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テレビドラマ定点観測室 2015 Spring
〜『問題のあるレストラン』『デート』
『ゴーストライター』から『心がポキっとね』
『医師たちの恋愛事情』まで〜
岡室美奈子×古崎康成×成馬零一×宇野常寛
〜『問題のあるレストラン』『デート』
『ゴーストライター』から『心がポキっとね』
『医師たちの恋愛事情』まで〜
岡室美奈子×古崎康成×成馬零一×宇野常寛
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2015.5.20 vol.327
テレビドラマファンの皆様、お待たせいたしました――。1クールに一度、ドラマシーンを振り返る好評連載「テレビドラマ定点観測室」。前クールの話題作『問題のあるレストラン』や『デート』『ゴーストライター』『山田孝之の東京都北区赤羽』の総括から、今クールの注目作『心がポキっとね』『医師たちの恋愛事情』への期待、そして『まれ』『花燃ゆ』の展望まで、3万字の大ボリュームでお届けします!
これまでの「テレビドラマ定点観測室」記事はこちらのリンクから。
▼座談会出席者プロフィール
岡室美奈子(おかむろ・みなこ)
早稲田大学演劇博物館館長、早稲田大学文学学術院教授。芸術学博士。専門は、テレビドラマ論、現代演劇論、サミュエル・ベケット論。共著書に『ドラマと方言の新しい関係――「カーネーション」から「八重の桜」、そして「あまちゃん」へ』(2014年)、『サミュエル・ベケット!――これからの批評』(2012年)、『六〇年代演劇再考』(2012年)など。
古崎康成(ふるさき・やすなり)
テレビドラマ研究家。1997年からWEB上でサイト「テレビドラマデータベース」(http://www.tvdrama-db.com)を主宰。編著に『テレビドラマ原作事典』(日外アソシエーツ)など。「月刊ドラマ」「週刊ザテレビジョン」「週刊TVガイド」などに寄稿多数。2011年~13年度文化庁芸術祭テレビドラマ部門審査委員。
成馬零一(なりま・れいいち)
ライター・ドラマ評論家。主な著作は『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)。週刊朝日、サイゾーウーマンでドラマ評を連載。
◎構成:飯田樹
■ 4人全員が評価、早くも今年ベストとなるか?ーー『問題のあるレストラン』
宇野 ではさっそく、前のクールの総括からはじめていきましょう。この座談会では毎回、僕を含めたこの4人が、前のクールで面白かったドラマを3つ挙げています。準備はいいですか?
せーの、ドン!
僕が『問題のあるレストラン』『山田孝之の東京都北区赤羽』『〇〇妻』。
岡室さんが『問題のあるレストラン』『デート~恋とはどんなものかしら~』『怪奇恋愛作戦』。
成馬さんが『問題のあるレストラン』『お兄ちゃん、ガチャ』『LIVE! LOVE! SING!』。
古崎さんが『デート~恋とはどんなものかしら~』『ゴーストライター』『問題のあるレストラン』ですね。
それでは、4人全員が挙げている『問題のあるレストラン』からいきましょう。
古崎 第2話が終わった段階で前回の「テレビドラマ定点観測室」がありましたよね。そのときはちょっと導入部に極端なエピソードがあり、それがどう消化されていくか、まったく見えていない段階でした。したがって、その冒頭の衝撃的なエピソードを作品がどう消化してくのかを含め先を見ていかないとわからないという状況だったと記憶しています。
その後、この冒頭の衝撃的なエピソードはしばらくまったく手つかずのままに展開していく。レストランの面々の癖のある連中が最初、バラバラに個性を主張している中でほんのわずかなことから心が接近していく。そのプロセスがいつもの坂元裕二らしい、ぎこちない展開で進んでいく。そこまで冒頭の衝撃的な話は放ったらかし状態です。
