(ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。
現在の「働き方改革」の現場で、ほとんどのケースが上からの「働かせ方改革」一辺倒に陥ってしまうなか、何をターゲットにすればアウトプットの生産性を落とさずに、働く時間の充実度を高めていけるのか。まずは坂本さんが追求する「私の働き方改革」の条件を定義します。
(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉
第2回 働き方改革は、誰かがしてくれるものではない
あらすじ
働き方改革とは、やる事・やり方・やる力を見直し、生産性を高めながら、より充実した時間の使い方にシフトすることであると私は考えます。
では、そのやる事・やり方・やる力を見直すのはいったい誰なのでしょうか? 会社? 人事部? それとも上司?
答えは「自分」です。といっても、「会社や上司に言う前に自分でやれ!」という体育会系的な話ではありません。
経営者も管理職も一般社員も、それぞれの立場で自分の仕事の成果を改めて定義し、自分なりのやる事・やり方・やる力を高めていくとともに、個人でできる領域を超えた範囲については周囲に「働きかけていく」ことが重要ということです。
こうした働き方改革を、世の中一般で認識されている働き方改革(組織が推進し、従業員がそれに従う構図)と区別して、「私の働き方改革」と名付けたいと思います。
「働かせ方改革」によって自分の働き方を改革する仕方を忘れた私たち
そういえば2017年ごろ、「働き方改革より先に、働かせ改革をすべきだ。」という論調もありました。しかしこの論調は私から言わせれば「何を今さら」なのです。
日本企業はこれまでは「働かせ方改革」一辺倒でした。OA、ICT、制度改革などなど、会社側は色々な環境改革を行い、従業員の仕事内容、仕事方法を変えてきました。その流れに浸かった多くの働き手は、「働き方というのは、自分で変えるものではなく、上が変えるべきもの」という固定概念を抱くようになったのかもしれません。
以前は環境が変われば仕事が変わりました。もしくはそれら環境を使わないと仕事が進まないので、環境が変われば働き方も変わることが必然でした。
そうした中で、労働者は自らの働き方を自分で変えられるという意識は薄れ、次第にマニュアル化・標準化された仕事をこなすようになり、上司も、決められたプロセス通りに仕事をすることを管理する「現状維持管理人」になっていきました。
2020年に世界中の暮らし方を大きく変えたCOVID-19のパンデミック、通称「コロナ禍」によって、日本企業の働き方も大きく変わりました。しかしここにおいても、上(外)からの半ば強制的な環境変化とそれに従いマニュアル的にテレワークを取り入れる従業員や管理職たちという構図は変わりませんでした。
コロナ禍発生当初から自分たち自身で現状の環境をある意味「活かし」て、会社に言われるまでもなく進んでテレワークを導入し、そのやり方を考え、会社や上司に働きかけて自分の働き方を変えていった個人や組織は少なかったと思います。
しかし、今の時代、「自分たちで自分たちの働き方を変える」ことに着目することが必要だと感じています。
働き方改革の主語は「それぞれの私」
つまり、働き方改革とは、一人ひとりが「〇〇のため、自分の働き方をもっと良くしたい」というパッションのもと、自らが改革者となって自身や周囲「やる事・やり方・やる力」を変えていく(生産性を高めていく)活動であるべきと私は考えています。
言うなれば「私の働き方改革」です。決して「会社の働き方改革」ではなく。
これは「働き方改革は自己責任だ。文句言っていないで一人ひとりががんばれ!」という精神論や経営責任放棄の話ではありません。私はそうした「社畜的な考え」は大嫌いです。
「自分で自分の働き方を変える」というのは、部下への押し付けではありません。経営も管理職も従業員も、それぞれが自分自身でできる改革をして生産性を高める活動をするべきだし、自分自身でどうしようもないことについては、上の階層など然るべき部署・担当・経営層に働きかけるべきだと考えます。
つまり、「自分や組織がより充実することに時間を振り向けられるようになるために、各自が自分の職制に沿って自分や周囲へ働きかけ、生産性を高めていく活動」が働き方改革なのです。