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マル激!メールマガジン 2023年11月8日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1178回)
経済を看板に掲げる岸田政権のおカネに対する考え方が根本的に間違っている理由
ゲスト:田内学氏(金融教育家、元ゴールドマン・サックス金利トレーダー)
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場当たり的なバラマキ政策を羅列した岸田政権の経済対策は、根本的に間違っている。
岸田政権は11月2日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定した。9月末に発表した物価高対策や持続的な賃上げなど「経済対策の5本柱」から成り、総額で17兆円にのぼる大型な景気・貧困対策パッケージだ。
その中の目玉政策として、1回キリの減税と補助金の給付と並んで物価高を緩和するためにガソリン、電気・ガス代補助金の2024年4月末までの延長が含まれている。しかし、元ゴールドマン・サックス金利トレーダーの田内学氏は、補助金自体はその場しのぎで根本問題の解決にはならないという。
ここで言う根本問題とは、日本が一次エネルギー自給率12%、食料自給率38%という先進国中最低水準にとどまったままでは、何をやってもお金が海外に流出してしまうことだ。ガソリンにしても小麦などの食料にしても、補助金そのものは政府から国民に資産を移す政策となるので、それが有効に使われれば日本の富が増えることに役立つ場合もある。
しかし、特にガソリンや食料の自給率が低いままでは、いくら補助金を出しても日本の国富が海外に流失するばかりだ。困っている人を一時的に助けることは必要だが、根本原因を放置したままでは問題は解決しない。
もし自給率を簡単に上げることができないのなら、日本はその分だけ、いやそれ以上に、海外に買ってもらえるような付加価値の高い製品を作って輸出しなければ、国富の流出は止まらない。日本の国富が流出し、日本がどんどん貧乏になっているから、円の価値は下がり続け、益々原材料の値段が上がるという悪循環が続いているのではないか。金利政策云々はあくまでその反映であって、それが円安の根本原因と考えるのは手段と結果を取り違えている。
賃上げ政策もピントがずれている。物価が上がれば本来は賃金も上がるはずだ。しかし、日本では賃金が一向に上がらない。今回の経済対策の中にも賃上げ企業への優遇税制などが盛り込まれているが、そもそも民間企業の賃金は政府が命じれば上がるものではない。資源輸入大国の日本企業が海外で求められる付加価値の高い製品を作れなくなっていることが問題なのだ。
岸田政権は今年6月に閣議決定された骨太方針2023の中で「2,000兆円の家計金融資産を開放し、持続的成長に貢献する資産運用立国を実現する」などと言い始めた。そしてその一環として、金融経済教育推進機構なる認可法人を作って国家戦略として投資家になるための金融教育を進めるそうだ。田内氏はこの政策もとんでもなく的外れだと語る。
そもそも投資というのは、自分以外の人におカネを渡して稼いで貰う行為だ。もう働けなくなった高齢者が投資に頼るのならいざ知らず、どうすれば自分たちに投資してもらえるかを考えるべき日本の若者たちがアメリカの株に投資して儲ける方法を学んでいるようでは、日本の未来は暗い。
実際、今日本では自分たちの力で社会問題を解決していこうという気概さえ失われているようだ。日本財団による18歳の意識調査では、日本で自分の行動で国や社会を変えられると思っている若者の割合が、インドや中国の3分の1、アメリカやイギリスと比べても半分以下にとどまっている。問題は海外への投資での儲け方を教えることではなく、日本人が自分たちの国が直面する諸課題への有効な手立てを自分たちで考え、それを実現するための投資を国内外から引き込めるようにならなければならないのではないか。
田内氏は新著『きみのお金は誰のため』の中で、「お金自体には価値がない」、「お金で解決できる問題はない」、「みんなでお金を貯めても意味がない」の3命題を提示した上で、おカネが人々をつないだり、社会を豊かにするための有効なツールとなる方法を考えることの重要性を強調する。実際のところお金自体は紙きれにすぎず、それを受け取って働く人がいなければ価値はない。お金は人に働いてもらうための道具であるという基本中の基本を踏まえた上で、今日本の円の価値が大きく下がっていることの意味をよく考える必要があるのではないか。
円安の本質的な意味は、日本に働いてもらっても良いものが手に入らないと世界が考えているということだ。日本が海外に買ってもらえるようなモノを作る努力と工夫を今すぐにでも始めなければ、日本の国際的な地位の低下は今後も止まらないだろうと田内氏は言う。
お金の本質は何か、岸田政権の経済対策に欠けている視点はどのようなものか、今、日本が本当に考えなければならないことは何かなどについて、金融教育家で元ゴールドマン・サックス金利トレーダーの田内学氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・食料とエネルギーの海外依存でお金が海外に流れていく
・物価が上がっても賃金が上がらない理由
・投資するよりされることを考えなければ日本の未来はない
・お金の正体-お金は働いてくれる人を選ぶことしかできない
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■ 食料とエネルギーの海外依存でお金が海外に流れていく
神保: 今日は 2023年11月3日、1178回目のマル激です。今回はビデオニュースの経世済民オイコノミアという番組の司会でもある田内学さんをゲストに迎えてお送りします。10月18日に出版された『きみのお金は誰のため』が非常に売れていると聞いています。
田内: 発売前に2万部の増刷が決まりました。今日初めに話すような経済対策などの中で日本が抱えている問題は、お金さえなんとかすれば解決するかのような話ではありません。それがなかなか伝わらないのでこの本を書きました。特に今日一番聞いてほしいのは教育関係者の方です。
最近お金の教育についての話が色々出ていて、うちの子の学校でも先生を呼んで話してもらうんですが、すごく売れた、お金を増やすための本を書いた人が来て、アメリカの株に投資してこうやって儲けるんだという話をするわけです。これは本当に馬鹿げていると僕は思っています。
なぜかというと、岸田さんの経済対策の中にもありますが、投資というものはお金を誰かに出してその誰かが価値を高めてくれるという話なんです。だけど大事なのは、若い人たちが自分たちで社会に出て問題を探し、こうしたら便利になるということを見つけて、実現するために自分が投資してもらうことです。それをまず教えなくてはいけないのに、お金もない子どもたちに、人に投資しろ、しかも外国に投資しろという話になるともう頭が痛くなってしまいます。
神保: 昨日、岸田総理が会見をして「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を打ち出しました。田内さんにそれを評価していただきたいのですが、元々先週の段階で大きく5つ、物価高対策、持続的な賃上げ、国内投資促進、人口減少対策、国土強靭化というのが出ていました。その5つの中身が具体的に出てきたということです。
田内: 言いたいことはいっぱいあります。まず為替の話にしても、元々円安になったら日本のものが売れると言っていましたがとんでもないですよね。そちらをどうにかしなきゃいけないわけです。金利で調整して、金利を上げたら円高になるといった話ではありません。「デフレ脱却」と総合経済政策にはありますが、物価に関しては完全にインフレですよね。
物価が上がったらその分賃金は上がるものですが、上がっていないのはちゃんと労働者に分配してないからではないのかという話になっているんですが、問題はそんなことではありません。
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