消極性研究会(SIGSHY)による連載『消極性デザインが社会を変える。まずは、あなたの生活を変える。』。前回に引き続き工学者の渡邊恵太さんの寄稿です。次に観る作品を選ぶだけで時間がかかってしまうNetflixを、積極性を費やすことなく楽しむ研究や、スマホ画面の1ページ目の争奪戦を超えるAmazoDashボタンの狙いについて論じます。
消極性デザインの連載、第5回目。今回も前回に引き続き明治大学の渡邊が担当します。
前回の串かつ盛り合わせからNintendo Switch、Netflixの話まで、一見よくわからない組み合わせから消極性デザインについて説明しました。串かつ盛り合わせが最新かはともかく、意外と最新の流行りのサービスやテクノロジーには消極性デザインが施されていたり、逆に消極性デザインを必要とする場面があることを知ってもらえたかと思います。
今回も消極性デザインという切り口で、まずはNetflixの消極性デザイン的解決案から、さらに今回のタイトルでもある、みんな大好きスマートフォンの課題について考えていきたいと思います。そしてAmazon発のなんじゃこりゃIoTデバイス「AmazonDashボタン」が消極性デザインであるということを説明していきたいと思います。
Netflixをいつ見るか?
Netflixのような定額動画視聴サービスは、いつでも自由に観られる一方で、いつ観るかが問題になるということを前回ご紹介しました。さらに、膨大なコンテンツがあるために、どの映画を見るのかを自分で決めなければなりません。これは嬉しいことである一方、「今、この時間の気分に合う、まだ観たことのない何か」を選ぼうとすると、選ぶだけで時間かかってしまうこともあり、いつのまにか映画の約半分の時間、1時間も選ぶ行為にかかってしまうことがあります。Netflix社は「今夜Netflixで映画を見ませんか?」という形でレコメンデーションメールを流してくるわけですが、なかなか突然ですし、しかもメールという方法で来るので、そんなに簡単に予定調整ができるわけでもありません。
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Amazon Dashボタンは現実空間をインターネットの様に最適化しているAmazonにピッタリなデバイスだなと登場当時に感じました。
物理的ボタンによって、現実の中間を省くためにあったwebサイトを省き、消費者と商品を無意識にインターネットと物流で繋げる。
タッチポイントになるWebサイトに始まり現実空間やその動線に至るまで人の動きをデータ化し考察し、最終的に自社のシステムへのアクセスまで簡略化し選択肢も限定する。
自社サービスにマッチし、さらに便利さを拡張するダイナミックでシンプルな発明。
ただ、あまりによく出来すぎていて、人間をサイト上のマウスカーソル的なモノの様に見ているんだろうなと、当時Amazonを少し怖く感じてもいました。
消費者との接点を消費者寄りにする必要のある場合がある。消費者に選択する自由を与えるばかりでなく、供給サイドから消費者の「興味の周辺」を拾い上げて与えて、消費者は新たな情報を得る。
マーケティングが消費者心理を読み戦略としていることが分かりました。使いこごちが良くなる分、知らず知らずのうちに使ってるってことになるんでしょうね。
私はインタラクションコストが低くなるのは大歓迎です。一方で個人情報のうち私の指向性は筒抜けになっているでしょうね。