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『ぶあいそうな手紙』──手紙からはじまる優しい心の処方箋|加藤るみ
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『ぶあいそうな手紙』──手紙からはじまる優しい心の処方箋|加藤るみ

2020-06-18 07:00
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    今朝のメルマガは、加藤るみさんの「映画館(シアター)の女神 3rd Stage」、第5回をお届けします。
    今回は、7月公開のブラジル映画『ぶあいそうな手紙』をご紹介します。
    孤独で頑固な老人とブラジル娘が、手紙の代読・代筆を通じて交流していく様子を描いた本作。凝り固まってしまった老人の心をほぐしていく、その優しい世界観の魅力とは?

    加藤るみの映画館(シアター)の女神 3rd Stage
    第5回『ぶあいそうな手紙』

    皆さま、おはようございます。
    加藤るみです。

    最近オンライン試写で、気鋭の独立系制作スタジオA24の新作を観ました。
    ちょっと奇妙な映画だったんですが、『ヘレディタリー/継承(2018)』や『ミッドサマー(2019)』などを制作してきたA24らしく強烈なインパクトが残る映画だったので、メインディッシュの前に少しだけご紹介します。

    タイトルは『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』という作品です。

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    ▲『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』(画像出典

    ハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフが死体役で出演したことで話題となった『スイス・アーミー・マン(2016)』という映画をご存知でしょうか?
    死体のオナラをエンジンに海をブンブン駆け抜ける、あの作品です。
    ぶっ飛んだ設定にもかかわらず、監督をつとめたダニエル・シャイナートとダニエル・クワンのコンビ(ダニエルズ)が多くのMVを手掛けてきたからか、謎に感動してしまう美しい画を魅せてくれる、危険な怪作です。

    余談ですが、旦那がまだ彼氏だった頃、アレを観に映画デートに誘ってしまったことがあります。
    今でも忘れない、ジメジメとした夏の終わり。
    当時、中野に住んでいた私たちは、新宿で乗り換えるのが面倒くさいからと、電車ではなく、バスで40分ほどかけて池袋のシネマロサへ行ったのでした。
    そう、死体のオナラでブンブン海を駆け巡り、口からゲロのように飲料水を出して、男2人(うち1人は死体)が無人島でサバイブする映画を観るために。
    まだ付き合いたてほやほやの時期にアレを観に行ったことは、深く後悔した出来事でした。
    私は大好きなポール・ダノを観れたしそれなりに映画を楽しんだのですが、
    観終わったあと「るみちゃん……これが観たかったの?」と、豆柴のような瞳で不思議そうに見つめてきた旦那が忘れられません。
    後悔した映画デートではありますが、語るまでもなく“私と付き合うということはこういうことだ“と旦那に証明できた出来事だったなと今では思っています。

    話は逸れてしまいましたが、そんな私の失敗映画デートの記憶に残る1本『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナート監督の単独監督となる新作が『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』です。
    もう、一言で言うと“激ヤバ“な映画でした。
    タイトル通り“ディック・ロング“の死の真相を突き止めるクライムコメディなんですが、
    この映画の秘密が隠された“珍騒動“がとにかく不穏でファンタスティック。
    しかも、驚くほど集中して観させられる作りになっていて、めちゃくちゃ大真面目に丁寧に進んでいくからこそ、その秘密を知った時、「やってくれたな!!!!」と叫びたくなるのです。
    物語の衝撃的な展開に圧倒される、凄まじい映画でした。
    ちなみに、タイトルにある名前の“ディック(Dick)“は「イチモツ」という意味の俗語で、直訳すると壮大な下ネタタイトルになっているんですね。
    観終わったあとにこの隠された俗語に気づき、より不快になったんですが、やはり「やってくれたな!!!!」と、降参してしまいました。
    ダニエル・シャイナート監督は『スイス・アーミー・マン』に続き、とんでもないトンチキ映画を作ってくれました。(褒めてます)
    彼の映画をカップルで観るのはお勧めしませんが、その奇想天外な発想は、怖いもの見たさではあるものの「次は、どんな新しいものを見せてくれるのか」と、期待しかないです。

    さて、そろそろ本題に入りましょう。打って変わって今回は、ブラジル発のじんわりくるハートウォーミングな映画をご紹介します。

    タイトルは『ぶあいそうな手紙』という作品です。

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    ▲『ぶあいそうな手紙』(画像出典

    視力を失いつつある独居老人・エルネストが偶然出会ったブラジル娘・ビアに手紙の代読と代筆を頼むことに。
    78歳のエルネストと23歳のビアが世代やジェンダーの違いを乗り越える、愛にあふれた物語です。
    ラテンアメリカの音色も心地よく、「こんな今だからこそ観たい」と思える優しい世界を描いた映画でした。


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