2016年2月7日に配信されたブロマガ記事を復刻版としてお届けします
オリジナルは https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar963712 になります


 3. 「VISUAL SHOCK Vol.4破滅に向かって」のライナーノーツに込めた想い

 《ライナーノーツ原文》
  
闘いから愛へ

 出会った頃のXは、未知数のかたまりだった。 僕が彼らをよく知らなかったから、ではなくて 彼ら自身が、未来に何があるのか知らなかったからだ。 知らない未来に期待を抱くことなどなく、 ひたすら悔いのない今を生きること、それだけにまるで命をかけている。 そんな5人だった。そんなトシ、ヒデ、パタ、タイジ、ヨシキだった。 僕には、Xの毎日が闘いに見えた。
闘いの相手は何だったのだろう? 「ジャンルの壁」「モラルの壁」「常識の壁」だろうか。 それもあったかも知れない。でも、一番の相手はやはり 自分達自身、つまりXそのものだったのではないだろうか。 過去にも書いたとおり、僕の目には、未来のとてつもなく大きな、 そして輝かしいXが、出会った頃から見えていた。 「大丈夫だよ。まだまだ、ずっと、大きく、美しく、素晴らしく、なるよ」 信じ続けていた。そして、5人にいつも、伝えていたように思う。 それは、彼らの自信には、なったかも知れない。 けれども、見えない未来は、想像でしかない。 彼らにとって大切なのは、あくまで、現実となったきのうのこと。 現実にしていく明日のこと。現実である、今。 だから―Xは闘っていた。おそらくX自身と。 その闘いを僕はずっと見てきた。
1992年1月7日 僕は、気づいた•••。 闘いは、愛に変わっていた。
トシ、ヒデ、パタ、タイジ、ヨシキの5人が、5万人の大合唱に包まれている。 Xは闘い続けてきたけれど、それを見守ってきた人々の答えは、愛だった。 Xも愛しているのだろう、5万人を。口にしたことは、ほとんどなかったけれど。 4年前、500人と1つになっていたX。
ずっと同じX。闘い続けて。 同じ気持ちのファン達。受けとったのは愛だと感じ、愛で返し続けて。 何という、4年間だろう。 僕はバンドを探していた。見た事もないようなバンドと出会いたかった。 それがXだった。命がけで走り続けた者だけが持つ輝きが、ここにある。永遠に。
 

 《僕の想い》
 
 1992年1月7日 僕は、気づいた•••。 闘いは、愛に変わっていた。
 
 この文章を書いたのは、僕がライナーノーツに自分の想いを忍ばせる、ということを始めてから3年目だった。
 
 僕はこの文章に、今までとは比較にならない位に強い想いを託した。

 もはや忍ばせるのではなく、僕なりの想いをそのまま文にした。
 
 何といっても、命懸けで闘ってきた日々がファンの愛によって終わりを告げた、と書いているのだ。

 見方によっては、とんでもない文章かも知れない。

 でも僕は、東京ドーム3Daysを観て確信したのだった。

 『もう闘いは終わった』と・・・。

 
 それに加えてこの頃、海外進出を目指して活動拠点をロサンゼルスへ移すメンバーと別れ、日本のソニーミュージックに残ることを僕は考えていたのだ。
 
 4年間、メンバーと共闘を続けた僕にとって、その決断もまた『闘いの終わり』を意味していた。
 
 だから僕は、東京ドーム3Daysで『闘いの終わり』を確認し、安心して別れを決意したのだった。

 あの会場で、闘い続けたメンバーに『愛』を返してきてくれたファンを観ながら、僕は号泣した。

 やっぱり、辛くて苦しかったけれど自分たちを信じて続けた、あの闘いの日々は間違っていなかったんだ・・・。

 そしてとうとう『Xという物語』は、こんなに美しく、素晴らしいものになったんだ・・・。

 
 この文章に込めた想い。
 
 それは、4年前には想像すらできなかった奇跡、『運命共同体の愛』への感謝

 そして、その愛に支えられ、新たな闘いに挑んでいくXのメンバーに向けた、僕からのエールだったのだ。
 
 
 
 
4. 「ART OF LIFE」のライナーノーツに込めた想い

 《ライナーノーツ原文》 
 
 
3年前の夏を思い出す。
冷房のきいたスタジオの一室で、YOSHIKIと僕とシーケンサーとシンセサイザー。  
一週間以上続いた、曲のイメージ・スケッチ作りのある日、YOSHIKIはひとこと「これで終わり」とつぶやいた。不意をつかれた感じだった。
トータル30分弱。終わりはいつ訪れるのだろう、と思っていたところに、ピアノソロ後の、後半部分が、意外に短く、終わった。  
僕達は、静まりかえったスタジオの照明を暗くして、でき上がったばかりのイメージ・スケッチを、大音量で聴いた。  
30分は、あっという間だった。2人とも、しばらく声が出ない、という感じだった。