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【対談】河野英裕×岡田惠和
「テレビドラマ『ど根性ガエル』をめぐって
ピョン吉という想像力を取り戻すために
――「共感できない」テレビドラマの可能性」
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2015.10.13 vol.428
今朝のメルマガは、9月に最終回を迎えたテレビドラマ『ど根性ガエル』のプロデューサー・河野英裕さんと、脚本家・岡田惠和さんによる対談です。『銭ゲバ』や『泣くなはらちゃん』を世に送り出したコンビが今作で取り組んだテーマとは。制作裏話からテレビドラマにおけるフィクションの可能性についてまで、徹底的に語ってもらいました。
◎聞き手:成馬零一、宇野常寛
◎構成:成馬零一
■ ピョン吉がTシャツからはがれたその先を描きたい
――今日は『ど根性ガエル』の完結記念ということで、プロデューサーの河野英裕さんと脚本家の岡田惠和さんにお話を伺っていきたいと思います。お二人には以前、『銭ゲバ』の時に対談していただいたのですが、また同じ組み合わせでお話を聞けて非常に嬉しいです。
河野 2012年のNHK大河ドラマ『平清盛』が終わった後、また松山くんと一緒に仕事をやってみたいと思ったんですよね。それで、連ドラで原作モノということだけは決まったのですが、なかなか作品が決まらなくて。やっと決まりかけたと思ったらストップがかかったりして、結局2015年の7月までかかりました。
――『ど根性ガエル』に、強い思い入れはありましたか?
河野 アニメの再放送は観ていました。ただ、岡田さんとは『泣くな、はらちゃん』をやった後だったので、もう一度ファンタジーテイストの作品を提案することには抵抗があったんです。同時に『はらちゃん』の後で、どういうファンタジーを作っていいか分からないこともあって。ただ、状況が状況だし、「えいやっ!」って気持ちで決めました。
岡田 河野くんと次の企画について話していた時に、「かぶりもの」をテーマにした作品をやりたいって言ってたんですよね。何かをかぶっていないと主人公は生きられない、みたいな話をしていて。だから自分の中ではそんなに違和感はなかったです。
――原作から16年後という設定が、かなりビターなテイストになっていますが、あの世界観はどういう風に作られていったんですか?
岡田 最初に一番重要だと思ったのはゴリライモでした。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のビフみたいに、相変わらずの番長っぷりを見せつけるってやり方もあったけど、大人になったひろしにとって一番嫌なのは、圧倒的に「正しい人」だろうと考えたんですよ。しかも、それが昔ちょっと悪かった奴だったりすると余計に厄介だろうなぁと思って、ひろしの対極にいる存在として配置しました。
下町の共同体で、平面カエルの存在も普通に許容されている、そんなユルい世界から、一度、外の現実世界に出て戻ってきたのが京子ちゃん。その中で頑張っているのがゴリライモという位置付けです。
ゴリライモを描くのは楽しかったですね。非の打ち所がない男なんだけど、密かにひろしにコンプレックスを抱いている感じがすごく新鮮でした。
河野 ドラマ10話分の脚本を書いてもらうには、物語の縦筋が必要になるんですよ。ひろしとピョン吉が探偵役となって商店街に転がり込んでくる問題を解決する事件モノとか、ひろしが先生になっている教師もの、みたいなわかりやすい設定ものじゃなくて、普通の人間ドラマにすることを考えると、連続ドラマとしての縦筋が何もないというわけにはいかない。
結局、物語の中心にピョン吉という異形の存在がいる以上、縦筋はピョン吉の正体の話になる。Tシャツに張り付いている理由がちゃんとあって、後半はピョン吉自身さえも知らない秘密が明らかになり、ひろしと別れるんだけれども最後はまだ戻って来る。最初はそんな話を想定していたのですが、それだと作り込み過ぎとも感じていて。そしたら岡田さんから来たプロットに一言「はがれる」って書いてあったんですよ。「なんだそれでいいじゃん!」って思いました。
――ピョン吉の死をストレートに描くことに対して迷いはなかったんですか?
岡田 死を描くというよりは、原作の先に行きたいという思いがありました。第9話のラストでピョン吉がTシャツから完全にはがれることは決まっていて、最終回はその先を描くつもりでいました。
――登場人物の親がほとんど死んでいるという設定も意図的なものでしょうか?
河野 元々ひろしは片親で、京子ちゃんも親がいない。そこまでは話し合って決めました。その後で第4話の初稿を見たら、ゴリライモと五郎も親を亡くしていることになっていて。そこで初めて、これは喪失した若者たちの物語なんだということに気付きました。作品の方向性に確信が持てたのはそのときですね。
■ 松山ケンイチの身体性と満島ひかりの熱意
――撮影の現場はどんな感じだったんですか? 見えないピョン吉の存在を想定しての演技はかなり難易度が高いですよね。
河野 最初はものすごくギクシャクしていました。ただ、松山くんの身体能力には助けられましたね。第1話の冒頭のアクションやパントマイムからもうすごくて。
『ど根性ガエル』を実写化する上で、どうしても見せたかったのがピョン吉のアクション性、具体的には泳力とジャンプ力だったんです。だから泳ぐシーンは一番最初にやって、ジャンプのアクションも必ず毎回入ってるんですが、松山くんの身体能力、特に体幹の良さが素晴らしくて、毎回撮影が終わるたびに岡田さんに「松山ケンイチくんの体幹を見て下さい!」って言ってましたね。
彼が文句ひとつ言わずに一人ですべてをこなしていくので、松山くんの身体性を信用してやっていけば、かなりハードなアクションもいけると最初の3日間で確信しました。
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