それが中盤、そのメンバーの一人、YOUが弁護士だったことが明らかになる。すると、それまでのぎこちなかった展開が嘘のように急に話がなめらかに進んでいきました。この中盤から終盤にかけての展開は流麗そのもの。この部分の坂元裕二の筆致はかつての90年代のトレンディドラマで慣らした時分の作風の復活を感じさせたほど、するすると話が展開して一瞬、ドラマを見ているということを忘れて展開に引き寄せられてしまったほどで「これはすごいな」と思ったものでした。で、最後までそれで行くのかと思いきや、坂元裕二はそれで終わらなかった。最後には予想外の辛口の結末が用意されてまったく突き放した終わり方で締めくくった。坂元さんとしては、ひょっとすると中盤のなめらかな部分は視聴者サービスのようなもので、本当に見てほしいのは、最初と最後であり、その部分を見せるがための中盤だったのもしれませんが、私はそのなめらかな中間部の展開が、坂元裕二の健在ぶりをむしろ実感させられてしまった。いつでもこういう面白い展開はできるのだと。だけど敢えてしないのだと。私はこの真ん中の流麗な部分が好きなのだなと実感してしまった。見る側がどこに価値を置いているか、問い詰められるような気がしました。
岡室 『Mother』『Woman』と書いてきた坂元裕二さんが、男性脚本家でありながら、正面切って働く女性が直面する問題を描いたことが、私が選んだ理由の一つです。東出昌大くんのセリフに「今は負けてる。だけど最終的に勝つのは、負けながら前に進むやつなんだ」というのがあって、「今は負けている人への応援メッセージ」という感じですごく心に響きました。
あとはレストランの描写で、みんなでリズムを作っていく感じが身体的に表現されているところが良かったですね。3人娘の松岡茉優、二階堂ふみ、高畑充希も素晴らしかっし、東出くんも今までで一番ぐらいの演技で、周りを固める安田顕さんたちも良かった。
坂元さんはセリフがとてもうまいですよね。初回はエキセントリックな描写でしたが、ああいう風に描かないとこのテーマができなかった気もします。
宇野 さて、最初に成馬さんに聞かなかったのは、すでに『サイゾー』(2015年5月号)で対談しているからなんですよね。あらためて振り返ってどうですか?
成馬 『問題のあるレストラン』放送中は、書ける媒体全部で書きましたね。正直、客観視ができないくらい面白かったです。あえて言っておくと、僕自身はもともと坂元裕二はそこまで好きな作家ではなくて、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』という本でも厳しく書いていたんですよ。でも、昨年の『モザイクジャパン』と本作でグイッときて、今は僕の中で暫定1位になりつつあるくらいです。
宇野 僕も第1話を観たときは「極端なカリカチュアライズがプラスに出るかマイナスに出るかは微妙だな」と思っていたんですが、すごく上手に処理がされていたと思う。話の後半では、男性キャラクターも救いすぎないように救いつつ、ジェンダー後進性への怒りを最後まで持続しながら進めていくバランスも良かったです。
この作品って、ここ数年における坂元裕二の集大成にして新境地ではないかと思うんですよ。理由は2つあって、ひとつは社会的背景の使い方が完成されていたこと。おそらく坂元裕二にとって社会問題というのは微妙な人間関係や気まずい空気を生むためのフックでしかなかったんだけど、今回初めて、作品を通して問題に怒っているのが伝わってきました。人の心を動かすために自分のメッセージを本気で発して、そこで心中しようとしている。それがビターエンドにも繋がっていくし、「人の手を殴ると自分の手も痛い」というようなことが、裁判をやったり、マスコミに情報戦を仕掛けて相手を潰そうとする展開にもよく現れている。作品をメッセージ性によって強烈に彩りながらも、それをコントロールする腕を彼は身につけたということでしょう。
もうひとつは、坂元裕二はずっと「本来の”家族”を失ってしまった人間が心の行き場をなくして、現代社会で問題を起こしていく」という90年代の野島伸司のような世界観を反復しているところがあったんですが、今まではそれに対して答えを出せていなかった。このドラマで初めて、人間が本来持っているべき”家族”というものを失っても生きていく方法を見つけていて――それはホモソーシャル同士が戦いながら切磋琢磨してイキイキしているという方向なんですが――それまでの停滞した世界観からようやく離陸できたのではないかと思えました。
