今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。【本日開催!】
本日は、明石ガクトさんをゲストにお迎えした「YouTubeとNetflixは世界をどう変えるのか」です。YouTubeやNetflixなどの映像配信プラットフォームの台頭により、エンターテイメントの世界が大きな変容を迎える中、今後求められる映像コンテンツとはなにか。そして、それらのコンテンツは、どのように受容され、文化の地図をどう牽引していくのでしょうか。明石さんと考えます。(放送日:2020年7月7日)
※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
8月4日(火)19:30〜「思想としての発酵/発酵する思考」(ゲスト:小倉ヒラク)
話題をあつめた『発酵文化人類学』や、各地のユニークな発酵食品を集めた専門店「発酵デパートメント」の開業など、世界でただひとりの「発酵デザイナー」として精力的に活動する小倉ヒラクさん。
味噌や醤油、ヨーグルトに醸造酒と、人類が古来から豊かな食文化を築くために活用してきた微生物たちの「発酵」という活動には、どんな叡智が隠されているのか。
そして多彩な発酵食品や醸造文化との付き合い方を見つめ直すことで、現代人の生活をどう豊かにしていけるのか。
目に見えないものたちとの協働が育む思考や世界各地の発酵文化の魅力など、「発酵」を通じて見えてくる社会とライフスタイルへの気づきについて、たっぷりと学んでいきます。
生放送のご視聴はこちらから!
遅いインターネット会議 2020.7.7
YouTubeとNetflixは世界をどう変えるのか|明石ガクト
長谷川 こんばんは、本日ファシリテーターを務めます、モメンタム・ホースの長谷川リョーです。
宇野 はい、みなさん、こんばんは。PLANETSの宇野常寛です。
長谷川 「遅いインターネット会議」。この企画では政治からサブカルチャーまで、そしてビジネスからアートまで、様々な分野の講師をお招きしてお届けしております。本日は有楽町にある三菱地所さんのコワーキングスペース、SAAIからお送りしています。本来であれば、トークイベントとしてこの場を皆さんと共有したかったんですけれども、当面の間は新型コロナ感染防止のため動画配信と形式を変更しております。今日もよろしくお願いします。それではさっそくゲストの方をご紹介いたします。今日のゲストはワンメディア株式会社代表取締役の明石ガクトさんです。
明石 よろしくお願いします。
宇野 よろしくお願いします。
明石 いやぁもうね、ほんとはここで割れんばかりの歓声と拍手。
宇野 そう、僕の想定では猪木コールばりの、割れんばかりのガクトコールで始まる予定だったんですけど(笑)。
明石 「ガクト! ガクト!」って感じになるはずが(笑)。
宇野 そのはずが、まさかの無観客ですよ。
明石 マジっすね、ほんと。
宇野 僕ら、半年近く無観客やってるので、恐るべきことに無観客にこそ慣れつつある。
明石 しかし、この広大な空間で無観客だと、短パン履いてきたことが間違いだったなってくらい足がスースーしますね(笑)。
宇野 ちなみに僕も短パンで、ハセリョーはジャージ。有楽町でこんな格好してる3人組ってもう僕たちだけですよ(笑)。
明石 ほんと、3密とは程遠い空間で(笑)。
宇野 下半身から疎な感じで行こうかなと思ってます。
明石 未来感じますね。
宇野 間違いなく最先端なんで頑張って、気合入れていきましょう。
長谷川 さて、本日のテーマですが、「YouTubeとNetflixは世界をどう変えるか」です。YouTubeやNetflixなどの映像配信プラットフォームの台頭により、エンターテインメントの世界は大きな変容を迎えております。今後、求められる動画コンテンツとは何か。私たちはそれをどのように受容し、楽しむことができるのか。それらのコンテンツは文化の地図をどのように牽引していくのか。動画制作のプロフェッショナルである明石ガクトさんと議論していきたいと思います。
宇野 以前、明石さんが『動画2.0』という本を出したときにPLANETSチャンネルの番組に来ていただいて、いろいろ話したわけですよ。自分の著書『遅いインターネット』で引用させてもらったんだけど、20世紀を代表した劇映画というカルチャーが、インターネットの中で大きく変質していて、今や動画はコミュニケーションツールのひとつに過ぎないのだ、ということを「映像から動画へ」というキラーフレーズで表現していたのがあの本だった。あれから2年ぐらい経ったのかな?
