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「RIZINと競技運営」を語る16000字インタビューが大好評だった福田正人RIZIN&DEEP審判部長に「おしゃべりアベマ野郎」こと大沢ケンジ師匠が判定基準をテーマに直撃! ジャッジがよく理解できてMMAが10倍面白くなる対談になりました!!

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これでわかったRIZINの判定基準!■福田正人RIZIN審判部長×大沢ケンジ〜模擬ジャッジ編〜

福田 大沢さんはAbemaTVでベラトールの解説をやってますから、アメリカのMMAの流れを感じることがあるってことですね。

大沢 あとジムの選手のセコンドに付くじゃないですか。ボクは判定を見るときに幅を持たせてるというか「このラウンドは取ったな」と思っても、「もしかしたら、この部分で相手を評価するかもしれない」って簡単には決めつけてないんですね。

福田 つまりそれくらいMMAのジャッジは難しいってことではありますね。打撃、レスリング、寝技と攻防は多岐に渡りますし。

大沢 そんな自分でも、最近は組技に対する評価に戸惑うことがあって。たとえば上をキープしてコントロールしていても、相手に立ち上がられて打撃でプレッシャーを掛けられたら、そのラウンドは取ってくれるかどうかはわからない。昨年8月にウチの選手(深谷誠)がパンクラスのネオブラ決勝で判定負けした試合があったんですが……。

福田
 深谷選手が上をキープする時間が長かった試合ですね。

大沢 1ラウンド、2ラウンドともに2分以上を上をキープしてて、下から打撃はもらってるんですけど、完全に制圧してる中での打撃で。ラスト1分の時点で立ち上がられて、ローをチョコチョコもらったけど、とくに決定的な打撃は食らってなくて。それでも深谷には「3ラウンドも攻めなきゃダメだ」とは指示したんですけど、深谷は1ラウンドと2ラウンドを取ったと思ったんでしょうね。3ラウンドは流したから、ボクは深谷を怒ったんですけど、心の中では「まあ判定で勝ったな」と思ったんですね。でも、判定で負けた。

福田
 判定結果はスプリット(1−2)でしたね。

大沢 福田さんの目から見て、あの試合はどういう評価だったのかなって。

福田
 いや、自分はRIZINとDEEPの審判部長の立場として今日は呼んでもらっているので、RIZINとDEEP以外の試合について具体的な話はできないですし、個別にどういう評価だったかというより、世界的にMMAルールの指標となっているユニファイドルールってものを一つの目安にして、ジャッジはどんな流れかということを話し合った方がわかりやすいと思うんですよ。

大沢 たしかに。でも、ユニファイドルールも州や団体によって微妙に違うんですよね。

福田
 おっしゃるとおりですね。ユニファイドって「統一」って意味ですから、全部が統一されたルールのように思われる方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、例えばアメリカのABC(全米ボクシングコミッション協会)が示すMMAユニファイドルールを採用していない州もあるんです。なのでグラウンドポジションの定義が異なる州も実際にあるし、採用している州でも中身がすべて一緒というわけでもないんですよね。だからユニファイドルールを話し合うにも、どこのユニファイドルールをお互いイメージして話しているのかってことをハッキリしといたほうがいいかもしれないですね。

大沢 自分はどちらかというと、ベラトールの解説を通じて見るユニファイドですかね。

福田
 大沢さんの話を聞いているとそんな気がします。ベラトールも開催する州で異なるかと思うんですが、大枠でいえば、大沢さんはアメリカ本土のユニファイドをイメージしているということですね。

大沢 やっぱりそうなりますよね。

福田
 自分はどちらかというとアメリカの勉強会で聞いた話や、そのあとチャーリーさん(柏木信吾RIZIN渉外担当)から入れてもらっているカリフォルニア州の情報をベースにしたユニファイドをイメージして話すようにしますね。だから、国内でのユニファイドのイメージと合致しない部分もあるかもしれませんが、そういうのを踏まえて話せればと。

大沢 そうですね、お願いします。

福田
 まずユニファイドの判定基準には3段階の基準があります。アメリカでは「インパクト」と呼ばれてますけど、それはイコール「ダメージ」で、なによりも「ダメージ」が最優先されるんですね。 次に「アグレッシブネス」、一番下が「ファイティングエリアコントロール」。


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福田 RIZINやDEEPでは「インパクト」を「ダメージ」、「ファイティングエリアコントロール」を「ジェネラルシップ」と呼んでますが、基本の部分では考え方は一緒ですし、やはりベースにあるのはユニファイドで、それらの文言をどう解釈して、どう運用していくかについてはチャーリーさんやジェイソン(・ハーゾグ)からのカリフォルニア州の情報を参考にさせてもらっていますね。

大沢 上をキープして相手をコントロールしている時間はどこに該当するんですか?

福田
 コントロールは3段階の一番下の「ファイティングエリアコントロール(ジェネラルシップ)」ですね。ちなみに「アグレッシブネス」は、ただ前に出るだけの積極性ではなくて、KOや一本を積極的狙って攻撃をしていたかどうかですね。

大沢 昔はもっとコントロールを評価していたところってありましたよね?

福田
 コントロールを評価するときは「ダメージ」に差がなくて、次に「アグレッシブネス」で見たときにも差がない場合ですね。

大沢 決定打がない場合は、最後の「ファイティングエリアコントロール(ジェネラルシップ)」の差で見出すんですね。

福田
 上をキープしていたけど、下から何らかの形でコントロールされていた場合、下の選手が評価されることもなきにしもあらずなんです。

大沢 「上をキープしていれば確実にラウンドを取れる」ということではないってことですね。

福田
 一昔前だとテイクダウンして上をキープすると評価されていたような傾向はありましたけど、いまはテイクダウンのためのテイクダウンはそこまでは評価されてない傾向にはあるかもしれないですね。アメリカなんかそういうこと多くないですか?

