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渡辺文重のアニメ視聴日記(11月4日~11月10日:1322分間)
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渡辺文重のアニメ視聴日記(11月4日~11月10日:1322分間)

2013-11-12 22:30
    君の銀の庭(期間生産限定アニメ盤)
    ◆今回の概要
    巻頭言に当たる「今週のあいさつ」では、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』について記しました。日記は、本当に平凡なおっさんの日常となっています。

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    ◆今週のあいさつ

    ごきげんよう。有料メルマガ評論家の渡辺文重です。今回は、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』(総監督:新房昭之)について大いに記したいと思います。もちろんネタバレありですので、これから映画を見るという人は読まない方がいいと思います。ただ、これだけは言っておきたい。[新編]は絶対に見るべき映画です。時間がある人は、TVシリーズか、劇場版の前後編を見てから鑑賞した方が、より楽しめると思います。先に[新編]を見たという人は、TVシリーズか、劇場版の前後編を見ると、より理解が深まるはずです。

    確かに、[新編]は、この作品だけを見ても楽しめる内容となっています。しかし、それだけでは、じゅうぶんに魅力を理解できないことも事実です。例えば、『劇場版 うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(監督:押井守)という作品があります。この作品も、「1」にあたる『劇場版 うる星やつら オンリー・ユー』はもちろん、TVシリーズや原作の漫画を読まなくても楽しめる作品となっています。

    しかし、この作品も、やはり、TVシリーズや原作の漫画を読まなければ、真の意味では楽しめない作品だと言えます。理由は簡単です。この作品だけを見た人は、ヒロインのラムが、どれだけ諸星あたるのことを好きか、じゅうぶんに理解できていないからです。もちろん、『ビューティフル・ドリーマー』を見ただけでも、ラムが諸星あたるのことを好きだということは分かります。しかし、その執念がいかに強いかは、やはり、TVシリーズや原作の漫画を読んでいなければ、理解し切れないと思うのです。

    加えて、諸星あたるは無類の女好きです。独占欲の強いラムの目を盗み、さまざまな女性キャラクターにちょっかいを出します。その所業のひどさと言ったら……。『ビューティフル・ドリーマー』だけを見た人は、何だかんだ言っても、諸星あたるはラムのことが好きなんだなと分かってしまいますが、これは完全なミスリードです。なぜならば、普段の諸星あたるは、ラムが好きだというそぶりは、みじんも見せないからです。まして、口に出して説明するなんて言うことはあり得ないのです。

    つまり、[新編]も、暁美ほむらが、どれだけ、鹿目まどかのことを好きかを理解していないと、真の意味では楽しめないのですが……。そろそろ[新編]の物語に触れたいと思いますので、これから見るという人は、退場いただければと思います。

    ※以下、重大なネタバレあり

    物語は最初、5人の魔法少女(鹿目まどか・暁美ほむら・巴マミ・美樹さやか・佐倉杏子)がナイトメアと戦うエピソードからスタートします。正直、この展開はある程度、予想通りでした。CMなどで、暁美ほむらが「(鹿目まどかを)覚えているのは、ただひとり。私だけだったはず」と言っていたからです。つまり、この時点で、物語は大きく3つの可能性に絞られることになります。

    1つは、「円環の理(ことわり)」が始まる前からの再スタート。もう1つは、全く別の設定での再スタート。そして、「円環の理」が発動した後、暁美ほむらの中で起きた出来事ということになります。おそらく、前出の『ビューティフル・ドリーマー』を見たことがある人ならば、どこかのタイミングで、これは「暁美ほむらの夢」だと気付いたのではないでしょうか。ただし、「魔女の結界」だとは気付きませんでしたから、驚きを感じたことも事実です。

    ここまでは、謎解きのフェイズ。誰もが平等に楽しめる物語です。しかし、「魔女の結界」だと分かってからの物語は、ファンだけが、より楽しめる内容になっていきます。

    ・阿澄佳奈×水橋かおり

    まずは、阿澄佳奈さん演じる「百江なぎさ」の登場です。これは、TVシリーズ『魔法少女まどか☆マギカ』が発表されたときに思った、「えっ、阿澄佳奈さんは登場しないの?」という、ほんのささやかな不満を解消することになりました。

    監督が新房昭之氏で、キャラクター原案が蒼樹うめ先生。この布陣で『ひだまりスケッチ』を思い出さない人はいないでしょう。実際、『ひだまりスケッチ』の主要キャラクターのうち、宮子を演じる水橋かおりさんは巴マミ役で、ヒロを演じる後藤邑子さんは鹿目詢子(まどかの母親)役で、沙英を演じる新谷良子さんは志筑仁美(まどか・さやかの親友)役で、登場しています。しかし、『ひだまりスケッチ』のヒロイン・ゆのを演じる阿澄佳奈さんは、TVシリーズにおいて出番なしでした。

    阿澄佳奈さん演じる百江なぎさ、というよりも「ベベ」の登場は、1つの幸福をもたらします。それは、すっかり「ボッチ」のタグ付けをされていた巴マミに、パートナーが誕生したことを意味するからです。鹿目まどかと暁美ほむら、美樹さやかと佐倉杏子というカップリングの外にいたマミさんに、パートナーができるなんて、まさに夢のような展開です。また、『ひだまりスケッチ』では、ゆのと宮子がカップリングされていましたから、声優ファン視点で見ると、ベベとマミのコンビは、その再現となります。これは心憎い!

