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石川 温の「スマホ業界新聞」
2013/03/09(vol.025)
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《目次》
1. 東日本大震災からまもなく2年
━━2013年、各キャリアの震災への取り組みを追う
2.ニッポンの「NFC」はどう普及していくのか
━━意外と手強いライバルになりそうな「Passbook」
3.突然「iBookStore」日本語版オープン
━━「電子書籍元年」の夜明けはやってくるか
4.今週のリリース&ニュース
5.編集後記
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1. 東日本大震災からまもなく2年
━━2013年、各キャリアの震災への取り組みを追う
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東日本大震災からまもなく2年。今週はキャリアの「震災に対する取り組み」に関する発表などが相次いだ。
7日にはNTTドコモの東北支社で、これまでの同社の震災復興に対する取り組みが説明されると共に、復興現場で活躍されているNPO等市民団体に対して、NTTドコモが助成をしていくという発表が行われた。当日、仙台の東北支社に行ってきたが、ドコモがタブレットで震災復興のサポートをしていく様子が取材できた。
福島県飯舘村、富岡町、楢葉町では、原発事故で避難を余儀なくされている家庭に対して、タブレットを配布。役場からの情報を受信できたり、住民同士でコミュニケーションを取れるような仕組みが整備されている。
また、岩手県北上市、釜石市では、仮設住宅で暮らす住民の生活を見守る「支援員」という人たちがいるのだが、彼らが仮設住宅を訪問し、その様子を役所にレポートする際のツールとしてタブレットが活用されている。従来は紙に書いていた内容をすべてタブレットに記入し、データベース化することで、「仮設住宅で安心に暮らせているか」「住民からの相談案件はないか」などを、役所側は瞬時に把握できるようになったという。
タブレットを避難住宅に配布する際や、支援員に配布する場合、いずれも使用者が高齢で、満足にタブレットを使いこなせないケースも多い。そのために、NTTドコモでは、NPOと協力し、タブレットの使い方を教える説明会なども実施している。タブレットの操作性自体、簡便なユーザーインターフェイスにしているが、それでも「ウィルスって何。触ると風邪をひくのか」というレベルのお年寄りもいるぐらいなので、端末を渡しただけでは使ってもらえない。復興につなげ、活用してもらうには、地道なレクチャーが必要なのだという。
8日は、KDDIが首都直下型地震を想定した模擬訓練を東京有明にある東京臨海広域防災公園で行った。訓練の想定としては、都内で震度7の首都直下型地震が発生し、広範囲で基地局が被害を受け、通話ができないという状況。政府及び東京都から、防災の拠点である東京臨海広域防災公園、練馬区役所、品川区役所の3カ所で通信を確保してほしいという要請を受けたと仮定し、車載型基地局、可搬型基地局を出動させるというものだ。ちなみにKDDIでは、大型の車載型基地局7台、小型の車載型基地局13台、可搬型基地局を27台、所有しているという。
訓練ではヘリコプターで復旧要員が到着し、1チーム4名で、車載型基地局をテキパキと設営していく様子が取材できた。復旧要員は、運用対策室と連絡を取りながら、高さ12メートル近いアンテナを出し、衛星のパラボラアンテナを準備し、周辺をエリア化していった。
ちなみに、車載型基地局はスカパー、可搬型基地局はIPSTARの衛星回線に接続しているという。可搬型基地局は直径1メートルほどのパラボラアンテナを使うので、とても持ち運びがしやすく、東日本大震災時には、ソフトバンクが率先して使い、その後、NTTドコモなども採用したのだが(KDDIも東日本大震災以降に採用)、いずれのキャリアもIPSTAR社の衛星を利用している。KDDIによれば「このような手軽に設置できるものはIPSTAR社ぐらいしかない」といい、結果、3社で同じものを採用することになったようだ。日本で再び、大規模災害が起きたときは、IPSTARが我々のインフラの一部を支えることになるかも知れない。
8日は、ソフトバンクモバイルも、気球無線中継システムの実証実験を公開する説明会を岐阜県羽島市で行った。
大規模災害で基地局がダウンした際に、大きな気球に基地局を載せて飛ばす。地上から電波を気球に向けて発射し、その電波を受けた気球から、今度はユーザーに対して、ケータイやスマホで使える電波を飛ばしてしまおうという試みだ。車載型基地局に比べて、広範囲に電波を飛ばせるというのが利点になる。
この実証実験は過去にも1度、記者に対して説明会が同じ場所で開かれたのだが、その時取材した際には、気球が巨大で、かなりの人数が居ないことには、気球の管理ができないという状況にあった。
今回の説明会は、KDDIの模擬訓練と同日開催であったため(新製品発表会だけでなく、説明会まで他社の日程にぶつけるソフトバンク)、 残念ながら取材できなかったのだが、ワールドビジネスサテライトのニュース映像を見る限りでは、気球も前回よりも小さくなっており、機動性は上がっている印象があった。
車載型基地局や可搬型基地局はアンテナの長さが最長でも12m程度であり、エリア化できる範囲も直径1キロメール程度しかできないのに対し、気球型基地局はアンテナを上空100mまで上げられるため、半径3キロメートルまで広げることが可能だ。気球をあげるための場所が必要であったり、気球を上げる専門部隊が必要、さらには設置に5時間程度かかるなど、数十分でエリア化できる車載型基地局に比べて見劣りする部分もある。ただ、災害時、場所によっては有効に機能できそうな感はある。
各社とも、東日本大震災を経験し、次に大きな災害が起きても、迅速に対応できるよう、新たなシステムを開発したり、訓練を実施したりと念入りに準備をしている様子がうかがえる。
ただ、今回、改めて災害対策を取材していて印象的だったのが、東日本大震災時にも、現場で対策本部長を務めたNTTドコモ東北支社長である荒木祐二氏の「あのとき、マニュアルはなにひとつ役に立たなかった」という言葉だ。どんなに準備をしていても、想定を遙かに超えた事態が起こるのが大規模災害というものだ。万が一の時に向けて万全の準備は必要ではあるし、訓練を実施し、マニュアルではなく、身体で覚えることが重要だ。さらに、災害時には、いかに臨機応変に事態を把握し、次の行動ができるかが、肝心といえそうだ。
■ワードルビジネスサテライト(テレビ東京)
(KDDIの模擬訓練、ソフトバンクの気球無線中継システムの様子)
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_36919/
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