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香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。先日、来年3月の補欠選挙への立候補を前向きに検討していると表明した周庭さんが、その心境を語りながら、先月のストラスブールでの国際フォーラムを振り返り、国際的なつながりを深める意義について考えます。(翻訳:伯川星矢) 

御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第12回 3月11日の補欠選挙へ向けて/ストラスブールでの国際フォーラム

3月11日の補欠選挙へ向けて

12月4日の夜、わたしはFacebookで来年行われる香港島区の立法会補欠選挙への立候補を前向きに検討することを発表しました。この補欠選挙は、香港政府による民主派議員の議員資格剥奪に端を発するものです。わたしが立候補しようとしている選挙区は、先日香港衆志の主席ネイサン・ローが解任された議席です。

今回の選挙戦は候補者同士の争いではなく、陣営・政治理念の争いになるでしょう。議員は資格剥奪で解任される事態が起こり、意を唱える人は監獄へ送られ、立法会はもはや全人代のものになりつつあるこの険しい時代です。そこでも、香港人は選択をしなければなりません。政府を監督できる議会を求めるのか、それとも非民主かつ高圧的な政府が統治する社会を求めるのか。全身全霊で市民の権利を守る議員を選ぶのか、それとも中国の利益を優先するあやつり人形を選ぶのか。

選挙は来年の3月11日。これからは厳しい戦いとなりますが、命を賭けてこの戦いに挑みます。

フランス・ストラスブールでの国際フォーラム

先月、わたしはフランスのストラスブールに向かいました。

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今年のWorld Forum for Democracyに招待していただく幸運に恵まれ、世界各地の社会運動組織や政党の代表、メディア関係者たちと、民主主義・政党運営・メディア運営などの意見交換を行うことになったのです。香港からストラスブールの宿泊先のホテルへ行くためには、まず飛行機でパリへ行き、それから電車に乗って、さらにトラム乗り換える必要がありました。ところが、トラムを降りてからSIMカードが不調でWiFiが見つからず、Google Mapを使うことができなくて、道に迷ってしまいました。ホテルは駅から5分ほどの距離だったはずなのですが、最初に降りた駅からずいぶん離れてしまい、一つ先の駅まで歩いてしまいました。どうしようもなく、周りの人たちに聞くことにしました。

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現地で出会った優しい住民の方たちにとても感謝しています。最初に出会った二人の女性はホテルの名前には聞き覚えはありませんでしたが、わたしのために周りの人に道を聞いてくれました。初めてストラスブールに来て驚いたのですが、あまり英語が通じませんでした。ドイツとの国境沿いにあるストラスブールは、フランスでありながら言語系統、文化や歴史背景的にはドイツと近いといわれていますが、英語が通じないという点ではドイツとは異なるようです。英語しかできないわたしが道を尋ねても現地の人にわかってもらうのは少し難しかったようです。

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それでも女性たちはジェスチャーを使ってわたしに話しかけ、フランス語ができないわたしのために他の人に聞いてくれたのです。わたしはその熱意にとても感動しました。その後、また道を間違ってしまったようで、違う駅に歩いてしまったわたしは、川沿いの道で別の女性に会いました。彼女はGoogle mapでホテルを調べ、わたしをホテルまで送っていってくれました。とても申し訳ないと思い、ひたすら感謝と謝罪の言葉を繰り返していました。彼女はわたしが香港から来たと知ると「いつかわたしが旺角に行ったら、あなたが助けてね」と言ってくれました。わたしは本当に感動しました。一緒にホテルまで来てくれるなんて! それに、香港を知っていて、旺角まで知っているなんて!

もしも、わたしたちが本当に香港で再会できたら、道案内をするだけではなくて、いっしょに食事をして、友達になりたいです! 

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World Forum for Democracy2017の初日、わたしはヨーロッパ委員会の会場で政党政治、ソーシャルメディアとポピュリズムに関する討論会に出席しました。参加者はボスニア・ヘルツェゴビナ連邦の元官僚、日本の衆議院議員、アメリカの公民団体代表とイタリアの組織代表でした。

ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦のReuf Bajrović氏は、これまでのバルカン地域こそ憎悪政治と恐怖政治の被害者であったと言及しながら、ソーシャルメディアはヘイトスピーチとフェイクニュースを助長し、長期的には民主主義の発展に悪影響を及ぼすのではないかと懸念していました。また、憎悪と恐怖が主導する陰謀論がなければ、イギリスのEU脱退やアメリカの大統領選も異なった結果が出ていたのではないかと話していました。

最も印象深かったのは米・Time誌で今年世界で最も影響力のある100人の一人として選ばれた、Carmen Perez氏の発言でした。彼女は女性や社会的弱者の権利保障を訴えてきました。トランプ大統領の就任と、日々悪化していくパターナリズムと人種差別について、彼女はお互いに攻撃・侮辱し合っても無意味であると発言しました。本当の平等を求めるためには、レイシストたちとの対話が必要であり、相互理解の基礎を築くことが重要なのだと言います。

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香港人はとてもソーシャルメディアに依存しています、ここ10年の公民社会の発展もソーシャルメディアの主流化に関係しています。わたし自身も、Facebookがきっかけで学民思潮に参加しました。ソーシャルメディアは本来であれば多様な声が一斉発信される場所ですが、近年確かに憎しみや差別的な内容が増えていると思います。ネットという「場所」は徐々に単一の意見をこだまさせるだけの壁となりつつあります。日本でも香港でもソーシャルメディアは重宝されています。でも、インターネットがなくても社交ネットワークは存在するのだということを忘れてはなりません。異なる人に異なる考えや立場があることは当たり前です。最も重要なのはどのように対話と善意を持って違いを狭め、相互理解に達することです。

その後、わたしはロシア、イタリア、フランス、ルーマニア、ポーランド、モルドバから来たボランティアの方たちにも出会うことができました。彼らもわたしが香港人だと知ると、香港の生活や言語、政治制度などに興味を持ってくれました。皆さん広東語に興味があり、教えてほしいとねだられました。そして彼らの国の政治状況について話してもらいました、例えばロシアでのLGBT運動の弾圧や、イタリアの若者への不関心など。香港も似たような状況に直面しています。香港政府は性指向差別に関する法律の制定を渋っていますし、相変わらず若者は投票に行きません。わたしたちはネットで交流し共鳴し合いますが、問題を解決するための特効薬を求めることはできません。でも、少なくとも自分は孤独ではないと知ることはできますし、世界各国に共に困難に立ち向かい人がいるのだと知れるのは大切なことだと思います。

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国際間のつながりを作る意味とは、世界各国には同じように困難に直面していて、それでも勇気を持って前に進もうとしている同胞を見つけることにあると思います。それによって、自分もそこから前に進む力をもらうことができるのです。困難に立ち向かって耐え切るだけでは足りません。前に進む力こそが大切なのです。

困難に直面した時に、世界各国で勇気ある同胞を見つけ繋がり、そこから前に進む力を貰うことにあると思います。荒波に向かっていくためには、耐え忍ぶだけでは十分ではありません。前に進むことこそが大切なのです。

(続く)

▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)

1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政党「香港衆志」の副秘書長を務める。

『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。

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