    また、巴マミは「中二病」というタグ付けもされており、彼女がTVシリーズで口にした「円環の理」は「中二病ワード」扱いだったのですが、正式な設定として扱われていた点も、彼女にとって思わぬ幸運と言えるでしょう。

    ・美樹さやか×佐倉杏子

    カップリングという点では、美樹さやかと佐倉杏子についても触れる必要があります。いわゆる「杏さや」です。劇中、佐倉杏子が「胸くそ悪くなる夢を見たんだ。あんたが死んじまう夢を。でも、本当はそっちが現実で、今こうして2人で戦ってるのが夢だって」と言うシーンで、涙腺が崩壊しました。「夢っていうほど、そんな悲しいもんじゃないよ」と美樹さやかは言いますが、ファンから見ても、こんな幸せで、そして、同時にさびしいシーンはないはずです。

    思えば、TVシリーズの美樹さやかと佐倉杏子は、互いに素直になれず、ぶつかり合いの連続でした。互いの魂はひかれ合っているのに、美樹さやかも佐倉杏子も素直になれず、悲しい別れを迎えることになります。その2人が、ぎゅっと手をつなぐ。このシーンは、間違いなく、[新編]のクライマックスでした。

    TVシリーズでは「雑魚」だったさやかですが、「人魚の魔女」の力を使いこなし、ちゃんと戦力になっていたことは、ちょっとした驚きでした。戦闘シーンで、佐倉杏子をリードする場面が見られるとは……。また、上条恭介への恋慕から魔女化した美樹さやかが、志筑仁美との交際を温かく見守っていたことも、立派に成長した娘を見るような気分にさせられました。そして、TVシリーズでは、つらい役回りばかりだった佐倉杏子が、穏やかな学園生活を送れたことも、ファンにとってはうれしいボーナスとなりました。

    ・「ほむほむ」と化した暁美ほむら

    『魔法少女まどか☆マギカ』のヒロインは、鹿目まどかのはずですが、『ゆるゆり』のあっかり~んばりに、存在感がありません。その理由は1つ。『魔法少女まどか☆マギカ』が、鹿目まどかのことを好きで好きでたまらない、暁美ほむらの物語だからです。暁美ほむらにとって、鹿目まどかは「聖女」ですから、第三者から見たキャラクターとしての魅力は、かなり薄れることになります。

    特に定義はないのですが……。鹿目まどかのことが好き過ぎて気持ち悪い暁美ほむらのことを、ファンたちは「ほむほむ」という愛称で呼びました。ファンが考える「ほむほむ」は、過激なほどに、鹿目まどかのことが大好きです。具体的には、時間を止める魔法を使って鹿目まどかの部屋に忍び込み、下着のにおいをくんかくんかと嗅いだり、『変態仮面』よろしく、まどかのショーツを頭からかぶったりしているに違いないといった具合です。さすがに、劇場版でも、鹿目まどかの下着をどうこうするシーンはありませんでしたが……。

    正直、ポカーンですよ。マミさんがボッチでなくなり、さやかと杏子が手をつなぎ、インキュベーターの策略を打ち破り、あとは、「鹿目まどか」という円環の理に導かれるだけという段階で「まさか!」の叛逆。しかし、[新編]の暁美ほむらは、ファンたちが考える「ほむほむ」像に、かなり近い印象を受けました。だからこそ、「円環の理」という巨大な概念から、鹿目まどかの人格だけを取り出すという乱暴な所業も、「こいつならやりかねない」と納得できるのです。

    また、インキュベーター・キュゥべえに終始、出し抜かれ続けていた暁美ほむらが、最後の最後でキュゥべえを出し抜いたことは、多くの魔法少女ファンが留飲を下げたことでしょう。

    ……それにしても、なんて「ほむほむ」はいとおしい存在なのでしょうか。暁美ほむらにとっての理想の自分は、三つ編みのメガネ娘、鹿目まどかに守られる存在にもかかわらず、三つ編みを振りほどき、メガネをはずし、鹿目まどかに「叛逆」するのです。何というツンデレちゃん。その存在は、神の作った完璧な世界に、なぜ、堕天使がいるのかの答えでもあります。(私は無神論者ですが……)

    鹿目まどかが好き過ぎて、とんでもない暴走を始めた暁美ほむらが、どうなってしまうのか? 私は、新たな物語を想像せずにはいられません。
     
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