岡室 私も坂元裕二さんの脚本は大好きなんですけど、彼がずっと描いてるのはコミニュケーションの問題だと思うんです。たとえば『それでも、生きてゆく』なら、風間くんが演じた犯人のように絶対に分かりあえない人物がいて、そういう人に対して愚直にコミュニケーションを仕掛ける瑛太のようなキャラクターがいる。そのコミュニケーションが最終的に成立していくのを描いたのが『最高の離婚』のようなドラマです。
最近の坂元さんの作品は、困難なコミュニケーションが最終的に成立していく話が多かったんですが、今回は最後まで見ても成立したかどうかわからないけど、それでも前に進む人たちを誠実に描いているんですよね。そこにある種の集大成を見て取れる気がします。
古崎 坂元さんは最近、人間の葛藤や激突をぐいぐい描くことが中心で、かつて90年代に『東京ラブストーリー』などのトレンディドラマで視聴者をぐいぐいひきつけていたエンターテイメント的な動かし方を忘れてしまったのかなと思っていたんですよ。しかしこの作品では、先に触れたように中盤部にその良さが導入されていた。おそらくエンターテイメント性の強い作家がこのドラマを作ろうとすると、冒頭の衝撃的な話はあったとしてもすぐに弁護士が現れて話がある程度、見る側が不満を募らせることなく、理想的に進行させていくのです。でも坂元裕二はそうはしない。『それでも生きていく』や『Woman』などで描いた人間の葛藤や激突のどうしても解決しない部分を描く補足としてこういうエンタ的手法を使いはじめたということでしょう。これまでも諸作品の持ち味の良さを融合してきているのではないかと思っています。
成馬 『わたしたちの教科書』といういじめを題材にしたドラマがありましたよね。菅野美穂演じる主人公の名前がたま子、敵側の副校長が雨木という苗字で、『問題のあるレストラン』はその反復なんですよね。坂元さんにとって『わたしたちの教科書』は向田邦子賞をとって作家として評価された転換点にある作品です。そこで構成力で見せる手法をやった後に、それを一回捨ててコミュニケーションの微妙なニュアンスで見せていく『Mother』を作り、そして「構成で見せつつ、会話も面白い」という合わせ技でこのドラマを作った。今まで培ってきた技を全部持ち込んできたんですよ。
宇野 会話の面白さと役者の力を引き出すためのアプローチは成功してるけど、物語的には失敗していて、部分の強さに全体が耐えきれていないというのが、僕の『Woman』の感想です。それが『問題のあるレストラン』では、力強い演出を下支えする強力な物語のフォーマットを手に入れたなと思っています。
ひとつは、坂元さんがずっと隠れテーマにしてきたジェンダー的な問題に対しての、社会問題の真摯かつクレバーな使い方。もうひとつは、少年漫画的な手法です。たとえば、千佳ちゃんが引きこもりのお母さんのために料理を作っていたら料理の達人になっていたとか、YOUが本当は弁護士だったとかですね。今まで自分の中になかった物語の要素を入れて、それをすごく上手に料理したことによって、部分が全体に負けることがなかったのが大きいと思います。
古崎 流麗な展開が最終回で「無名の人からのクレームで店が潰れる」というあっけない結末があって、それが導入部のエキセントリックな話と比べると恐ろしいほどリアルでしたね。ネットでは「あんなことで潰れるのか」という意見が出てたりするんですが、実際に企業をやっていると、ああいうわけの分からない批判で潰れちゃうことがあるんです。その恐ろしさが最後にさらっと描かれてたのはちょっと怖かったですね。
成馬 あれは、たま子たちがゴシップ記事で雨木の会社を潰そうとしたこととの対比になっているんですよね。たま子たちがやっていたことも、名もないクレーマーがやっていたことも、ネットの炎上的な暴力と同じじゃないかというのを最後の最後に突きつけてくる。だから社長も「世の中にはひどい奴らがいっぱいいるだろ、お父さんの敵をとってくれよ」とか息子に言うじゃないですか。あのシーンの絶望感はすごいですよね。
