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  • 【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説⑤『Dear My Friends』第7話

    2018-10-15 12:02  
     ……ところが、である。
     そんなエリとの約束によって、ほんの僅かとはいえようやく前向きになりつつあった私の気分も、バイトを終えて帰宅したのと同時に送られてきた一通のメールのせいで、一気にぶち壊しにされてしまうのであった。
    『明日、演劇部の緊急ミーティングを行います。夕方五時に、必ずプレハブへと集合する事。欠席者は、演劇部員資格を剥奪いたします。    ――泉州大学演劇部 部長代理 島谷康夫』
     ……全くもって不愉快な文章だった。島谷が我々を招集する権限や、退部を決定する権限を持っていた事も、それ以前に、そもそも彼が演劇部の部長代理だったという事実も、この時始めて知った。というよりは、そんな事を認めた覚えがなかった。
     にも関わらず、さも当然かのようにこんなメールを送ってくる島谷の厚顔無恥さ、横暴ぶりに、改めて激しい憤りを覚える私であった。
     とはいえ、このような状況になるかもしれないとい
  • 【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説④『クリエイショナー』第7話

    2018-10-15 11:59  
     そして迎えた、その日の昼休み。
     いつもならば、昼飯を買いに正門近くの購買部まで出向かなければいけないところだけど、この日の俺にはその必要がなかった。……後ろの席に座る同居人が、わざわざ早朝に起きて二人分の弁当を作ってくれたからである。
     色々な意味でドキドキものな代物だけど、この二日間、家事に関する参考書をみっちり熟読していた少女の作品なのだから、たぶん中身は心配ないだろう。いや、きっと大丈夫なはずだ。
     ……とにかくそんな訳で、入学してからずっと校舎の裏で一人寂しく昼食を食べていた俺が、美少女と机を囲みながら彼女の作ってきてくれた弁当を食べるといった、信じられないほどの幸福を享受できる時間――のはずだったんだけど、残念ながらそうはいかなくなってしまった。
     いきなり何かに気がついたかのように席を立ち上がった玲音が、二人分の弁当が入った通学鞄を手に、そのまま廊下側最後列の席まで駆け寄っ
  • 【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説③『奥さまは魔王』第7話

    2018-10-15 11:55  
     音を立てないように恐る恐るドアを開けてみると、いきなりテンションの下がる物体を発見してしまった。
     それは、見慣れない男物の靴であった。しかも、安月給の地方公務員にはおいそれと手を出すことができなさそうな、高級革靴である。
     隠しもせず堂々と玄関に置かれてあるとは、俺もずいぶんなめられたもんだな、おい。きっと、夫がこんな時間に帰ってくるだなんて、想像もしていないんだろうね。
     ……ああ、なるほど。だから麻淋は、俺の帰宅時刻を執拗に確かめてきたって訳か。要するに、自分達が密会できるタイムリミットを知りたかったんだな。なんとも涙ぐましい努力じゃねぇか。
     玄関をくぐり、短い廊下を抜けて、二十畳くらいのリビングへと侵入する俺。ちなみに説明しておくと、ここはダイニングやキッチンも兼ねた部屋となっている。いわゆるLDKってやつだ。
     しかし、そこに麻淋の姿はなかった。
     続けて俺は、玄関から見てリ
  • 【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説②『ピース』第7話

    2018-10-15 11:48  
     ……俺は一人、『レインボースターロード』に立っていた。
     ここに来るのは、ずいぶん久しぶりのことであった。いや、実際の時間軸からみて、“久しぶり”という表現が適切なのかどうかはわからない。だけど、少なくとも俺の感覚からすると、この道を前回訪れたのは遠い過去であった。
     現在時刻は、夜の八時四十五分。天候は、むかついてしまうくらい快晴。当然、額から流れる汗が目に入ってしまうほど暑い。
     ちなみに、ここは車や人々の往来が極端に少ない道でもあった。もちろん、軽自動車同士でも対向できないほどの幅の狭さや、ほとんど舗装されていない路面状態にその原因を見出すこともできるだろう。しかし実際のところは、単純にここを利用する必要がある人間自体が極端に少ないだけだと思われる。
     なんせ、周りを見渡したところで、広い田んぼと育ちまくった木々しか確認できないような土地なのだ。泉集駅から徒歩で十五分程度、何も知ら
  • 【非会員でも閲覧可】為五郎オリジナル小説①『リヴァルディア』第7話

    2018-10-15 11:44  
     今から約半年前。
     正確に言えば、二月十一日。
     ……鈴音は死んだ。
     僕が住むこのアパートから歩いて十分程度の場所に、人知れずひっそりと建っている神社がある。いや、他の人は知っているのかもしれないが、少なくとも僕は足を踏み入れたことがない。とにかく、その神社の裏手にある草むらのような土地で、彼女は死んでいた。
     もちろん、状況からもわかるように、それは自然死ではなかった。死体があった場所も去ることながら、胸から大量の血を流し、なおかつ首にアザを作るような最後を迎える病気なんて、どれだけ分厚い医学書を開いたところで見つからないことは請け合いだろう。
     すなわち、鈴音は何者かによって殺された……みたいなのだ。
     何故はっきり断言できないかといえば、
    「……それがさ、死んだ当日のことはさっぱり覚えてないのよねぇ」
     本人がこの有様だからである。「前日までの記憶はあるんだけどさ」
     殺人事件に