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山田玲司のヤングサンデー 第66号 2016/1/11

「穴」にハマった時の対処法


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元日の放送では、皆様ありがとうございました。
こんな時に観てくれる人が本当にいるのか?なんて思っていたんだけど、予想以上の数の人に参加してもらえて嬉しい限りでした。

放送では、いつかやりたいと思っていた「志磨遼平とロックってものを徹底的に語り合う」という企画がついに実現して、また1つ夢が叶った所からの年明けでした。

徹底的に初歩から行こう、と思って「ビートルズとストーンズの違いは?」なんて、昔では絶対に許されないような基本中の基本なんかをぶち込んで、ノンストップでの4時間半。
最後は「異文化の衝突と融合が生み出す」みたいな話まで行って、もう最高の夜でした。

予想通り放送の後も話は止まらず、結局みんな朝方まで、踊りながらロックの話をしていました。

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「先輩、最高ッス!」と思っている3人

僕が放送で何度も「クロニクル」の話をするのは、自分が好きな音楽や漫画などには、そこに至るまでの歴史があって、それはもう「宝の道」で、その1つ1つが、当時の先輩達の生々しい葛藤と、愛と、試行錯誤の歴史から生まれた「宝石だらけ」の道だからです。

そんな「過去の人達」を大事に思っている所が、僕と志磨遼平とおっくんの大きな共通点です。
僕らは、三島由紀夫だの細野晴臣だの、生死は問わず「先人の話」をしながら「先輩、最高ッス!」と言いながら生きている人種なのです。

志磨遼平の曲を聴いてもらうと、その中には過去の先輩の「宝」が散りばめられているのがわかると思います。
本人は「パクったんです」なんて言っていますが、そんな簡単なものではなく、自分も愛する先輩ミュージシャンに「届きたい」あるいは「同化したい」という、強烈な思いがその背後にあるわけです。

僕の漫画にも、手塚治虫先生や石ノ森章太郎先生が、何度も登場しています。
「アリエネ」ではセザンヌやクールベも出ていますし、「NG」ではズバリ「ジョンレノンそのもの」が登場しています。「水の鳥」という僕の漫画は、もちろん「火の鳥」へのオマージュです。

一部の人に言わせれば、それは「ものすごくダサい行為」ですけど、そんなのいいんです。
好きなんです。尊敬してるんです。感謝してるんです。

そもそも「完全に新しいもの」なんて、できるわけないんです。
あの「ビートルズ」ですら、過去の人達の「お宝」の集積の上に存在しているわけで、名盤「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツクラブバンド」のジャケットは、彼らが影響された人達がコラージュされています。

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「煮詰まる時」はどういう時か?

長く漫画家をやっていると、自分が「どういう状態の時に身動きが出来なくなるか?」というのが解ってきます。
基本は「嫉妬」です。
何か「すごいもの」を世に出して、大きな評価を受けている人を見ると、悔しくて、自分は何をやっているんだ、なんて焦るわけです。

その思いは、自分にしか出来ない「すごいもの」を生み出さなくては、なんて気持ちになって、そのハードルを上げていきます。

そして、浮かんだアイデアを「そんなもの昔あった」とか「そんなの誰かがもうやってる」とか、評価される事を再優先にしてしまって、何も出来なくなってしまうのです。

そして自分に自信がなくなって、人に会うのが憂鬱になってきます。
「ダメな自分」を見せたくないのです。

そうなると、友人からの新しい情報はもう入って来なくなり、情報はメディアからのものばかりになり、増々、硬直化していくのです。

もちろん、メデイアでは常に「誰かのすごい作品」が絶賛されています。

こうして、「世の中全てが敵だ」という気分になるのです。

こういう気分で生み出される物語は、基本「俺を分かってくれ」「私は可愛そう」という、「自分押し付け型」のうざい作品になるので、増々「普通の人」には理解されなくなってしまうのです。

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穴の抜け出し方

何度もそんな「穴」にハマってくると、今度は「穴」に入ってしまった時の脱出方法もわかってきます。
脱出の方法は、まず「人の目を無視する」所から始めます。