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小林良彰氏:自民党に歴史的大敗をもたらした民意を読み解く
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小林良彰氏:自民党に歴史的大敗をもたらした民意を読み解く

2024-11-06 20:00
    マル激!メールマガジン 2024年11月6日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1230回)
    自民党に歴史的大敗をもたらした民意を読み解く
    ゲスト:小林良彰氏(慶應義塾大学名誉教授)
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     結局のところ最初から最後まで自民党の自滅だったようだ。
     今週のマル激は計量政治学が専門で毎回幅広い有権者の投票行動調査を独自に行っている小林良彰氏と、選挙後の恒例となった投票行動分析を行うとともに、自民党の大敗と立憲民主党と国民民主党、そしてれいわ新選組の躍進が目立った先の総選挙は、国民が何を評価し何に怒った結果だったのかを読み解いた。
     10月27日に行われた衆院選では、自民党は改選前議席を56減らす大敗に終わった。同じく公明党も8議席減らしたため、連立与党は過半数を大きく割り込むことになった。2009年に自民党が181議席を減らして政権を失ったとき以来の、文字通りの歴史的大敗だった。
     本来であれば与党が衆院で過半数を割れば政権交代が実現するはずだが、野党陣営も1993年の細川連立政権をまとめ上げた小沢一郎氏のように、野党勢力を1つに束ねることができる実力者が不在のため、現時点では11月11日に予定される首班指名に向けて、与野党双方で熾烈な多数派工作が行われている。今のところ4倍増の28議席を獲得した国民民主党が与党に協力することで、かろうじて石破政権を存続させる方向で当面の政局は収束しそうだが、首班指名まではまだ時間があるため、状況は予断を許さない。
     また、仮に辛うじて首班指名を乗り切っても、石破政権はその後に待ち受ける補正予算の審議や来年度の本予算審議では、野党の一部を取り込まなければ法案の1つも通らない状況にある。政局は当分の間、不安定な状態が続くことが必至だ。
     それにしても選挙にだけは強かったはずの自民党は、なぜここまで大負けしてしまったのか。
     小林氏が主宰する投票行動研究会が選挙の直前に全国3,315人に行った調査からは、これが自民党の自滅選挙だったことがはっきりと浮き彫りになっている。結論としては、前回までの選挙で自民党に入れてきた自民支持層の多くが投票を棄権したために自民党の得票自体が大幅に減ったほか、過去に自民党に投票してきた無党派層もその大半が国民民主党とれいわ新選組などに流れた結果、自民党は比例票で前回の選挙の27%にあたる533万票も票を減らしている。
     その一方で、今回新たに50議席を獲得して躍進が目立った立憲民主党の方も、必ずしも得票を伸ばしていなかった。立憲民主党の今回の比例区での得票を前回2021年の衆院選と比べると、わずか7万票しか増えていない。一方、大きく支持を広げたのが、若者向けの分かりやすいアピールと経済政策に重点を置いて選挙に臨んだ国民民主党とれいわ新選組だった。国民民主は358万票、れいわも159万票をいずれも比例区で増やしている。
     必ずしも得票を増やしていないにもかかわらず獲得議席で立民の躍進が目立ったのは、全国の選挙区にくまなく候補者を擁立できているのが自民、立民、共産しかいないためだ。自民党が落ちれば自動的に立民が上がる構造になっていた。
     小林氏の研究会の調査では、そうした投票行動の背景に自民党支持層を含む大半の有権者が、統一教会問題や裏金問題で明らかになった自民党の腐敗体質が、石破政権になった後もほとんど変わっていないと感じていたことがわかっている。
     調査で自民党が「かなり変わった」、「ある程度変わった」と答えた人は全体の11%に過ぎず、「あまり変わっていない」、「ほとんど変わっていない」と答えた人は67%にのぼっている。しかも、この調査は非公認候補の支部に2,000万円の政党助成金が振り込まれていたことが明らかになる前に行われたものだったため、その後2,000万円問題が明らかになったことで、実際の投票日までの間に腐敗体質を改められない自民党に対する嫌悪感がさらに強まったことは間違いないだろう。
     今まで自民党の党内野党の立場から、政権中枢をずけずけと容赦なく批判してきた石破氏であれば、自民党を変えてくれるかもしれないとの淡い期待が高かったが、首相就任後の石破氏の行動や言動からは、その期待が見事に裏切られたと感じている人が多く出ていることを、小林氏の調査は明らかにしている。
     また、小林氏の調査では、今回、自民党支持者の投票率は67%、公明党支持者の投票率も74%にとどまった。これは53.85%だった全体の投票率は上回るが、両党の支持層の投票率が過去の選挙では8割前後を誇っていたことを考えると、大幅な減少だ。一向に腐敗体質を変えられない自民党に業を煮やした自民支持層や公明支持層の多くが、今回は棄権に回ったことが見て取れる。
     国民民主党の得票が伸びた理由について小林氏は、他の野党が政治とカネの問題を前面に打ち出したのに対し、この党は若い人の「手取りを増やす」など、とりわけ若い世代の不満や不安に訴える具体的な提案が好感視された結果だったという。年齢別の投票行動を見ると、特に国民民主党は10~30代では自民党に次ぐ高い支持が集まっている。逆にかつて30~40代から強い支持を得ていた維新の後退が今回は顕著だった。
     実際、将来の生活不安を抱える人の割合は、3年前の選挙時よりも確実に増えている。小林氏は物価が上がる中で、国民の生活不安は限界まで上がってきているのではないかと言う。政治不信と踏み込んだ政治改革・党改革ができないことに加え、国民、とりわけ若い世代の経済不安、生活不安に対して有効な対策を打ち出せていないことが、今回の自民党の主要な敗因だったとみていいだろう。
     なぜ自民党は大敗したのか、国民民主やれいわが支持を伸ばしたのはなぜか、日本の国民はこの選挙で何を選択したのかなどを、小林良彰氏が代表を務める投票行動研究会の大規模調査を基に、小林氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
     また、番組の冒頭では、全体として不信任率が高かった今回の最高裁国民審査の結果を振り返った。
     
