前回書いた、TOSHIの大きな変化。
その鹿鳴館でのライブは1988年6月、ちょうどインディーズアルバム「Vanishing Vision」を携えた全国ツアー「VANISHING TOUR VOL.2」の始まりだった。
だからTOSHIは、その変化から生まれる新たなパフォーマンスのスタイルを、試行錯誤しながら実践し、身につけていくことができた。
ライブが終わるたびに、僕はその日のパフォーマンスの「大きさ」について、TOSHIと、そしてメンバーと確認した。
その「大きさ」は日を追うごとに形になっていった。
ツアー中5本目のライブにあたる大阪御堂筋会館でのライブで、僕はその成長を深く実感した。
TOSHIのパフォーマンスはその日、大きく観客を包んでいた。
「すべての始まり」からその日の様子を引用してみよう。
大阪御堂会館は、とてもいいライブだった。
目黒鹿鳴館に続き、TOSHIが更に、どんどん大きくなっていく。
そしてそれにつられるように、他のメンバーも、どんどん「大きく」なっていくのがわかった。
御堂会館は、ちょうど武道館を小振りにした感じのホールだったから、未来のエックスをイメージしやすかった。
「大きいエックス」が嬉しくて、僕は客席の一番後ろ、つまり 一番上からステージを見下ろしながら、ずっと両手を挙げていた。
ちょうどエックスという文字のように。
そして、ライブが終わると楽屋に飛んでいった。
「お疲れさまです!」メンバーが一斉に声をかけてくれる。
「お疲れさま! ねえ、大きい!今日のエックス、大きいよ!いいねー!」
YOSHIKIが嬉しそうに、「そうですか」と応える。
TAIJIが、「へえ、大きいんだー」とメイクを直し始めながら言う。
そこへTOSHIが笑いながら来ると、「だって、見えるんだもん、津田さん」両手を挙げながら、「こんなんしてたでしょ」
「あれ?見えたの?」
「見えるよー、あんたー」
この頃、僕はある3つのポイントをXの進化への起爆剤として意識し、それをプロデュースする上で生かすよう、心がけていた。
そのポイントは、メンバー同士の深い絆とバンドの強い一体感、5人が持っている劣等感と偏見・誤解に対する悔しさ、そして必ず日本一になってやるという強いエネルギーとその実現への深い情熱、この3つだった。