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20世紀のロボットアニメを概観する
(『石岡良治の現代アニメ史講義』第5章
今世紀のロボットアニメ(1))
【毎月第3木曜配信】
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2016.11.17 vol.735

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今朝のメルマガは『石岡良治の現代アニメ史講義』をお届けします。ここからのテーマは「今世紀のロボットアニメ」。今回はプロローグとして、ロボットアニメを把握する上で重要な「ガジェット性」について、前世紀の様々な事例を挙げて論じます。


▼プロフィール
石岡良治(いしおか・よしはる)
1972年東京生まれ。批評家・表象文化論(芸術理論・視覚文化)・ポピュラー文化研究。東京大学大学院総合文化研究科(表象文化論)博士後期課程単位取得満期退学。青山学院大学ほかで非常勤講師。PLANETSチャンネルにて「石岡良治の最強☆自宅警備塾」を放送中。著書に『視覚文化「超」講義』(フィルムアート社)、『「超」批評 視覚文化×マンガ』(青土社)など。
『石岡良治の現代アニメ史講義』これまでの連載はこちらのリンクから。


■戦後アニメ史と並走してきたロボットアニメ

 「アニメーション」一般から区別される意味での日本の「アニメ」が、1963年1月1日放映開始の『鉄腕アトム』にはじまるという見方は比較的共有されていると思います(もっとも当時は「アニメ」とは呼ばれていなかったわけですが)。興味深いのは同年秋に『鉄人28号』もアニメ化されていることで、数多いアニメジャンルの中でもロボットアニメは、日本のアニメ史とほぼ重なる歴史的広がりを持っています。とはいえ現在ロボットアニメとみられる作風の原点は『マジンガーZ』(1972-4)でしょう。このあたりの事情は、本メルマガで連載されている宇野さんの『京都精華大学〈サブカルチャー論〉講義録』で詳しく解説されています。

(参考)

 多くの場合自律型ロボットであることは稀で、主人公が操縦する乗り物としての性質をもつ超兵器であることも重要な特徴です。このジャンルの代表作『機動戦士ガンダム』が「モビルスーツ」という呼称を用い、厄介なロボット定義論から距離を置いているにもかかわらず、総称としてはざっくりと「ロボットアニメ」としてまとめられてしまうのも興味深いところです。それはおそらく、『ガンダム』のヒットを受けて1980年代に数多く作られた後続作が、それぞれの世界観に合わせて「アーマードトルーパー」(『装甲騎兵ボトムズ』)や「オーラマシン」(『聖戦士ダンバイン』)といった名称を増殖させすぎたことも一因でしょう。「ようするにこれらは全部ロボット」なのだという直観の方が正確な定義に勝ったわけです。
 私がロボットアニメにおいて重要だと考えているのは、ミリタリーの想像力をかすめつつも、そこから逸れていく展開がしばしばみられるところです。本章の話題の一部は『視覚文化「超」講義』の4-3「ロボットアニメの諸相とガジェットの想像力」で語ったことと重なるので、詳しくはそちらを参照してほしいのですが、一点だけ要点をまとめると、しばしば男性オタクの欲望と重ねられてきた「メカと美少女」というキーワードとの関係を追うことで、ロボットアニメの現状を考えることができるのではないかという見通しを持っています。ロボットアニメは現在でも数多く制作され続けていますが、特に若いアニメファンのニーズと合致することが少ないジャンルとなっている上、アニメファン=男性オタクという等式を作れるという幻想がそもそも成り立たなくなっています。そうした現状をふまえつつ、この章では「今世紀のロボットアニメ」について分析してみたいと考えています。


■前世紀ロボットアニメの「基準作」として機能した『ガンダム』と『エヴァ』

 「今世紀のロボットアニメ」という本章のテーマを考える上で、やはり前世紀の1990年代までの展開を簡単に整理しておく必要があると思います。とりわけ私が注目したいのは、20世紀ロボットアニメの「ガジェット性」です。
 とりわけ1960、70年代のロボットアニメは、少年(後に少女も)を軍隊とは別の手段で活躍させるために最適な枠組として選ばれていたように思います。少年探偵ものが、警察に属することなく捜査を行うのと似ていて、軍隊組織に属さない一種の「特殊部隊もの」としての性格を帯びた作品が多いんですね。少年少女が大人以上に大活躍しなければならないというジャンル的な要請は、昔も今も「不自然だ」として嫌われることが多く、しばしばミリタリーマニアが「おっさんが活躍するアニメ」を求める声を上げているのをネットなどでは目にしますが、実際のところ、日本ではダイレクトな軍隊ものにはせずにそこを「やや迂回する」方が好まれているわけです。このことは萌えミリタリージャンル最大のヒット作『ガールズ&パンツァー』が徹頭徹尾「部活物」として描かれていることをみれば明らかでしょう。というのも、ここをリアリズム寄りで突き詰めていくと、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』における少年兵のようなタイプの悲惨さが前面に出ることになってしまうからです。


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