• このエントリーをはてなブックマークに追加
木村草太氏:美濃加茂の逆転有罪判決と米大統領選再集計問題を掘り下げる
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

木村草太氏:美濃加茂の逆転有罪判決と米大統領選再集計問題を掘り下げる

2016-12-07 23:30

    マル激!メールマガジン 2016年12月7日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
    ──────────────────────────────────────
    マル激トーク・オン・ディマンド 第817回(2016年12月3日)
    美濃加茂の逆転有罪判決と米大統領選再集計問題を掘り下げる
    ゲスト:木村草太氏(首都大学東京都市教養学部教授)
    ──────────────────────────────────────
     今週はその週のニュースを深掘りするニュースマル激。
     今週のテーマは、(1)美濃加茂市長収賄事件の逆転有罪判決の疑問点とその影響、(2)保守派ほど天皇陛下の生前退位に反対する理由、(3)米大統領選挙・ウィスコンシン州の再集計が露わにする電子投票の問題点の3つのニュースを、憲法学者の木村草太氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が掘り下げた。
     美濃加茂市長収賄事件は、大方の予想に反して藤井浩人市長に逆転有罪の判決が下った。判決自体も多くの疑問が残るものだったが、より深刻なのがその影響だ。
     この裁判では、藤井氏が会社社長から現金を受け取っていたことを裏付ける物証は何も出ていないため、カネを渡したという会社社長の言い分と、もらっていないという藤井氏側の言い分のどちらがより信用できるかが、唯一の争点となった。
     これが有罪になるようでは、政治家は業者や市民からの提案を受け、その実現のために積極的に動くことが大変なリスクとなってしまう。
     また、今回の事件は贈賄側の会社社長と検察の間に、事実上の司法取引が行われていた疑いが持たれていた。4億円近い金融詐欺で逮捕された会社社長が実際には2000万円分しか起訴されず、その取り調べの中で突如として藤井氏への贈賄の話が出てきたことから、会社社長が検察から「藤井への贈賄を認めれば、金融詐欺の方は軽くしてやる」などと取引を持ち掛けられていた可能性を、弁護側は強く追及していた。
     検察にとってはケチな金融詐欺よりも現職の市長を巻き込んだ汚職事件の方が、事件としての価値は遥かに高い。検察幹部や担当検事にとって、より大きな手柄になるということだ。一方、詐欺事件で逮捕されている会社社長も、刑が減刑されるのであれば、その取引に乗らない手はない。当事者の証言のみで、そのような裏取引までが疑われた事件で、現職市長に逆転有罪判決が下ったことの影響は計り知れない。
     次に、天皇陛下が生前退位の意向を示されたことを受けて、政府がその対応を検討している問題では、有識者会議が16人の専門家から相次いでヒアリングを行い、その結果が今週出揃った。様々な意見が出された中で、今回のマル激では、なぜ日頃から天皇への尊崇の念を強く表明している保守派の論客ほど、陛下ご自身の意向を無視するかのような意見を表明しているのかに注目した。
     実際、保守派の論客として知られる渡部昇一上智大学名誉教授、大原康男国学院大学名誉教授、八木秀次麗澤大学教授、ジャーナリストの櫻井よし子氏らはいずれも陛下の生前退位に反対するのみならず、陛下ご自身の意思での退位を認めるべきではないとの考えを示すなど、陛下の思いや人権を無視したかに見える発言を繰り返しているのはなぜか。
     最後は米大統領選挙の再集計問題。現在ウィスコンシン州で再集計が行われており、ミシガン州とペンシルベニア州でも再集計の請求が出されている。この3州は11月8日の本選ではいずれも僅差でトランプが勝利しており、その選挙人数を合計すると36となる。もし再集計の結果、3州全てでクリントンが逆転すれば、大統領選挙の結果がひっくり返る計算となる。
     今回の再集計は大統領候補の一人だった緑の党のジル・スタイン氏からの請求を受けたものだが、スタイン氏は再集計を請求した理由として、ミシガン大学のアレックス・ハルダーマン教授らのグループが、今回の選挙で電子投票に使われたコンピューターがハッキングなどによって操作されていた可能性があることを指摘したことを受けたものであることを明らかにしている。
     ウィスコンシン州の再集計の結果が、当初の投票結果と大きく異なるものになった場合、ハッキングの疑いが濃厚となり、他の州でも再集計を求める動きが出る可能性がある。その意味で、ウィスコンシン州の再集計は重大な影響を与える可能性がある。

    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    今週の論点
    ・美濃加茂市長収賄事件の逆転有罪判決の疑問点とその影響
    ・保守派ほど天皇陛下の生前退位に反対する理由とは
    ・米大統領選挙の再集計が露わにする、電子投票の問題点
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    ■美濃加茂市長収賄事件の逆転有罪判決の疑問点とその影響

    神保: 817回目のマル激です。以前、ゲストを招かず宮台さんと二人でニュースを扱うようなマル激を何度かやったことがあり、「たまにはそういうものもやりたいよね」と話していました。今回はそうしてテーマを考えているうちに、ぜひもう一人仲間を呼ぼうということで――最初に紹介してしまいますが、木村草太さんをお呼びしました。ただ、ゲストというよりも、宮台さんと木村さんが自分の立ち位置から、ニュースを切っていただくことを期待しています。
     今回扱いたいニュースは3つあります。ひとつは、僕がずっと取材をしてきた美濃加茂市長の「贈収賄事件」に大きな進展があり、なんと逆転有罪判決が出ました。控訴審なのでまだ有罪確定ではありませんが、実は日本中の政治家の政治活動に大変な影響があり、司法取引の導入をやめたほうがいいんじゃないか、と思うような事例でもあります。
     もうひとつは、木村さんにゲストに来ていただいたときにも議論したのですが、天皇陛下の生前退位、あるいは譲位と言われるものについて、有識者からのヒアリングが揃いました。中でも、退位に反対する意見が一部から出ており、その論拠が非常に興味深かったので、その点を中心に議論したい。
     それからもうひとつは、米大統領選挙です。ウィスコンシン州で投票の再集計が行われていることは報じられているのだけれど、その背景になにがあるかということが十分に認識されていないと思います。電子投票、コンピューターを使った選挙をやる場合に、日本にも関係してくることでもあり、場合によっては選挙の結果がひっくり返る可能性もまだあるという意味で、この問題も扱いたいと思います。

     
    この記事は有料です。記事を購読すると、続きをお読みいただけます。
    ニコニコポイントで購入

    続きを読みたい方は、ニコニコポイントで記事を購入できます。

    入会して購読

    この記事は過去記事の為、今入会しても読めません。ニコニコポイントでご購入下さい。

    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。