デザイナー/ライター/小説家の池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』。
勇者シリーズ初期3部作「谷田部勇者」にみられる、少年とロボットの対等な関係性を再び持ち出した『勇者警察ジェイデッカー』。一方で前シリーズまでは深く掘り下げ切れていなかった「超AI」の設定は、本作において勇者シリーズにどのような解釈をもたらしたのか──?
池田明季哉 “kakkoii”の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝
勇者シリーズ(7)「勇者警察ジェイデッカー」
反動としての『勇者警察ジェイデッカー』
「高松勇者」の一作目となった『勇者特急マイトガイン』は、「谷田部勇者」が確立した少年とロボットの関係性を大幅に再解釈し、少年のナルシシズムを強化した。結果としてマイトガインはむしろ搭乗型ロボットの美学へと傾くことになった。
こうした美学の変化に、制作側はおそらく自覚的であったと思われる。なぜならそれに続く『勇者特急ジェイデッカー』は、少年とロボットの関係に明確に立ち返っているからだ。
▲『勇者警察ジェイデッカー』ポスター。勇太少年の手にした警察手帳が、後ろの勇者ロボたちとの関係を象徴している。
勇者シリーズデザインワークスDX(玄光社)p117
『勇者警察ジェイデッカー』(1994年)は、そのタイトル通り警察がモチーフとなっている。増加する凶悪犯罪に対し、警視庁が超AIを搭載したロボット刑事を開発。そのロボット刑事が「勇者」としてさまざまな犯罪者に立ち向かっていく――というのが大まかな設定である。
我々はここで、『勇者エクスカイザー』が宇宙警察であり、『太陽の勇者ファイバード』もまた宇宙警備隊であったことを思い起こすことができる。警察という組織に立ち返ったのは、やはり原点回帰的なニュアンスを感じるところである。
エクスカイザーやファイバードが警察あるいは警備隊そのものを必ずしもモチーフにしなかった一方で、ジェイデッカーにおけるこのモチーフは単なる回帰に留まらず、より具体的に展開される。『勇者特急マイトガイン』が無国籍映画をモチーフにしていたのと同様、本作は(昭和の)刑事ドラマのパロディとしての側面を持ち合わせている。オープニングテーマに合わせられた映像は、キャラクターの活躍の姿に肩書と名前を大きなフォントで出すことで登場人物の紹介を兼ねたものになっている。これは昭和期からテレビドラマでよく見られた演出で、タイトルに夕日の映像が重ねられるイメージは明らかに人気刑事ドラマ『太陽にほえろ』を踏襲したものだ。また同じく人気を博した刑事ドラマである『七人の刑事』のタイトルは、そのまま第24話のサブタイトルにも使われている。「ジェイデッカー」も、「ジェイ=J」は日本、「デッカー=デカ=刑事」から取られていると見てよいだろう。
それでは改めて設定された警察というモチーフを通じて、勇者シリーズはどのような成熟のイメージを育んだのだろうか。
注目したい象徴的な点はふたつある。ひとつは主人公である友永勇太の立ち位置。そしてもうひとつは、超AIというモチーフを大きく展開したことだ。この二点は密接に関係しながら、『勇者特急マイトガイン』とはまた別のルートで勇者シリーズという存在を批評的に継承し捉え直す。そしてその結果、ひとつの限界に到達してしまった。そのようにこの連載では考えたい。
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