大沢 たしかに、ベラトールを見てて感じますね。じゃあ、ポジションをひとつひとつ取って極めに行くスタイルの選手っているじゃないですか。そういうスタイルは判定では勝ちづらいっていうことですか。

福田
 必ずしも評価されないというわけじゃないですけど、ひとつひとつポジションを取っていくあいだに、下から打撃をもらったり、逆にコントロールされると相手に評価される可能性は出てきますよね。

大沢 そこは昔とだいぶ変わってることですよね。でも、いまでも「テイクダウン神話」ってあると思うんですよ。

福田
 そこはわかります。ラウンド残り30秒のときにテイクダウンをした選手に印象が残ってしまうジャッジもいますし。「インパクト(ダメージ)」「アグレッシブネス」「ファイティングエリアコントロール(ジェネラルシップ)」でも差が見出しづらいときに、テイクダウンの精度なるもので評価してしまうケースもあるでしょうから。

大沢 なんだかんだ「テイクダウン神話」は根強いですよね。

福田
 でも、カリフォルニアのユニファイドルールの指針では、あくまでテイクダウンはテイクダウンで「その先に何があったか」を見て評価しないといけないと教わりました。

大沢 昔はテイクダウンを一発取ったら、いいパンチが顔面に一発入ったぐらいの評価がされてたと思うんですね。

福田
 そこで誤解しないでほしいのは、テイクダウンがまったく評価されないということではないということですね。たとえばテイクダウンされた側が何もできずに試合が終わったら、それは上をキープしていた人間が優勢と評価されるでしょうし。

大沢 「テイクダウンの先に何があったか」ということですね。となると上をキープしたら、相手を殴らなきゃいけないし、一本を狙わないといけないということですよね。

福田
 テイクダウンを取っても何もしてないのは評価しづらい時間が続くってことですね。

大沢 最初に「ジャッジって流行り廃りがある」って言いましたけど、気になってるのはローキックなんですよ。最近の北米MMAはローを効かせる選手が多いじゃないですか。昔はそこまでローは評価されてなかったんですけど、これはジャッジの傾向が変わってくるのかなって。

福田
 一昔前のアメリカはボクシングの試合しか経験のないジャッジがそのままMMAの試合も担当するようなケースが多くて、パンチ中心の評価だったというようなことはよく聞きますよね。脳震盪に直接繋がる可能性のあるパンチと下半身へのダメージの蓄積というローキックでいえば、いまでもその部分で差があるとは思うんです。頭部へのダメージはローキックよりも早くKOに繋がりやすいという見方があるでしょうし。

大沢 ローキックとテイクダウンだったら、ローキックのほうがKOに近いから評価されるってことですか?

福田
 ローキックもただ当てるだけのものだったら「アグレッシブネス」から下の範疇で検討されることになるかと思うんですけど、それがKOや一本に繋がるようなものであれば「ダメージ」として評価はされる可能性は高いですよね。同じようにテイクダウンも投げによって相手の頭部がマットに当たった衝撃でKOに近づいたのであれば当然「ダメージ」として評価される場合もある。パンチ、テイク、ローがどうこうというより、何事にも言えるのは「その攻撃によって相手はどうなったのか?」ということなのかと思います。

大沢 グラップラーは受難の時代なのかもしれないですねぇ。関節技以外はフィニッシュに繋がりにくいわけですから。

福田
 グラップラーがテイクダウンして、しっかりコントロールして、膠着せずに圧倒すれば違ってくるかと思いますけどね。

大沢 そこまでの完成度が求められるんだったら、打撃を磨いたほがいいよなあ。その傾向が強いと感じていたから、ウチの練習もレスリングから打撃にシフトしてるんですよね。しかし、ちょっと話を聞いただけでもジャッジの難しさがわかるなあ。

福田
 大沢さんも以前はジャッジをしてましたよね。

大沢 福田さんと一緒になったこともありますよね。

福田
 GRANDSLAMですね。旗揚げ前、主催者さんに私が希望する審判員は植松(直哉)さん一人で、他の方はお任せしますって言ったんですけど、蓋を開けてみたらジャッジが大沢さん、中井(祐樹)さん、長南(亮)さんに決まってて…あまりにも豪華な布陣でかなり焦りましたけどね(笑)。

大沢 ボク、ジャッジをやりたくないんですよ(笑)。その理由の一つには「俺はこっちの判定勝ちなんだけど、お客さんは逆に見てるんだろうな」っていうときがあるじゃないですか。

福田
 ジャッジのポイントと、お客さんが見てるポイントは違ったりすることはありますよね。

大沢 そこで「お客さんが勝ったと思ってる選手」とは逆のジャッジをつけることってけっこう勇気がいるんですよ(笑)。それでも自分が思ったほうにつけますけどね。

福田
 大沢さんはプロファイターとしてやってこられてきたから、選手やお客さんの反応が気になるとは思うんですね。 でも、いまは人が足りないから普段ジャッジをやらないジムの代表者とかがジャッジをスポットでやるというようなことは減ってきています。本当に審判員としてしっかりと基礎から学ぶんだという姿勢で取り組んできた審判員が多くなってきていますので、何かお客さんを意識するというような感覚は、いまの審判員にはないと思いますね。

大沢 それはもうジャッジの見方が確立されつつあるってことですね。


10-8はどうやって付けるのか、あの試合はなぜドローになるのか……ジャッジ対談はまだまだ続く!!


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