宇野 あの後の千佳ちゃんのセリフ、「私はあなたに何もしてあげられません」というのも良かったですよね。
成馬 呪いを解いてあげる魔法になるのか、雨木社長の呪いが子供にも続いていくのかが分からないところがあのドラマの怖さで、社長も二世というところで「きっと父親になにかされてたんだろうな」というのが少しだけわかるじゃないですか。
宇野 『問題のあるレストラン』で僕が良いと思うのは、本気で怒ってるんだけど楽しいところだと思うんですよ。
成馬 烏森弁護士役のYOUが言っていた「お花畑と泥棒の仲の対比」ですよね。復讐だけじゃ生きられない、楽しく生きることも復讐になるという。
宇野 坂元さんってその「お花畑」を持っていなかったと思うんですよ。たとえば『それでも、生きてゆく』で瑛太と満島ひかりが漫画喫茶で気まずいやりとりをしているシーンを、設定を知らずに切り取ったら、付き合う3歩手前のカップルがイチャついているものとして、微笑ましく見られるじゃないですか。ああいう部分がだんだん拡大されていったんだろうけど、今回は坂元さんの作品で一番お花畑の要素が肯定されてる作品ですよね。しかもそれが、本来あるべき「男女が仲良く家族的に会社をやっていく」というビジョンではなくて、同世代の女の子同士が集まってお店をやっているというホモソーシャル的な共同体にお花畑が結びついてる。それも今までの坂元さんにはなかった要素で新しいなと思っています。
成馬 役者はみんな微妙にイメージをずらしていますよね。ツンツン怒っている役ばかりやってた真木よう子が、明るいニコニコした役をやっていたり、松岡茉優も本来なら高畑充希が演じていた藍里を、二階堂ふみが天才シェフを、高畑充希が優等生の新田さんを演じていてもおかしくない。
あと、敵側に全員朝ドラに出演した男性俳優を置いていましたよね。みんな役者の話をする時に演技の上手い下手だけで語りがちだけれど、実は「どこに誰を置くか」という文脈や配置の面白さというのもあって、そこをこのドラマではきちんとやっていた。
古崎 坂元さんの脚本は今まで対象に寄りすぎた描写が多くて、そのために作り手自身が作品を進める中で葛藤していたような部分があったんですけど、今回はディープに入りつつもある程度突き放した部分があって、ようやく対象との適切な距離感がつかめてきたようにも見えますね。
宇野 3人娘の女優全員が、今までで一番良いと思います。二階堂ふみは、僕はそんなに好きな役者ではなかったんだけど、今回で好きになりました。
岡室 『Woman』のときも良かったですよ。
宇野 良かったけど、要求されてるものを忠実にこなしてる感じがしていて。優秀なのは分かるけど……と思っていたので。
成馬 二階堂ふみがいつものエキセントリックな演技が封じられている中で、必死にあがいてるのが面白いんですよね。
宇野 あと真木よう子も、これまで大きな役柄ではたま子のようなタイプを演じていなかったじゃないですか。仏頂面して「私いい女よ」って顔してる真木よう子よりも、今回のたま子のほうが良いと思った人はいっぱいいると思ういます。
岡室 最初の方はいつもと違う感じで良かったんだけど、最後の社長に詰め寄っていくあたりではいつもの真木よう子に戻っていて、ちょっとお説教くさい感じがしたんですよね。あそこはもうちょっとたま子ちゃん風に方の力を抜いてやってほしかったです。
成馬 そこまで温存したかったんじゃないのかなとは思いますけどね。怖い真木よう子を見せるためにたま子があった感じがします。
古崎 以前の作品と比べると後半はドラマの予定調和に流れてしまった部分はあるかもしれないですね。
■ 古沢良太が描くべき「恋」とはなんだったのか? 『デート〜恋とはどんなものかしら〜』
宇野 次にかぶってるのは『デート~恋とはどんなものかしら~』(以下『デート』)ですね。今度は岡室さんからいきますか。
