宇野常寛が火曜日のキャスターを担当する番組「NewsX」(dTVチャンネル・ひかりTVチャンネル+にて放送中)の書き起こしをお届けします。3月5日に放送されたvol.25のテーマは「アニメビジネスの未来」。アニメプロデューサーの平澤直さんをゲストに迎え、Netflixなどの外資系サブスクリプションサービスの登場によって大きな変化を迎えているアニメビジネスと、日本のアニメ業界の今後について、お話を伺いました。(構成:籔 和馬)
NewsX vol.25 「アニメビジネスの未来」
2019年3月5日放送
ゲスト:平澤直(アニメプロデューサー)
アシスタント:後藤楽々
宇野常寛の担当する「NewsX」火曜日は毎週22:00より、dTVチャンネルで生放送中です。
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スマホと配信プラットフォームの台頭で変わりゆくアニメ業界
後藤 NewsX火曜日、今日のゲストはアニメプロデューサー、平澤直さんです。お二人は、どういう経緯で知り合ったんですか?
宇野 ニッポン放送の吉田尚記というアナウンサーがいて、彼を介して仲良くなりました。その頃、平澤さんは有名なアニメスタジオにいたんですよ。そこからもう一社経て独立されて、今自分の会社をやられているんですけど、そこで平澤さんが日本のアニメ業界ではめずらしいユニークなビジネスをされているんです。今日はこれからのアニメはどうなっていくのかという話をしっかりとしたいなと思っています。
後藤 平澤さんと考える今日のテーマは『アニメビジネスの未来』です。
宇野 ソフトビジネスから配信にアニメの主戦場が変わっていくなかで、僕らが愛した日本アニメの傾向や中身も影響を受けていくと思うんだよね。そこで、産業構造の変化にしたがってアニメの未来はどこにいくのかという話をあらためてしたいなと思っています。
後藤 最初のキーワードは「アニメビジネスのいま」です。
宇野 議論の起点として、今のアニメ業界はどうなのか、ということを産業視点から平澤さんに解説してもらって、そこから話を始めたいと思います。
平澤 ここ30年間ぐらいのビデオパッケージ、VHS、LD、DVD、ブルーレイが合計でどれぐらい売れているのかを示すグラフです。私が最初に会社員になったのは2001年ぐらいなんですけど、その頃はちょうどDVDが売れ始めた時期で、上り調子が2004〜2005年ぐらいまで続くんですね。その頃にちょっと危なくなってきたぞということで、I.Gに転職したんです。そのときのピークから、今だとだいたい半分ぐらいまでになってきちゃっています。
宇野 これを見ると、下がってきたのもそうだけど、明らかに2000年代前半がバブルだよね。
平澤 この時代はお客さんも買ってくれたし、家電量販店などでDVDを取り扱う棚がどんどん大きくなっていったんですよね。「今、DVDが売れているらしいから、CD売り場をもっと広げてDVDを置かなきゃいけない」と。そうすると商品も揃えないといけなくなる。だから、お客さんが買っている分も儲かったし、お店に並んでいる分も儲かったんですよね。
当時の売れている作品はテレビアニメだと1巻あたり10万本ぐらいのセールスで、今でも直近だと『ユーリ!!! on ICE』というアニメが10万本ぐらい売れていたりするんですが、ただ、昔だったら、売れないアニメでも4000〜5000本出るものもあったんです。今はテレビアニメで5000本出るとヒットと呼んでいい状態です。一番変わったのは売れないタイトルが極端に売れなくなった。それが2005〜2006年ぐらいから起き始めた事態ですね。
宇野 10年前の2007〜2008年頃は、売れないアニメだと初動が4桁をいかないこともありましたよね?
平澤 その頃から1000本を切り始めた恐怖がすごくありました。今だと買った人同士が校庭で一緒に体育の授業ができるようなレベルの数まで減っていますね。
宇野 マジで関係者しか買っていないじゃないですか。
平澤 市場で売れている量より関係者に配っているサンプルのほうが多いことも、まれにあったりするようですね。
宇野 怖いですね。
後藤 そこまで衰退しているんですね。
平澤 みなさんが映像を観る手段がスマホにシフトしているんですよね。劇場が最初にあって、次に据え置きテレビ、その次はPCとアニメを観る環境がだんだん変わってきているんです。今、ゲームはPCからスマホへの移行がほぼ完了しましたよね。アニメは据え置き型のPCやテレビで観るものから、スマホで観るものにだんだん変わり始めている。そこでどんな作品が受けるのかが少しずつ変わってきている。
後藤 スマホの画面も大きくなってきていますよね。昔はもうちょっと小さくて観にくかったので、テレビのほうがいいかなと思っていたんです。でも、最近のスマホは大きいから観やすい。それに画質もいい。
平澤 もうひとつの変化が、視聴のタイミングが大きく変わったんですよね。PCもテレビも、家にありましたが、スマホはいつでも持っていられる。スマホでゲームをやるのは移動中が多いですよね。となったときに、はたして1話で約30分、厳密には20~24分のアニメを最初から最後まで観通せるのかどうか。スマホシフトで求められる変化にはそういうところがあります。これからスマホ向けにアニメをつくるときに考えなければならないのは、そもそも、なぜスマホを横にして観るのか、縦の方がいいんじゃないかとか。あるいは20分は長くないかとか。
後藤 どんどん短くなるんですね。
平澤 そういう変化が起こり始めるかもしれないですね。
宇野 『ポプテピピック』はスマホの影響があると思います?