10/02/253360/
あちこちで話題になっております。
私もいくつかの店舗に行って確認したところ、確かにこれまであったレジカウンター上のメニューはなくなっており、カウンター上はスッキリ。何もない状態。メニューは撤去されておりました。
メニューの撤去の狙いとしては、レジでの待ち時間の短縮らしい。・レジカウンターのメニュー表撤去について(以下、要約)
「これまではレジカウンターに立った際に注文をお決めになる方が多く、込み合う時間になると、スムーズにご注文頂くことができませんでし た。そこでレジカウンター上のメニュー表を撤去し、カウンター上部もしくは壁に設置してあるメニュー表を事前にご覧頂くことで、スムーズにご注文頂けるよ うになりました。すでに一部店舗で試験導入し、行列時間の短縮の実績を得ています」
(http://rocketnews24.com/2012/10/02/253360/ より)
実際に私が店舗に行った際、従業員から「お決まりになりましたらレジへどうぞ」と声をかけられたので、もしかするとマニュアルの変更も伴っているのかもしれない。このあたりは内部情報に関わる部分なので、推測の域を出ないけども、従来の「とりあえずレジに誘導する」という流れから、「注文が決まった人をレジに誘導する」という変化があるよう。同社の原田泳幸社長は以前から「レジが30秒短縮されれば、売り上げが5%伸びる」と発言している。今回の変更もレジで選択に悩む人を減らすことで、待ち時間の短縮を狙っているようだ。
飲食の世界では、お客様を待たせている時間のロスは機会損失であるという考え方があるので、実質的な回転数を上げる施策と考えることができます。
(http://www.j-cast.com/2012/10/02148658.html?p=2 より)
ただ、これはあくまで「レジで行列ができている」という前提があっての話。行列ができている。待たせている人がいる。待たせている時間がロスである。行列ができているのを見て、回避するお客様もいるかもしれない。そうあんると、待っているお客様と、待つのが嫌で来店しなかったお客様という二重のロスがある。
でも、行列ができていなければロスでもなんでもないし、改善でもなんでもないわけです。最初から待たないのであれば、待たせない様な改善など改善ではない。
不採算店舗の閉店などが一巡し、ある程度採算がとれる店舗の割合が高まり、「レジで行列ができている」という前提条件がクリアされたからこそ、打てる手段。待たせるお客様がいるというなんとも贅沢な前提であり、リストラから攻めに転じる一手であるといえます。
とはいえ、今までのやり方を変えるということは、直接的なサービスの低下は免れ得ないわけで、そのあたりを今後どう判断していくか見ものであります。店舗によっては、あっさりメニュー撤去を撤回するんじゃないかなあと。店舗ごとにフレキシブルな対応をする可能性もあり。これまでもポテトを「おいも」と呼ぶなどの対応をしていた巣鴨店の動向などが鍵になるかもしれませんね。
今回はこんなところで。 -
飲食の歴史上重要な発明ランキング
こういうランキングものには、順位付けした国のお国柄というか、価値観が反映されるものでありまして、そういうのを前提にしないとおもしろくないわけです。
イギリスの王立協会が「飲食の歴史上重要な発明ランキング」なるものを発表してます。
○Royal Society names refrigeration, pasteurisation and canning as greatest three inventions in the history of food and drink | Royal Society
http://royalsociety.org/news/2012/top-20-food-innovations/
で、これがトップ20。
「飲食の歴史上」といいながら、中身はほとんど「食物保存の歴史上」重要な発明ばかり。- Refrigeration(冷凍保存)
- Pasteurisation / sterilisation(低温殺菌 / 減菌)
- Canning(缶詰)
- The oven(オーブンレンジ)
- Irrigation(洗浄)
- Threshing machine /combine harvester(脱穀機 / コンバイン)
- Baking(パン焼き)
- Selective breeding / strains(選抜交配 / 品種改良)
- Grinding / milling(脱穀 / 製粉)
- The plough(耕作)
- Fermentation(発酵)
- The fishing net(漁網)
- Crop rotation(輪作)
- The pot(湯沸かしポット)
- The knife(包丁)
- Eating utensils(食器)
- The cork(コルク栓)
- The barrel(保存樽)
- The microwave oven(電子レンジ)
- Frying(揚げ物)
(http://royalsociety.org/news/2012/top-20-food-innovations/ より)
これを見ると、イギリスにおいて食文化というのは、「生きる」ためのもので、娯楽じゃないんだなあというのがよくわかる。調理方法のような味を左右する技術よりも、食物を保存する方法が重要なんだなあと。安全保障の一環なんだろうね。
これが恐らくフランスやイタリアに行くと、よりもっと調理技術寄りのものになったり、細かな食材単位の話になっていくだろうし、ドイツなんかだとより根源的な話になり、火の扱いでこと細かにランクインしてきそう。
○「飲食史上の重要発明リスト」に批判殺到の理由 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120921-OYT1T01133.htmところが、結果を紹介した有力紙ガーディアンのブログには読者の書き込みが殺到。「人類が火を使うようになったことを忘れている」「植物の栽培、動物の飼育こそが重要」「酒はどこへ行ったのか」などの声が相次いだ。
イギリス国内でも批判があるようですがね。
(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120921-OYT1T01133.htm より)
翻って、日本でこういうランキングをとるとしたらどうでしょう。
個人的な観点から言うと、日本の場合、調理技法とか調味料などの分野が多くランクインしてくるのかなと。現代まで影響を与える発明や発見が上がってくるのではないかと思います。
例えば、フグ毒の発見と、それを除去して食べる技法の確立とか。あるいは魚醤の発見と、それに続いて醤油の発明。大豆から豆乳を搾り、そこから豆腐をつくる。日本酒やお酢における醸造技術や、塩田での塩生産などなど。
何が重要かを問うことで、重要であるための要因が見えてくる。ランキングものの有益な副産物と思うわけであります。
今回はこんなところで。
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