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アニメーション監督の山本寛さんによる、アニメの深奥にある「意志」を浮き彫りにする連載の第18回。
この国の現実を揺るがした東日本大震災から、いよいよ10年。岩手・宮城・福島という被災三県の実情と向き合いながら『blossom』『Wake Up, Girls!』『薄暮』からなる「東北三部作」を作り続けた山本監督が、多くの人々の命と日常を奪った圧倒的な災厄を前に、アニメという虚構に何ができたのかを振り返ります。

山本寛 アニメを愛するためのいくつかの方法
第18回 「東北三部作」を振り返る~東日本大震災10年

今年、東日本大震災勃発からちょうど10年となる。
僕にとっては、長かったような、短かったような10年だった。しかし確実に言えるのは、しんどかった、ということだ。
僕はこの間、東北に向けた三つの作品を完成させた。
それを振り返ることで、もう一度この震災の記憶を読者諸氏に生々しく呼び起こしてもらおうと思う。

2011年3月11日、僕は家にいた。
『フラクタル』(2011)という作品の最終話の演出作業に追われ、昼夜逆転する生活が続いていた。だから寝ていたのだ。
眠りながら揺れを感じた。最初はああ、地震かぁ、とまどろみつつ思うだけであったが、しかし長さを感じた。長い。そして、大きい。
僕は何かを察知して跳び起きた。
1995年の阪神・淡路大震災の記憶が蘇ったのだ。あの時も僕は寝ていて、同じような揺れを感じたのだ。その感覚にそっくりだった。
TVは既に点いていて、情報番組の「ミヤネ屋」が生放送で映っていた。
その放送中のスタジオが今揺れている。

僕はことの大きさに気付いた。
「ミヤネ屋」は大阪のスタジオでの収録だ。だから東京と大阪が、同時に揺れている訳だ。
東京と大阪が同時に揺れる? どれだけ大きいんだ?
僕はたちまち蒼ざめた。

TVはすぐに報道特別番組に切り替わり、地震の規模や被害状況を伝えるべく矢継ぎ早に情報を発信しだした。
僕はと言えば、まず風呂に水を張り、ドアが開閉できるか確認し、そしてノートPCでTwitterを開いた。
当時はまだ始めたばかりのTwitterで、正直使いこなせてなかったのだが、その即時性だけは理解するようになっていた。

大混乱状態のTV中継は状況の把握に追いついてなかった。僕は事態の重大さを確信していたので、Twitterのタイムラインを必死で追いかけた。

まずすべての電車が止まった。タクシー乗り場は長蛇の列となった。
帰宅難民が生まれようとしていた。
スタッフのひとりがスタジオへ帰ろうとして三鷹駅で立ち往生していたのを発見して、「タクシーは無理だ、歩いて戻った方がいい」、とリプライした。
彼は結局2時間歩いてスタジオへ戻った。

次々と被害状況が明るみになる中で、僕はあることに気付いた。
東北の情報が異常に少ない。

東北か。


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