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前回、僕は芸術の本質について自分なりの解釈を加えながら説明し、それを体現しているYOSHIKIについて書いた。
今回も続けて、芸術の本質とそれを体現するYOSHIKIの姿について、さらに掘り下げてみたいと思う。
まず、僕が時折書く「YOSHIKIは純粋芸術家とロックスターを両立させている」と言う表現について、少し説明をしておきたい。
というのも、純粋芸術家とロックスターというYOSHIKIの二つの顔の違いは、クラシカルスタイルの美しいピアノコンサートを繰り広げるYOSHIKIと、ロックバンドXのドラムスとして激しいリズムを叩き出すYOSHIKI・・・といった違いではないからだ。
そのような音楽を表現する際のスタイルの違いではなくて、アーティストとしての存在のしかたそのもの・・・の違いなのだ。
もしもあるアーティストが、純粋芸術家として作品を生み出すことができる状況にあったとしたら、わざわざ人気者としての苦労が絶えないロックスターになる必要はないだろう。
また、アーティストが、ロックスターとして充分人気があったとしたら、わざわざ多くの批判を覚悟しながら純粋芸術家のように命を削りながら作品を生み出す必要はないだろう。
つまりそれら二つは本来なら両立する必要のないものであり、両立しようとしてもあらゆることに時間がかかり過ぎるために、普通なら諦めてしまうような、相反する存在のしかたなのだ。
けれど、そのどちらもが存在意義であるYOSHIKIの場合は、どんな負担があろうと、二つを両立することになるわけだ。
そしてそのために、YOSHIKIは常に時間に追われ、世界中を飛び回らなければならないのだ。
さて、純粋芸術家とロックスターの違いが、このように存在のしかたの違いであるため、YOSHIKIが生み出す作品は基本的にみな、芸術作品だと言える。
ピアノとオーケストラが奏でるようなクラシカルスタイルのバラード作品だけではなく、ロックバンドXの音楽もまた、ポップスでありながら純粋な芸術作品であるわけだ。
それどころか、むしろ『バンドスタイルの作品の方が芸術的な傾向はより強い』のだ。
この事実は、YOSHIKIというアーティストと芸術の関係を理解する上で、非常に重要なポイントだ。
前回に説明した芸術の本質について。
そして僕がプロデュースを手がけていた当時、YOSHIKIを見つめていた視点について。
この二つのどちらにおいても『バンドスタイルの作品の方が芸術的な傾向がより強い』という事実は非常に重要なポイントなのだ。
前回書いた通り、一般的な芸術という言葉には、作品が1000年前のものだったり、作者が300年前に没していたりして、教科書に載るような作品のイメージが投影されている。
そういうイメージでは、まさにクラシック音楽は芸術らしいわけで、「クラシカル・スタイルで表現されるYOSHIKIの音楽=芸術」と理解されやすい。
しかしながら、芸術の本質は一般的なイメージの「芸術っぽい」程度のものではなく、さらに奥深く、そして困難の伴う、とても厳しいものなのだ。
そのあたりを説明してみたいと思う。
前回、「商業的な都合を優先させるような創作活動をしている人たち」という表現をしたのだけれど、実はクリエイターの中には、むしろ「商業的な都合がなければ作品を作ることをしない」人もたくさん存在する。
それどころか、「商業的な都合がなければ作品を作ることができない」人もいる。
そのようなクリエイターたちはもちろん芸術家ではないのだけれど、彼らがそうなってしまう理由には、芸術の厳しさが横たわっている。
その厳しさとは何か。
それは『何もないところから、自らの心が生み出したいと望むまま、人生にとって必然性のある作品を生み出すことは容易ではない』というものだ。
そして『何もないところから、自らの心が生み出したいと望むまま、人生にとって必然性のある作品を生み出すこと』こそ、芸術作品を生み出す唯一の行為なのだ。
そう、シンプルにまとめれば、『芸術作品を生み出すのは容易ではない』のだ。
だから多くのクリエイターは芸術作品ではなく、「商業的な都合によって依頼された作品」だけを作り続けるのだ。
その方がずっと楽だからなのだ。
では、なぜ芸術作品を生み出すのが容易ではないのか。
それは、『何もないところから、自らの心が生み出したいと望むまま、人生にとって必然性のある作品を生み出す』ためには、自らの人生をそのまま作品にしなければならないからだ。
自らの人生をそのまま作品にするためには、そのような人生を送り続けなければならない。
この、生きかたそのものが、何よりも難しいのだ。
結局、芸術家であるのか芸術家でないのかは、その人の生きかたにかかっているわけだ。
さて、ここで芸術を体現するYOSHIKIについて見つめてみよう。
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