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井上久男氏:ゴーン後の世界自動車産業の勢力図を占う
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井上久男氏:ゴーン後の世界自動車産業の勢力図を占う

2019-02-20 20:00

    マル激!メールマガジン 2019年2月13日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第932回(2019年2月16日)
    ゴーン後の世界自動車産業の勢力図を占う
    ゲスト:井上久男氏(経済ジャーナリスト)
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     日産のゴーン元会長は11月の逮捕以来、東京拘置所に勾留されたままだが、市場はいつまでも日本の人質司法などと付き合っていられないと判断したようだ。
     ゴーン自身は依然として容疑の不当性を訴え、弁護人を「無罪請負人」の異名を取る弘中惇一郎弁護士に代えるなど、全面対決の姿勢を崩していないようだが、いくら推定無罪と言っても、競争の厳しい自動車市場で、いつまでもこの事件の帰趨を待っていられなかったのはやむを得ないことかもしれない。
     1999年に破綻寸前の状態にあった日産を救済した経緯から、現在ルノーが日産の株式の43%を持っており支配的な地位にある。しかし、自動車メーカーとしての力は、ゴーン氏の元でV字回復を果たした日産とルノーの力関係は完全に逆転している。また、3社の提携関係も、あくまでカルロス・ゴーンというカリスマ経営者が3社のトップを兼務しているために成り立っている緩やかな連合に過ぎない。
     今回の日産と特捜部の司法取引によるゴーン追い落とし劇の背後では、フランスのマクロン大統領とゴーン氏の間で、2022年までルノーのCEOの地位に留まる条件として、ゴーン後も連合が続くような態勢を作ることが約束されたという。ゴーン個人の力に頼らずに日産を傘下に収めておくためには、ルノーが日産の50%超の株式を握るか、持ち株会社を作り、それをルノーが支配できる形を取る必要があった。
     自動車メーカーとしては自分たちよりも格下と見ているルノーの傘下に恒常的に組み込まれることを嫌った日産が、独裁的な立場の乱用が目に付いていたゴーンを後ろから刺したのが、今回の事件の真相だったのではないかと考えられている。日本政府も、日産の国産技術やノウハウをフランスに持って行かれることをよしとせず、日産と特捜部によって描かれたこの事件の捜査にゴーサインを出したとしても不思議はない。
     しかし、ゴーン氏の類い希なキャラクターに依存した連合は、要を失った今、それを束ねる力が弱まっている。だが、その一方で、現在の厳しい競争にさらされている世界の自動車市場では、ルノーも日産も三菱も、とても単体で生き残っていける力はない。そのため、当面は連合を維持されるものと見られている。
     しかし、経済ジャーナリストで世界の自動車産業に詳しい井上久男氏は、ルノー、日産、三菱の3社はどれも競争力に欠けるため、この連合は弱者連合になり、いずれ草刈場にされる可能性が高いのではないかと語る。
     世界はCASEの頭文字で表される、インターネットによってつながれた(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェア(Shared)、電気気動車(Electric)の時代に急速にシフトしている。EVに特化したテスラの他、自動運転時代を見据えて、グーグルやアマゾンといったIT企業の参入が相次いでいる。彼らの研究開発費はトヨタのそれを遙かに凌ぐレベルで、現在の業界の秩序がこのまま維持されるとはとても思えないと井上氏は語る。
     ゴーン氏の失脚によって世界第三位の自動車販売台数を誇るルノー、日産、三菱連合はどうなっていくのか。そもそもこの連合にはどういう意味があり、これが解体した場合、世界の自動車市場にどのような影響が出るのか。現在の自動車メーカーはCASE時代に生き残れるのか。経済ジャーナリストとして長年にわたり世界の自動車産業をウオッチしてきた井上氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・“ゴーン独裁”の功罪と、日産の潜在能力
    ・マクロンと握ったゴーンの思惑とは
    ・今後の自動車業界を占う「CASE」とは
    ・日本の自動車産業が生き残るためには、「非トヨタグループ」が必要
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    ■“ゴーン独裁”の功罪と、日産の潜在能力

    神保: 宮台さんが大学の関係で遅くなるということで、まずはゲストの方と2人で始めたいと思います。ゴーンさんの逮捕劇についての問題自体はさまざまなアングルからそれなりに取り上げてきましたが、今回は事件そのものがどうこうというより、自動車産業について議論したいと思います。ルノー、日産、三菱の三者連合、そのコップの外がいま、どういう状況になっているのか。自動車市場の趨勢という面もそうですし、また時間軸で見ると、ここに来てテスラに代表されるような新しいプレイヤーが今後どんどん入ってきています。キーワードであるコネクテッドや自動運転、シェアード、エレクトリックというものにこれまでの自動車産業がどこまで対応できるのか、ということもあります。
     ゲストは経済ジャーナリストの井上久男さんです。まず、井上さんはゴーン事件について、逮捕直後にテレビなどで「ゴーンさんに最近インタビューした井上さん」と紹介され、発言の機会が多くありました。やはり井上さんにとって、カルロス・ゴーンという人物や日産というのは、取材テーマの中で大きなもののひとつだったのでしょうか?

    井上: 大きなもののひとつでしたね。私があの直後にいろいろなテレビに出たのは、私自身、ゴーン氏が逮捕されるとは夢にも思ってなかったんですが、日産とルノーの経営統合なり何らかの動きは近いだろうと見ていて、かなり準備をして、予定稿を作っていたんです。そこで逮捕されたので、予定稿を少し書き換えて、背景にあるものを伝えたら、それを見たほかのメディアの方が、それをぜひ解説してくださいということでした。これはクーデターなのではないか、というようなタイトルがつきましたが。

     
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