岡室 月9での恋愛ドラマが難しくなっている中で、「恋愛できません」という人たちの恋愛ドラマを描いたのが新鮮だったのと、古沢良太さんの脚本ということで挙げました。私、第一話ではちょっと引いたんですよ、お化粧があんまりで(笑)。でも、恋愛できない人たちがいかに恋愛をしていくかという脚本が本当にうまかったです。あと最終回にいきなり出てきた白石加代子がすごかったですね。ワンポイントで出てきて、謎の余韻を残して去っていく。天使様だったのかなんなのか分からないですけど、そういったところも含めて面白く見ました。
古崎 冒頭に主人公が自己の生き方を漱石の「高等遊民」の生き方に擬せるセリフが出てきて、登場人物も理屈っぽい話をしていて、およそ感情が支配すべき恋愛の要素が皆無で「一体全体ここからどうやって着地させていくのか」と気になってしまいましたね。でもそれが作り手の狙いでもあったのですね。「高等遊民」というセリフ自体、本来描きたいものを隠すための装置だったのでしょうね。このドラマは、結局、そんな理屈っぽいことでカモフラージュしていますけど、中年童貞と処女が恋してしまう話なんですよね。かつて『電車男』がこういう恋愛べたな男性とそれに苦しむ女性という、恋愛難民の話を描いて共感を呼んだわけなんですけど、これまでゴールデンタイムの恋愛ドラマでは、美男美女の恋愛話が中心だったがゆえ、なかなかこういう方面を赤裸々に描くことに慎重で企画としても通りにくい部分があるのでしょう。そこで古沢さんは「高等遊民」の恋愛劇と見せておいて、実は現代で問題になっている中年童貞の人物を描き出したのではないでしょうか。
だからといって月9の枠組みを壊すことはしていない。ちゃんと恋愛の不思議さも描かれているのですよね。これまでの古沢さんの作品を眺めていると「恋愛というのは生命を継続させるためにDNAに仕組まれただけのものに過ぎない」という、宮藤官九郎が『マンハッタン・ラブストーリー』で「恋愛なんか思い込みですよ」と言っていた部分に通じる考え方の人だと思っていたのですが、「恋愛とは非常に不思議なもので、嫌い嫌いだと思っていることが実は恋愛」というのが導きだされていて、案外、それは当たり前のことなのだけど、改めてそういう結論に届くことが新鮮でもありました。そういう部分が描かれていて、ちゃんと「月9の恋愛劇」になっていました。
あとこれは表現技法の部分で、杏のあの独特の軽い声でキャピキャピと喋る話しぶり。最初は耳障りに思えたものがだんだんと滑稽さが漂っていく。この面白さは昔、どこかであったなと思っていたのですが、1970年代の『おくさまは18歳』というドラマで岡崎友紀さんと石立鉄男さんが丁々発止していたやり取りのテンポなのですね。古沢さんは過去のドラマや映画に詳しい人なのでこういう過去の成功例をさりげなく意識しているように思えますね。そういう忘れられた古き良き時代の良さを温故知新して恋愛劇をアップデートした作品に映りました。
成馬 僕は第1話が一番面白かったです。恋愛よりも理屈が勝つ話を見たかったんですよ。『リーガル・ハイ』のように理屈を並べていきたいのが本音だけど、それでも『ALWAYS 三丁目の夕日』も書けてしまえる、というのが古沢さんの作家性だと思っているんです。だけど今回は「月9=恋愛ドラマ」に合わせすぎていて、屁理屈力が落ちてしまったのではないかな、と。
岡室 「嘘を肯定していく」というところが古沢さんのドラマのエッセンスとしてありますよね。このドラマでも、全然好きではないけど、お互いの都合だけで結婚したい2人がいて、そういう中から恋愛が成り立っていくという点では、古沢さんの文法に則っている感じがしましたけどね。
成馬 契約だけで成り立つ人間関係の美しさを描けていたら「俺はもう負けました」と言っていたと思うんですけど、結局「恋って不思議ですね」というみんなが知っている回答に合わせてしまったところが気になるんです。完成度が高くて良くできたドラマなんだけど、個人的にはピンときませんでした。
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最終更新日:2024-11-13 07:00
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