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5金スペシャル 年末恒例マル激ライブ コロナ後の世界で権威主義とメタバースに取り込まれないために
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5金スペシャル 年末恒例マル激ライブ コロナ後の世界で権威主義とメタバースに取り込まれないために

2022-01-05 20:00
    マル激!メールマガジン 2022年1月5日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1082回)
    5金スペシャル 年末恒例マル激ライブ
    コロナ後の世界で権威主義とメタバースに取り込まれないために
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     5回目の金曜日に無料で特別企画をお送りする5金スペシャル。2021年最後となる5金は、12月に東京・大井町の「キュリアン」で約1000人の観衆を前に開催された「年末恒例マル激ライブ」の模様をお届けする。
     2021年は前年に続いてコロナに明け暮れた。一時は1日に2万人を越える新規感染者を出しながらも東京五輪を強行した菅政権は、安倍政権と同様、コロナ禍に対する有効な手立てを打ち出せないまま迷走を繰り返した挙げ句、9月末に退陣に追い込まれた。皮肉なことに後を引き継いだ岸田政権が誕生する頃には、日本国内の新規感染者の数は一気に減少に転じ、2021年の終盤にはコロナの直接の脅威は一頃に比べるとかなり低下した感があるが、海外では今まさにオミクロン変異種が猛威を奮っていることもあり、まだまだ予断を許さない状況が続いている。
     ところが、収束とまではいかないにしても、コロナの危機的な状況がひとまず落ち着いてくると、そこには決してバラ色とは言えない日本や世界の現実が待っている。
     コロナ後の世界はどのようなものになり、その世界を生き抜く上で、何が鍵となるのだろうか。
     今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は中国の武漢から感染拡大が始まったとされるが、その一方で、コロナの感染爆発のような国家規模の危機に対する対応能力という意味では、必要に応じて政府が権威主義的な権力を行使できる中国が、西側先進国と比べていち早くコロナの抑え込みに成功したことが世界の注目を集めた。新型コロナ流行の原因を作ったとされる中国を褒める気にならない気持ちはわかるが、中国のコロナ対策の成功は、民主主義の危機が叫ばれて久しい欧米の民主主義陣営にとって実はとてもショッキングな出来事だった。
     一方、中国の権威主義に対して民主主義陣営の盟主たるアメリカは、日本とは比べものにならないほどの大規模なコロナの流行にのたうち回る中、鎮静効果のあるオピオイド系麻薬の過剰摂取による死者の数が年間10万人を越えたことが報道されている。また、アメリカでは同時に、医療用ではなくレクリエーション目的での大麻利用を合法化する州も日一日と増えるなど、特に白人の間で麻薬常習者の数が年々増えていることが報告されている。
     かつてSNSでそうした不安層・不満層の取り込みに成功しビジネスで大成功をおさめながら、民主主義の破壊者として政治的な批判に晒されたフェイスブックが、社名を「メタ」に変更し、次なるビジネスチャンスを仮想現実のメタバースに見出していることは、決して偶然ではないだろう。
     今世界には「権威主義対民主主義」とほぼ平行する形で、「ユニバース対メタバース」のせめぎ合いが起きているのではないか。それはコロナが流行するかなり前から社会の底流を流れていた対立軸だが、コロナによってその対立軸がより顕著になったと言えるだろう。
     ますます権威主義と大衆迎合主義への傾斜と、麻薬やメタバース的仮想現実への取り込みが横行するコロナ後の世界において、そうしたものにかすめ取られずに生き抜くために、われわれは何をしなければならないか。
     今年最後の5金スペシャルは、人々の不安や不満に付け入る形で忍び寄ってくる権威主義や大衆迎合主義に騙されないためのキーワードが「仲間」にあるという立場から、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、2021年を総括し2022年を展望する。

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    今週の論点
    ・メタバースの時代に生き残るのは、中国のような権威主義か
    ・“大ボス”がおらず、ゆえに変わらない日本の構造
    ・宮台真司があらためて語る、加速主義と孤独死問題
    ・「リアル対ゲーム」から「いいゲーム/悪いゲーム」を識別する時代に
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    ■メタバースの時代に生き残るのは、中国のような権威主義か

    神保: 大ホールがこんなにいっぱいになるとは思っておらず、うれしい限りです。宮台さん、マル激のライブは2年ぶりになってしまいました。本当は1000回記念に何かやろうと話していましたが、2020年の5月〜6月はコロナでホールも貸出されていない状態で、感染リスクというより、イベントをすることによる社会的なリスクが明らかに大きかった。テレビの収録も感染対策というより、社会からの批判対策が優先されていた頃ですね。

    宮台: イタリアの哲学者、ジョルジョ・アガンベンの「尊厳ある生」という話を引きながら、僕は「命さえあればいい」という生き方を批判しました。渋谷で料理屋の2階を借り切って、ゼミ生とパーティをやったりしていましたね。大学の要請には反しているので、「もちろん来たくなければ来なくていい。来たら共犯だぞ」と。特別な理由がない限りは集まるな、ということでしたが、不要不急の集まりでみんなで楽しむ、というのは特別な理由でしょう。
     僕は今回、日本の行政、あるいは政治家の頭の悪さが露呈したという気がします。尊厳ある生と、むき出しの生。人間はただ生きてさえいればいい、という存在ではないなんて、当たり前のことではないですか。だから、不要不急の振る舞いをするんです。セックスをして感染するかもしれなくても、するというのはヨーロッパでいう自己決定の問題です。

    神保: セックスはダメでも、経済活動がある程度は大目に見られるのは、経済が滞ると場合によっては人が死ぬから、不要不急ではないということ?

    宮台: そこが何も考えていないご都合主義の典型なんです。マスメディアもそこに突っ込まなければいけないのに、くだらないコメントを垂れ流す、頭の悪いコメンテーターが勢揃いしている。

    神保: うちの制作費はテレビ番組の100分の1ですが、中身は100倍でいきましょう。さて、宮台さんはこの2年間で、日本の何が変わったと思いますか?
     
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