【 ART OF LIFE ① 】
 
 
 常に名曲だけを生み続けてきたYOSHIKIだが、「ART OF LIFE」という曲は、とりわけその芸術性が高い。
 
 30分という長さは「曲を生む」YOSHIKIにとってそれなりの必然性があったわけだ。
 
 その必然性は、実際に音を聴いてみれば納得できる。
 
 30分という時間を感じさせない、圧倒的なエネルギーと音が導く感情の動き。
 
 YOSHIKIの心がすべて、そのまま音楽になっているため、聴いている人の心を凄い勢いで揺り動かしながら、あっという間にエンディングに行き着いてしまう。
 
 この「ART OF LIFEをは、音楽的にじっくり分析をすると、その「必然性」と「音が導く感情の動き」が、より明らかになる。
 
 今回からしばらくの間、YOSHIKIがロサンゼルスでトップクラスのスタジオを所有する大きなきっかけとなった名曲「ART OF LIFE」を、音楽的にじっくり見ていきたいと思う。
 
 
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  1. 曲全体の構造
 
 「ART OF LIFE」の全体の構造を見てみよう。
 
 まず大きく分けると、前半部分と、真ん中に登場するピアノソロ、そしてそのあとに登場する後半部分の3つになっている。
 
 一般的なポップスと考えると30分は特別に長いが、一方で交響曲と考えると第4楽章がなく、長さも決して長くはない。
 
 つまりYOSHIKIは決して枠や制約、形式などを意識したわけでなく、純粋に心が生み出そうとするまま音を紡いだ結果、30分という長さの作品になったのだろう。
 
 実際、この3つのセクションの長さを見てみると、それぞれ約15分、約10分、約5分、となっている。

 その長さに形式上、特別な根拠は見あたらない。

 
 さて、一般的なポップス作品はたいてい、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、Cメロ(展開)、エンディングなどで構成されている。
 
 このとらえ方で「ART OF LIFE」の歌の部分を見てみると、Aメロ、Bメロ、サビ、の3つが明確にあることが分る。
 
 一方、通常にはあまり見られないのがインストルメンタル、つまり歌のない部分で、ギターやストリングスがメロディーを受け持つこの部分は、通常の作品の間奏やギターソロとは違い、ロックスタイルの交響曲ともいえるような、ドラマティックな音楽性が際立つ、オリジナリティに溢れたところだ。
 
 また、ピアノソロセクションも、構成や展開のしかたが極めて個性的で、これも通常の作品のフォーマットから逸脱している、オリジナリティに満ちたとても自由な世界だ。
 
 こうして見てみると、通常の作品で見受けられるAメロ、Bメロ、サビという歌の要素を基本にしながら、それらをYOSHIKIにとって必然性のあるインストルメンタルの部分が紡いでいき、感情の流れに伴ってどんどん展開していく、というのが「ART OF LIFE」の基本的な構造となっていることがわかる。

 「ART OF LIFE」を生んでいた当時のYOSHIKIは、他にもSilent JealousyやSay Anythingといった名曲を生んでいる。僕の知る範囲では同じ頃、DAHLIAの原型なども生んでいて、この時期、創作意欲と才能が非常に高まっていたのだろうと思われる。

 ということは、たとえ「ART OF LIFE」の
Aメロ、Bメロ、サビという通常の作品と同じ要素がどんなに優れていても、YOSHIKIにとってはその要素をそのまま通常の作品にするのは意味がなく、あくまで30分に及ぶ、YOSHIKIの人生をそのまま表現する大切な曲の一要素としてのみ、これらのAメロ、Bメロ、サビ、が存在したのだ、ということが理解できる。

 「ART OF LIFE」という作品は、それら歌のパートと個性溢れるインストルメンタルのパートがすべて絡み合い、ひとつの世界を形作って、初めて成立しているわけだ。
 
 
 それでは「ART OF LIFE」を音楽的に見るにあたり、そういった曲の要素をきちんと確認しながら進めるために、実際に僕がレコーディングで使用していたコード譜を使用していこうと思う。
 
 こちらがその譜面だ。