本記事のタイトルの著者名に誤記があったため、修正し再配信いたしました。著者・読者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。【8月22日21時50分追記】
現役官僚の橘宏樹さんが「官報」から政府の活動を読み取る連載、『GQーーGovernment Curation』。7月17日に閣議決定された「日欧EPA」の背景には、英国の離脱が決定したEUの信頼性回復や、トランプの保護主義への反撃など、日欧双方の複雑な目論見が垣間見えます。激化する通商戦争から国際関係のあり方について考えます。
こんにちは。橘宏樹です。国家公務員をしております。このGovernment Curation(略してGQ)は、霞が関で働く国民のひとりとして、国家経営上本当は重要なはずなのに、マスメディアやネットでは埋もれがちな情報を「官報」から選んで取り上げていくという連載です。どんな省益も特定利益にも与さず、また玄人っぽくニッチな話を取り上げるわけでもなく、主権者である僕たちの間で一緒に考えたいことやその理由を、ピンポイントで指摘するという姿勢で書いて参ります。より詳しい連載のポリシーについては、第一回にしたためさせていただきました。
【新連載】橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第1回「官報」から世の中を考えてみよう/EBPMについて
2018年7月は、まず、西日本の集中豪雨が大変な被害をもたらしました。被災者の方々には心よりお見舞いを申し上げます。救援や復興支援のためにご尽力されている方々に深く敬意を表すとともに皆様の安全と1日も早い復旧、復興を心よりお祈り申し上げます。また、マスメディアの報道を振り返ってみますと文科省の汚職、「新アンガールズ」問題、といった、時代錯誤感すらあるスキャンダルも目に付きましたね。連日の猛暑も非常に厳しく、熱中症予防の呼びかけも頻繁になされていました。
永田町・霞が関界隈では、まず第196回通常国会が7月22日に閉会しました。会期中には話題のカジノ関連法案が可決されましたが、本稿第2回で取り上げた水道法の改正は、衆議院は通過したものの、参議院で継続審議となり、結局今国会でも成立は見送られました。今後は9月の自民党総裁選に向けた政局に注意が集まっていきます。その裏では、霞が関では各省からの概算要求(次年度予算の見積)を受けた財務省が予算編成を始めていきます。
橘宏樹『GQーーGovernment Curation』第2回 水道法改正/PFI法改正から考える
さて、今回のGQのテーマは「通商」にしました。2018年7月17日閣議決定「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の署名」(いわゆる「日欧EPA」)を取り上げたいと思います。人口約6億人、世界GDPの約3割(21兆ドル)を占める先進国間による世界最大級の経済圏が新たに誕生することになります。
この度の日欧EPAでは、輸出入の自由化のほかにも大きな取り決めが行われました。しかし、協定の内容もさることながら、協定が締結されたこと自体に、国際政治経済上の重要な意味があります。日欧EPAはこれまでも長年協議されてきていたのですが、ついこの間まで、やや交渉が停滞気味でした。しかし「とある事情」が生じたことから議論が加速して、昨年末には大枠合意、そしてこの7月に署名がなされ、2019年中には発効する見通しとなりました。この「とある事情」そのものが引き起こした、現在の国際政治経済情勢に対して、メッセージ発信を伴うリアクションを起こした、かなり着目に値するニュースだと思います。内憂の多い昨今の日本ですが、外患に対しても、活路を見出すべくシビアな駆け引きを展開していることにも目を向けるべく、今回のGQで取り上げることにしました。
「スパゲッティ・ボール」化する通商世界
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