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    今週の論点
    ・自民党の歴史的大敗と首班指名に向けた多数派工作
    ・有権者の投票行動から見えてくること
    ・支持者からも見放された自民党
    ・国民民主党の「手取りを増やす」が若者に一番届いた
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    ■ 自民党の歴史的大敗と首班指名に向けた多数派工作
    神保: 10月27日に総選挙があり、自民党にとっては歴史的大敗となりました。2009年の選挙では119人しか当選していないので今回の方がまだましなのですが、その後、安倍さんの下ではずっと勝ち続けてきました。11月11日には首班指名があり、多数派工作で乗り切るとしているのですが、少し先の10日後ということで、何が起きるのか分かりません。今日はいつも選挙後に楽しみにしている、小林良彰さんによる投票分析をお送りしたいと思います。
     
     今回の選挙結果は自民が56議席を減らして191、公明も6議席を減らして24でした。維新と共産も議席を減らし、立民と国民とれいわが顕著に増やしました。立民は小選挙区で44も増えていますし比例でも増えているので議席の増加は大きいのですが、全国の選挙区にくまなく候補を立てているのは自民と立民と共産しかないので、自民が落ちれば立民が通ります。
     
     立民の比例獲得票は1,156万票で7万票しか増えていないということからそれがよく分かります。要するに立民の得票自体はほぼ横ばいだったのですが、比例では自民が530万票も減らしているので、自民が落ちた分、立民は自動的に上がったということです。
     
     顕著に増やしたのは国民民主で、比例票がほぼ倍増した結果議席も7から28まで増えました。れいわは3から9に増やしていて比例票も大きく増やしています。れいわと国民は票も増やしていて、立民は票は変わらなかったのですが議席を増やしました。その一方で自民、公明、共産、維新は比例票も議席も減らしています。
     
     また、参政党と保守党が比例区で187万票と115万票をとっています。日本は全国比例ではないので得票数はブロックごとの比例票を足した数字ですが、ここまでの得票があります。参政党と保守党で合わせて約300万票取っていますが、自民党が533万票減らしたことを考えると決して少ない数字ではありません。
     
     結果的に獲得議席では自公で215ということで、233の過半数には18足りておらず、12人いる無所属を全員入れても足りません。そんなことで大丈夫かなと思いますが、首班指名選挙では、決選投票で玉木雄一郎と書くと無効票になり、国民の28議席が無効になることで過半数が219になります。
     
    宮台: 得票や支持については、下がる要因があり下がった政党、上がる要因があり上がった政党、その結果として漁夫の利で上がったり下がったりした政党の3種類あり、大まかにはそれを見なければなりません。 
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    最終更新日:2024-11-20 20:00
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