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井上明人 中心をもたない、現象としてのゲームについて 番外編 2019年の「推し」ゲーム三選
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井上明人 中心をもたない、現象としてのゲームについて 番外編 2019年の「推し」ゲーム三選

2020-01-14 07:00
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ゲーム研究者の井上明人さんが、〈遊び〉の原理の追求から〈ゲーム〉という概念の本質を問う「中心をもたない、現象としてのゲームについて」。今回は番外編として、2019年の「推し」ゲームを紹介します。司法制度に対する批評性を備えた『Legal Dungeon』、プログラミングをパズルゲーム化した『BABA IS YOU』、そして今年最大の話題作『デス・ストランディング』の緻密なゲームデザインについて論じます。

2019年の「推し」ゲーム三選

 2019年は2018年と比べると、私の時間があまりなかったせいもあってか昨年ほどまでには良いゲームとのめぐり合わせがなかったのだが、今年も「推し」のゲームをいくつか、紹介させてもらいたい。
 まず、本題に入る前に、印象に残ったゲームをざっと挙げておこう。
 ゲーマーコミュニティに大きな話題を読んだ作品としては『リング・フィット・アドベンチャー』『フィット・ボクシング』『ACE COMBAT 7 SKIES UNKNOWN』『デス・ストランディング』は、確かに革新的と言えるポイントがあった。
 また、オープンワールドの元祖と言っていいのか、中興の祖というべきか、『シェンムー』シリーズの最新作『シェンムー3』もリリースされ、出来上がりの水準についてさまざまな評価はあったが長年の同シリーズのファンとしては感慨深い。
 インディーズ作品では、『BABA IS YOU』『The MISSING: J.J. Macfield and the Island of Memories』『Unpacking』『マイ・エクササイズ』『HEADLINER』『Legal Dungeon』など今年も素晴らしい作品に数多く出会うことができた。
 純粋なデジタルゲーム作品以外にも言及しておくと、アナログゲームでは、なかなか遊べていなかった米光一成による『はぁって言うゲーム』は、人々の言語表現の多義性を見事にすくいとった作品として、優れたものだった。また、ICCで開催されたデジタルゲームの展覧会「イン・ア・ゲームスケープ」展はデジタルゲームがいかにファインアートの文脈の中で再構成されうるかの可能性を端的に示してくれるエポックメイキングなものになっていた。

 さて、本年は、この中から『Legal Dungeon』『BABA IS YOU』『デス・ストランディグ』の三本を取り上げておきたい。
 とは言え、まだ『SEKIRO』『CONTROL』など、遊ぼうと思いつつも時間がとれていない作品があるので、例によって網羅的にやっているとは言い切れないこと、また致命的なネタバレではないものの序盤についてのネタバレは含んでいることは予めご了解いただきたい。

組織におけるインセンティブの表現:『リーガル・ダンジョン』


▲『Legal Dungeon』

 近年、社会的な問題をゲームのメカニクスとして抽象化し、再現するという作品が確固としたジャンルを構築しつつある。昨年は、カナダのNicky Caseの作品群を挙げたが、今年はこの路線では、韓国のインディーゲーム作家であるSOMIの作品を挙げたい。
 前作『Replica』(2016)では、権力者の側から、テロリストとして疑われた若者の情報を集めるというアドベンチャー作品だった。


▲『Replica』

 今作『リーガル・ダンジョン』も、権力者の側からの制度の危うさを問題とした作品となっており、プレイヤーは警察官となって被疑者の書類を整備する仕事をする。
「被疑者の書類整備」というと、いかにも地味に聞こえるかもしれれないが、そんなことはない。実質的には、この作品における警察は検察官の役割を果たしている。被疑者を軽犯罪として裁くのも、重犯罪として裁くのも、プレイヤーの裁量で決めることができる。そして、適切な法の運用をすることが評価されるだけでなく、いかなる形であれ重犯罪者を多く挙げても評価がされるようになっている。コアとなるゲームメカニクスは、『逆転裁判』や『ダンガンロンパ』のようなものに概ね近いものと思ってもらえればよいだろう。
 プレイヤーの裁量によって、公正であるべき制度が歪んでしまいうることを表現しようとしたゲームは少なくない。インディーゲーム界隈における社会批評的な領域を切り開く記念碑的作品となった『Papers, Please』では、入国審査官となってチェックをしていくというものだし、先に挙げた『HEADLINER』は新聞社のデスクとなって新聞報道のありようを任意に操作することができてしまう。


▲『HEADLINER』

 我々の世界の「公正であるべきもの」が、いかに貧弱な組織構造によって成立しているか、という点では、これらの作品は共通したテーマを表現し、「公正さ」を要請される役職者がいかにさまざまな現実的な利害関係のトレードオフの中での葛藤を突きつけられているかということを擬似的に体験させてくれる。
 現実のシュミレーションとして、ジレンマ状況を体験させる教育用のゲームなどは今までもあった(たとえば、防災ゲーム『クロスロード』)し、『逆転裁判』をよりシリアスゲーム風味にした作品もあった。たとえば、『有罪×無罪』などは陪審員として裁判に参加するゲームだが、事件とへと関わらせる展開のさせ方も丁寧につくられている。


▲『有罪×無罪』

『Legal Dungeon』は、こうした作品の系譜のなかでも、いくつかの重要な達成を成しているが、一点だけに絞るならば、小さな権力者であるプレイヤーにどのような社会制度的なインセンティブが与えられているか、を強力に示していることだろう。


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