明石 そうですね、ちょうど2年くらいですね。
宇野 この一連のコロナ騒ぎが起きてステイホームの時代になったことが、あの本が予言していた状況を決定的に後押ししたと思うんです。そこで今日は、このタイミングでもう一度、明石さんと議論の続きをしたいなと思ってお呼びしました。
明石 いや、めっちゃありがたいですね。宇野さんほど、あの本で本当に言いたかったことを汲んでくれている人はいないです。いかに日本人の読解力が下がってるかっていうこともあるのかもしれないけど(笑)。「映像から動画」みたいなテーマの時には、みんな表面的なことを聞きたがるんですよ。けれども、宇野さんが今言ったように「動画はコミュニケーションツールのひとつになる」っていうことを、あの本では言いたかったんです。今まさにコロナ禍で大きな変化が起こっている中で、そのコミュニケーションツールとしての動画の役割が先鋭化してきている。そういうことを「これから動画に起きる10の変化」としてまとめていて、この後スライドにも出てくるんですけど、今日はそのあたりのことをたっぷり語り合いたいなと思っています。
宇野 はい。よろしくお願いします。
「withコロナ時代」において動画コンテンツ、ビジネスはどう変化するか
長谷川 それではさっそく議論に入っていきたいと思います。本日は2部構成で番組をお届けします。前半では「with コロナ時代」において動画コンテンツ、ビジネスはどう変化していくのか議論していきたいと思います。後半では、これからの動画を考えるうえで、重要になる作品を5つ挙げていただき、それについて話していきたいと思います。ではまず、最初にコロナショックを受けて、これからの動画業界にどのような変化が起きるのか、動画コンテンツ、ビジネスはどう変化していくのかについて、明石さんからお話を伺いたいと思います。
明石 いまお見せしている、この「The STORY MAKERS」というスライドを何のために作ったのかっていうと、コロナショックでONE MEDIAの仕事がめっちゃ飛んだんですよ。
宇野 やっぱり飛ぶんですね。
明石 具体的な金額をあえて言ってしまうと、3.8億円くらい飛んだんですよね。4〜5月の間、宇野さんとは別の収録で一回会ったんですけど、僕は本当にすごく暗かったんです。会社が潰れるかもしれない状況なんで暗くなるんですけど(笑)。
宇野 そうですよね(笑)。
明石 そこから復活するためには、「動画」とか言っていても仕方ないんじゃないかって思ったんです。要は、動画ってほとんどの人にとって、いわゆる不要不急のもので、もっと本質的なものに立ち返らなければいけない。それで作ったスライドを今日は持ってきています。
それで、いろいろやろうと思って、最初にNewsPicksの記事を書きました。もう、困ったときのNewsPicks、みたいな感じで記事寄稿したんですが、これがすごいバズって。今、左下に「バズるは古い」って書いてあって自己矛盾がすごいんですが(笑)。
宇野 これいいっすねぇ(笑)。
明石 けっこう読まれた記事で、この中でいろんな表面的なテクニックみたいなものを書いているんですけど、本質的なメッセージとしては、「VUCA」の時代です。
もともとは軍事用語として使われている言葉なんですが、今って不確定な時代で、いろんなものが複雑になっているから未来予測が非常に困難になっていくよね、ということです。たとえば、70年代、動画コンテンツ、映像コンテンツの世界では、レスラーが空手チョップをやるだけで群衆がワーッと沸き立ち、ウルトラマンがスペシウム光線を出すだけでキッズは大盛り上がりだったんです。そこと比べると、今の『仮面ライダー』や戦隊ものって、半端なく複雑になっているじゃないですか。これはビジネスにおいてもそうで、どんどん世の中の複雑性が増していて、何が当たるのかもわからなくなっている。
そういう時代に、コロナショックが起きた。それで、最初に述べたように僕の会社も、飲食業界、旅行業界やいろんなところが大変なことになったんです。
このスライド、イーロンマスクのロケットが打ちあがった瞬間の写真を使ってるんですよ(笑)。
宇野 それ説明されなきゃわからないですよ(笑)。
明石 僕、この打ち上げの写真を見ながら「動画とかって必要なのかな」とか考えちゃったんです。もっと言うと、僕らはクリエイティブを作る会社なので、絶対に打ち合わせが必要だと思っていました。会議室に集まって、ホワイトボードにワーッと書いた中からいいアイデアをひねり出そうとやっていたのが、コロナショックでみんなが在宅勤務になって、できなくなってしまった。それで、Zoomでやってみたら、意外とオンライン会議の方がアイデアが出るんです。オンラインの方が会議室の上座と下座みたいな概念もないし、偉そうにふんぞり返ってるだけじゃダメだから自分で意見を言わなきゃ、と思うようになって、むしろうちのクリエイティブが息を吹き返してきた。本質的には、いい議論が必要なのであって、ホワイトボードを使ったりして長時間の打ち合わせをする必要はなかったんです。それで、そういったエッセンシャルなものに向かっていかなきゃいけないと思ったんですね。